第6話 コンビニ店員とおじさん
「あしゃーしたー」
お会計をこなし、お店から出ていくお客さんに、軽く頭を下げながら声をかける。
引き籠もりだった私が、なんとか自分を変えようと始めたコンビニのアルバイト。
最初は人と接するのが怖かったけれど、やってみたら数ヶ月で慣れた。
今ではいかに力を抜いて、いかに働くことが辛くならないようにするか、そんなことを考えながら働いている。
「いらしゃーせー」
廃棄商品のチェックをしていると、入口のドアが開き、来客を知らせる音楽が鳴る。
私は反射的に声を出した。
チラッと、来店したお客さんに視線を向ける。
「────!」
常連さんだった。
いつも煙草を買っていく、30代か40代の、ちょっとくたびれたおじさんだ。
おじさんを確認した瞬間、私の心臓の鼓動が早くなるのを感じた。
「あ、こんにちは」
おじさんは商品を物色しながら、通りがかりに私に声をかけた。
私は思わず「こ、こんちゃっす」と変な返しをしてしまう。
おじさんが通り過ぎた際、煙草の香りがふわっとした。
この匂いが、私は好きだった。
おじさんが品物をいくつかカゴに入れ、レジへ向かいだしたのを確認し、私は足早にレジ内へ駆け込む。
そしてちょうどおじさんが来て、カゴを置いた。
おにぎりとカップ麺だった。
「お願いします。あと──」
「132番ですよね」
「そうそう。覚えられちゃったね」
そう言って、おじさんはニコッと笑った。
ああ、私の心臓の鼓動がさらに早くなる。
あまりに鼓動の音がうるさくて、止めてしまいたいくらいだ。
止めたら死んじゃうけど、気持ち的にはその方が楽になるかもしれない。
「ありがとね」
会計を済ませ、品物が入った袋を受け取りつつおじさんが言った。
そしてそのまま店から出ていく。
私はハッとして、
「あしゃーしたー!」
とおじさんの背中に声をかけた。
そんな私の一部始終を見ていたシフトの相棒のおばちゃんが、
「福ちゃん、もしかしておじ専?」
と言ってきた。
私、福司小町、20歳。
常連のおじさんに恋をしている。
お前はヒロインではないのだ。ぐはははは。




