第六十七話 「親子」
――キィンッ!!
桜色の刀と雪影の刀が激しくぶつかった。
雪音はそのまま刀を押し込む。
「……!」
雪影が受け流す。
「甘い。」
――ガキィン!
雪音の身体が弾かれる。
だが、雪音はすぐに踏み込んだ。
「まだだ!」
刀を横薙ぎに振る。
雪影が避ける。
「速くなったな。」
「父上に鍛えられたからな。」
「……。」
その言葉に、雪影の表情が僅かに変わった。
雪音は構えを崩さない。
「俺はずっと、父上に認めてもらいたかった。」
「真昼より強くなれば。」
「真昼を超えれば。」
「父上が俺を見てくれると思ってた。」
雪影は黙っている。
「だから、何でもやった。」
「自分が傷ついても。」
「苦しくても。」
「死にそうになっても。」
雪音の声が僅かに震える。
「それでも、父上は俺を見てくれなかった。」
雪影が刀を握り直す。
「見ていた。」
「……え?」
「ずっと見ていた。」
雪影は雪音を睨む。
「お前が強くなる姿を。」
「お前が敵を倒す姿を。」
「白夜叉と呼ばれるようになったことも。」
雪音は目を見開く。
「なら……。」
「なぜ、俺を褒めなかった?」
雪影は答えない。
「なぜ、真昼と比べ続けた?」
「なぜ俺じゃ駄目だったんだ!」
雪音が叫ぶ。
その瞬間。
雪影が踏み込んだ。
――キィンッ!!
「黙れ!」
二人の刀が激しくぶつかる。
「私は五条を超えたかった!」
「そのために、お前が必要だった!」
雪音の瞳が揺れる。
「俺は……道具だったのか。」
「……。」
雪影は答えなかった。
その沈黙が。
何よりも答えのように感じられた。
雪音は刀を握り締める。
「……そうか。」
紅い瞳から、涙が一筋だけ落ちる。
「だったら。」
刀を構え直す。
「もう、父上のためには戦わない。」
雪影も構える。
「ならば来い。」
「一ノ瀬の若頭として。」
「お前自身の力で、私を倒してみろ。」
雪音は頷いた。
「……ああ。」
そして。
再び二人は踏み込んだ。
――キィンッ!!
真人は少し離れた場所から、その戦いを静かに見ていた。
口を挟まない。
これは。
雪音自身が決着をつけなければならない戦いだからだ。
そして。
父と息子の死闘は、さらに激しさを増していった。




