第二十話 幼馴染
俺とアリシアは、今日も思念記録を読んで話をしていた。
最新の記録のリーナは、フィアの幼馴染のようだ。
リーナが出発した後、フィアが、あたしも行く、と言っていたのを止めるのに一苦労した。
それでも、帰ってきてくれてよかった。それに、リーナがもたらした情報は多い。
「魔獣の多い森を避ける道がわかったのは大きいですが、空を飛ぶ魔獣というのは気になりますね」
「リーナは知らなかったようだけど、アリシアも知らなかったのか?」
「ええ。街の周りに出る魔獣の五種類と南の森でのみ確認された魔獣については聞いていますが、空を飛ぶ魔獣は聞いたことがありません」
地域によって、生息する魔獣が違うのだろうか。川を挟んでいるので、それが何か影響しているのかもしれない。
「今までは、最悪の事態になっても、街の壁を使って防衛すれば少なくとも街の中にまで入り込むことはないと考えていました。もし、魔獣が空を飛んで襲ってくるなら、壁は意味がなくなってしまいます」
確かに、それはかなり大きい。壁を防衛線にして矢や魔術で攻撃すれば、平地で戦うよりもずっと戦いやすいはずだ。
リーナが見た魔獣のように、空を飛んで、相手も魔術を使ってくるとなると、その効果は大分減ってしまう。
「でも、どこにでも出るってことはないんじゃないか?クレール公も壁の中なら安全だと思って、街をあんな風にしたわけだし」
「そうですね。少なくとも、今のところは大丈夫そうですね。ずっと安全かどうかは、不安ですが」
そう言ってアリシアは息を吐いた後、
「コンスタンは、無事なのでしょうか……」
とつぶやくように言う。
そうだ、実際に空飛ぶ魔獣が出る地域のコンスタンは、どうなっているかわからない。
しかし、これについては考えていても答えが出るものではない。情報を待つしかなさそうだ。
ガチャ、と扉が開く音がして、フィアが入ってきた。
「お、やってるわね。リーナの記録見てたの?」
フィアは機嫌が良さそうだ。
記録を見たところ、ずっと話していなかったリーナとまた話せるようになったのがうれしいのだろう。
人の話を盗み聞きしたみたいだから、あえて俺たちはそこには何も触れていない。
「ああ、リーナのおかげで、色々わかったからな」
「リーナさんは、とても冷静でしたね。普通だったら街道をそのままいってしまいそうなところを安全な道も見つけてくれました」
「でしょ!あたしたちと子供の頃から特訓してただけあるわ」
フィアは自分が褒められたように嬉しそうだ。
実際、リーナは戦闘力も判断力もすごかった。同じ状況だったら、俺だったら絶対無理だろう。
「アリシアも、リーナと遊んだこと覚えてる?あたしがリーナの家に連れてってあげたじゃない」
「ええ、覚えてるわ。同い年三人で遊べて、楽しかったわね」
「リーナと、また昔みたいに遊ぼうって話してきたのよ。アリシアも一緒にまた遊びましょ!」
完全にはしゃいでいる子供だ。たまに幼いところを見せることもあったが、今日はいつも以上だ。
「おーい、今の状況わかってるのかー?そんなに遊んでる暇ないぞ」
ちょっと俺が茶化し気味に言うと、フィアは一瞬ハッとしたような顔をし、そのあと俺の方を軽くにらんできた。
「わかってるに決まってるじゃない!魔獣退治が終わった後の話よ、当然でしょ」
「明日にでも遊びに行こうって雰囲気だったぞ」
「ち・が・う!」
そんな俺たちを見て、ふふっとアリシアが笑い、
「そうね、魔獣退治が終わったら、遊びに行きましょう。そうだ、今度はラクト様も紹介したらどうかしら?」
「何言ってるのよ!大切な友達に、コイツなんて合わせられる訳ないでしょ」
「おい、どういう意味だ」
アリシアが、またそれを見て笑う。
俺もアリシアも何も言わなかったが、記録を見たところ、アリシアを連れて遊びに行くのは、難しいだろう。
でも、楽しそうに幼馴染のことを話すフィアに、そんなことをわざわざ言う必要はない。
作戦会議は自然と打ち切りになり、フィアからリーナの昔話を聞く会になった。
その日のフィアは、ずっと子供みたいにはしゃいでいて、楽しそうだった。




