伝記 『勇者ガレン・ベルジュ』
『勇者ガレン・ベルジュ』
エドモン・ヴァレリー作
現在、ベルジュ様が治めておられるこの地は、以前はシャンベル領の一部でした。
シャンベル領では、昔から素晴らしい統治がなされ、領民たちは幸せに暮らしておりました。
しかし、ある時、巨大な魔獣が森に住み着き、その影響で現れた大量の魔獣により、シャンベル領の大半が人の住めない土地となってしまいました。
シャンベル様と騎士たちは、果敢に魔獣と戦いましたが、力及ばず、退治することは叶いませんでした。
そこでシャンベル様は、領民から勇気ある者を募り、ともに魔獣へ立ち向かうことを決断しました。
とはいっても、恐ろしい魔獣に立ち向かうことは危険で、命の保証もありません。
命を投げ打ってでも魔獣退治に参加する、そんな勇気を持つ人はなかなか現れませんでした。
しかし、そこで立ち上がったのが、人並みならぬ勇気を持つベルジュ様でした。
ベルジュ様も、恐ろしいと感じていなかったわけではありません。
ただ、それ以上に故郷のこと、故郷に住む人々のことを愛していたのです。
ベルジュ様は、たった一人で街を離れ、旅に出ました。
巨大魔獣に勝つために、強力な魔術を放つ触媒を集める旅に出たのです。
領内の外れにある村を訪れ、遠く離れた街を訪れ、危険な森の中へも一人で行きました。
そして、ベルジュ様は、魔術を発動するのに必要な触媒を集めることに成功したのです。
その旅の過程で、多くの魔獣と戦い、剣にも魔術にも精通されたベルジュ様は、シャンベル様より、魔術を使って巨大魔獣にとどめを刺す役割を任されました。
ベルジュ様は、まだ旅の疲れが完全に癒えていないにもかかわらず、街のためにと騎士団に同行して、ともに戦うことを快く引き受けました。
巨大魔獣は、人の十倍もある大きさで、騎士たちが剣を突き立てても、びくともしませんでした。
それでも騎士たちは、ベルジュ様を信じて魔獣に立ち向かい、ベルジュ様が魔術を使う時間を稼ぎました。
ベルジュ様は、騎士たちがやられていく中でも、落ち着いて魔術に集中していました。
騎士たちがやられ、魔獣の攻撃がベルジュ様に届くかと思われた時に魔術を発動し、間一髪、魔獣を退治しました。
ベルジュ様は、息絶え絶えの騎士たちに薬を配り、肩を貸し、騎士たちと街に戻りました。
その活躍をご覧になったシャンベル様は、ベルジュ様に言いました。
「あなたのような、知恵と勇気を持った人に、領民を導いてほしい。取り戻した領地の半分をあなたに託したい。その地の領主として、領民を導いてはくれないだろうか」
ベルジュ様は、自分はそんな器ではないと固辞しましたが、シャンベル様と活躍を見ていた騎士たちは、それでも何度もお願いしました。
そのお願いの中で、領民のためにもなるという言葉を受けて、ベルジュ様は心を翻しました。
自分が領主となることで、愛するこの地の人々のためになるなら、喜んで引き受けよう。
そうお考えになり、ベルジュ様はシャンベル様の提案を受けることになりました。
こうしてこの地は、ベルジュ様が治めることとなったのです。




