火の鳥の力
家付近に来ると何やら焦げくさい臭いがする。
あの方角、まさか。嫌な予感がして帰路を急ぐ。
予想は的中した。僕の家は炎に包まれ、どす黒い煙をあげて燃えている。熱に耐え切れなかったのだろう。窓ガラスは割れ、そこから炎と煙が噴き出し始める。動けない。今すぐ火を消さないといけないのは分かっているのに足も手も動いてくれない。119番をしたって、僕の家は山に囲まれた一軒家だ。いつ消防隊が着くか。
何で、シチュー煮込んだままなの忘れてたんだろう。いくら、ロトさんの事があったからって火を消さなかったなんて。
呆然と立ちつくしていると、誰かが家の中に入って行った。いけない!僕は瞬時に家に向かって駆け出す。
「大丈夫。私に任せてください」
えっ。なんでロトさんの声がするんだろう。幻聴なのかな。そうだ、僕が都合よく解釈しているだけの妄想……。
家の中に入ろうとした僕の頭上から、ガラスの破片が落ちてくる。僕のところにたどりつくまで思ったより速かった。皮膚が突き破られ、血が湧きだす。鈍い痛みが右腕を突き抜け、僕はその場にうずくまってしまう。ロトさんの声がうっすらと聞こえる。
「千尋さん、無理はやめてください」
炎が帯状になり、中央に集まり始める。ある一点に向かって走る緋色の線は何かを包んでいるみたいだ。
みるみるうちに家から炎が消えて、壁が再生していく家が元に戻って火事など起こっていなかったという錯覚に陥りそう。
「だから、言ったでしょう。大丈夫だって」
今度の声は妄想なんかじゃない。ぼやけかけた視界がクリアになる。
「全く、貴方はもっと名付け親の自覚を持ってください私にとってもあなたの身の安全は大事なことなんですから」
ごめんなさい。でも、誰か入っていくのが見えたから止めなきゃって思って。
そう伝えかけて、ふとロトさんの目が見開かれていることに気付いた。どうしたんだろう。
「このガラス……なぜあの人が。ふぅ、本当に貴方は命知らずですね」
手が傷に優しく重ねられた。ぼんやりとした光に包み込まれて痛みが癒えていく。ガラスが抜けて粉々に砕け散る肌も元に戻った。
ありがとうロトさん。助かりました。
「いいえ。名付け親を守るのは当然ですから」
その言葉に、自然と頬がゆるむ。そうしているとロトさんに腕を引かれた。
「さて、片付けをしましょうか。シチュー食べたいですし」
シチューまた作りなおさなきゃな。その前に片付けしないとだけど。心地よい気分に包まれながら、ほうきを手にとった。
あけましておめでとうございます!とりあえず2部更新いたします。今日中にもう1部更新します。




