第4話 おじさんと魔女と夜の襲撃
アパートのすぐ傍の電柱に電灯が付いているからだろうか。
夜になると羽虫が部屋に侵入してくることが多い。
まぁ、寝る前にベランダに出て折り畳み椅子に座り、夜風を浴びながら煙草を吸っているんだけれども、その際に窓を開けっぱなしにしているのが悪いとは分かっているのだ。
いやでもほら、夜にガラガラと音を立てるのも近隣住民に申し訳ない。
…………。
というのは建前で、実際は都度窓を開け閉めするのが面倒臭いというのが1番の理由であったりする。
「さて、寝るか」
煙草の火を消し、折り畳み椅子を持って部屋に戻る。
窓は少し開けておく。
夜の少しひんやりとした空気を部屋に入れたいからだ。
網戸にしておけばいいんだろうけど、網戸が破れて穴が空いているの仕方がない。
直すのも面倒くさいのでそのままだ。
俺は布団に潜り込む前に、蚊取り線香に火をつけて、窓の近くに置いている蚊取り豚の中に入れる。
豚の鼻の部分から線香の煙が出てきてシュールだが、やはり昔から使われている方法なだけあって羽虫の被害からは逃れられている。
俺は布団に潜り込むと、目を閉じた。
良い夢が見れると──
ドカーン!
アパートを揺るがす程の隣室からの爆音。
なんだ? また雪野さんの部屋にゴキブリでも出たんだろうか。
見た目クールビューティーだけど、部屋は全然クールじゃないからなー。
さて、改めて──
ドカーン!
2発目である。
1発目では仕留められなかったのか?
あまり夜に魔法をぶっ放さないでほしいのだが……。
ドカーン!
3発目。
そして、雪野さんの部屋のベランダの窓が開いた音がしたと思ったら、
「くっ! さっきから耳元をプーンプーンと! 寝れやしない!」
どうやら羽虫に悩まされているらしい。
「佐藤! 今煙草吸ってるか? 佐藤!」
残念ながら俺は布団の中である。
もう眠いので対応したくない。
「こうなったら一度、部屋全体に爆破魔法を放つことで衝撃死させるしか……。しかしあまりやり過ぎると現状回復の義務が……」
「おいおいどんだけ物騒なことをしようとしているんだ!」
本人に聞こえていなかろうが、俺はそう言いながらガバッと起きた。
致し方ない、このままでは俺の安眠どころか、下の部屋の住人や近隣にさらなる迷惑が掛かってしまう。
俺は布団から出ると、窓近くに置いた蚊取り線香入りの蚊取り豚を持ち、雪野さんの部屋を訪問した。
その後、雪野さんの部屋から魔法が放たれることはなかったが、俺の安眠は奪われたままなのだった。
プーン。
魔法より蚊取り線香。




