第7話 おじさんと魔女と洗濯物
「あーもー! 洗濯物が乾かない!」
ここ最近雨が非常に多かった。
その為、洗濯物を溜めに溜めてしまっていたのだが、曇りではあるけれどやっと洗濯物を干すタイミングが来たと思い、一気に洗濯したのが間違いだった。
自然の乾燥機である日光が、分厚い雲に遮られてしまっているから全然乾かない。
午前中から干しているのに、昼過ぎても湿ったままだ。
──このままではいかん。
どうしたものかと考えていると、ふと妙案が浮かんだ。
そうだ、隣の部屋には魔女が住んでいるではないか。
衝撃波を出したり火を出したり、いろいろ出来る魔女さんなら洗濯物を乾かすくらいお茶の子さいさいなはず。
というわけで、俺は隣の部屋に住む魔女、雪野さんに助けを求めに行くことにした。
□ □ □
「というわけで、洗濯物が乾かないんだけど助けてはいただけないか、雪えもん」
「いきなり来ておいて、私を未来のロボット扱いするんじゃない」
ナイスツッコミである。
というわけで、かくかくしかじか事情を説明する。
すると、雪野さんは「なるほど」と言いつつ、顎に手を当てながら少し考えだす。
そして、
「まぁ、出来ないこともない。いいだろう、やろうじゃないか」
「おお、ありがたや!」
これで洗濯物を乾かすことができる。
だが、そう簡単にはいかないようで、雪野さんはゲスな表情を浮かべながら、
「──ただ」
「ただ?」
「報酬は何をいただけるのかな?」
雪野さんはニヤリと笑みを浮かべながら言った。
──そう来たか。
何かを得るなら、それ相応の対価を払わなければいけない。
等価交換の法則というやつだ。
俺はどうしたものかと考え、
「では、夕飯を奢るというのでいかがだろうか」
「ふむ、いいだろう」
固い握手を交わす。
こうして契約は結ばれたのだった。
□ □ □
雪野さんを連れて部屋に戻る。
天気予報だと1日曇り空だが、いつ雨が降ってくるか分かったものじゃない為、助けを求めに行く前に室内干しに切り替えておいた。
大量の洗濯物が窓際に干されていて、圧を感じずにはいられない。
念の為、窓を開けて換気していた。
雪野さんの魔法と自然の風とのダブルな効果を狙う作戦でもある。
「なんだ、佐藤は随分とシンプルな下着を履いているんだな」
「うるせぇよ!」
余計なお世話である。
俺はコホンと咳払いを1つしてから、
「では、先生お願い致します」
「うむ、任せておけ」
雪野さんはどこからともなく触媒の棒を取り出すと、くるくる回してから洗濯物に向けた。
すると、棒の先端から高温の風が吹き出す。
「すげぇ! まるで業務用の巨大ドライヤーだ!」
実際そんな物があるのかは知らないが、そんなイメージである。
俺は高温の風が当たる洗濯物を触ってみる。
おお、もう乾いてきている。
なんて凄まじい魔法のドライヤーだ。
「ふふふ、しかし私の力はこんなものではない! さらに風量を上げるぞ!」
雪野さんがそう言うと、風の強さが上がった。
ドライヤーの強モードだ。
それにしても、雪野さんもノリノリである。
これなら、もう少ししたら全部乾きそうだ。
そう思った、その時だった。
バチンッ!
強風に耐えきれず、洗濯バサミが次々と弾け飛ぶ。
そして洗濯物は、換気で開けていた窓の外へと飛んで行ってしまった。
「「──あっ」」
2人して唖然とする。
雪野さんは魔法を止め、俺と一緒にベランダに出て、下を見る。
道路に出来た水溜まりの中、飛んでいった洗濯物が浸かっていた。
ゴウンゴウン、と洗濯機の音が響く。
そんな中、俺と雪野さんは無言で夕飯のカップ麺を啜るのだった。
なお、洗濯物は二度洗いとなりました。




