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【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

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第48話 エピローグ

デイジーたちの未来は続きます。

ルイーズの後日談は、エピローグ後に投稿予定です。


リアクション、ブックマーク、評価が本当に励みになっています。

一つひとつの反応に力をいただいて、ここまで書いてこられました。

正直、苦しいことも多かったのですが、皆様の反応を支えに頑張れました。

読者の皆様、本当にありがとうございます!


「さて、リチャード。王家から褒美を与えたい。何か望むものはあるか?」


 狩猟祭の数日後、私たちは王族の謁見室に呼び出された。


 王太子は青と白を基調にした正装をして、王族用の席に座っている。セス殿下は隣に立っていた。

 側室の子であるセス殿下は、正式な場で王太子と同列には座らない。


 玉座は空いたままだ。

 回復の兆しが見えないらしく、近々、王太子に王位を譲るのではないか、という話も出回っている。

 初めて目にする王妃陛下は、表情を一度も崩さなかった。

 冷たい人――ではないのだろう。

 セス殿下の母君が亡くなった後も、対等に扱ったという。


 やっぱり、セス殿下の言うとおりルイーズがこの地位についたら国が乱れていたかもしれない。


「そなたの活躍に見合ったものを与えねば、私の面目が立たない。皆も英雄の答えを期待しているぞ」


 王太子は盛大なパフォーマンスにしたいらしい。

 重臣だとわかる貫禄のある男性陣や、落ち着いた気品のある女性たちが立ち並んでいた。

 その視線が、リックに集中している。


「この度のご厚意に感謝いたします。……ですが、狩猟祭でも言った通り、私のすべてを妻に捧げると宣言いたしました。妻の望みが私の望みです」


 リックが何度も練習したとおりに片膝をついて口上を述べた。

 私もそれに続いて頭を下げる。


「なるほど。では聞こう。マーガレット夫人。君は何を望むのかな?」


 ごくりと唾を飲み込む。

 緊張で喉が詰まったように、声が出しにくい。

 駄目だ。

 ここが正念場だ。ダメ元で構わないんだから。


「私の望みを申し上げます。私の望みは――」



 ――そして半年後。



『王家支援施設“マーガレットの学び舎”』


 私は、白い建物に掲げられた看板を見上げた。

 “マーガレット”は要らないって何度も抗議したのに……!

 でも、立派な建物が出来上がった。



 ◇◇◇



『市民向けの学び舎?それでいいのか?』


 王太子は、一瞬拍子抜けしたような声を出し、軽く咳払いをした。

『市民向け、だけではありません。孤児も通えるようにしたいのです』

 私は精いっぱい声を張り上げた。

『孤児も、か。だが……市民や貴族から反発が起きるのではないか?』


 ここだ。

 アピールするなら最大限に、ね。


『英雄リチャードは孤児ですよ。そんな立派な看板があるのに、王太子殿下は見過ごすのでしょうか。そんな心ない言葉や反対を?』


 王太子は顎をひと撫でして考え込んだ後、笑った。


『確かに、それを馬鹿にする者は、豪胆か浅慮な者だけだな。随分と立派な看板だ。面白い。……セスは惜しい女性を逃したな』


 セス殿下は、一瞬だけ言葉を詰まらせたように見えた。

 隣から不穏な空気が流れてくる。

 こら、リック!


『……兄上。それは前に申し上げたでしょう……。私も、その提案に賛成します、マーガレット……夫人』


 ええ。国を挙げてリックを英雄にしたんだから。

 それを蔑むことは国に砂をかけるようなものだ。

 貴族も市民も黙るだろう。



 ◇◇◇



「ってやり取りが格好良かったんだぜ、さすがうちの嫁!」

「もう、やめてよ!ちょっとやりすぎたかも……って反省してるんだから」


 私の横で一緒に看板を見あげていたリックが、隣のリジーに経緯を聞かせている。

 いやいや、完成までに何回その話をしたのよ??

 でも、律儀に毎回相手してくれている周りに感謝だ。


 そう。

 完成までに半年かかった。

 一番緊張したのは、シスターにこの計画を伝えに行った時だった。

 久し振りに会ったシスターは、目元を赤くして私たちを迎えてくれた。


 学び舎の庭では、シスターが子どもたちに囲まれている。

 入り口に立っている私たちに気づいたシスターが手を振って私たちを呼んだ。


「デイジー!リック!やんちゃな子どもたちがあなた達と遊びたいそうよ!」


 私とリックは目を合わせて笑った。

 シスターにとっては、私たちはずっと「デイジーとリック」なのだ。

 それが、なぜか無性に嬉しい。

 私がシスターに手を振って、走り寄ろうとすると、リックが私の腕を掴んだ。


「シスター!ちょっとデイジーは借りていくよ!これから男を見せに行くから!」


 シスターはきょとんとした顔をしたが、訳知り顔で笑った。

 そして、リックに向かって指を立てる。


「ふふふ。三年前の二の舞いにならないようにね?街中で公開告白をしたリックの真似が、子どもたちの間でしばらく流行っていたんだから」

「……んなっ!そんな昔のことを……!」


 リックが一瞬で真っ赤になって言い返した。

 ――三年前?男を見せる?


 シスターと同じような顔をして、リジーも私の背中を押した。


「はいはい。私が代わりに子どもの相手をしてるから、あんたたちは早く行ってきなさい。……リチャード、しくじったら爆笑してあげるから安心しなさいよ」


 ひらひらと手を振って、私たちを見送ってくれる。

 リックはちらりとリジーに目をやって溜め息をついた。


「うるせぇ、リジーこそ早く答えてやれよ。あのバカ、酔うと絡んで泣きやがる。本当にうざいんだぞ」

「……こっちだって計画があるんですぅ!」


 リジーの計画は何となく気づいている。

 でも、きっとサプライズにしたいのだろう。

 私も、お祝いの準備を進めていたりする。

 男性陣には内緒だけどね。


「リジー、あまり無理して動いちゃ駄目だよ」

「わかってるわよ。シスターも知ってるみたいだしね」


 そう言ってリジーは庭へ向かい、仲良さそうにシスターと会話を始める。

 うん、シスターがいるなら大丈夫。


 数か月後が本当に楽しみで、口元に笑みが浮かんでしまう。

 リジーが大きく手を振ってくれたので、私も同じように振り返した。


「よし、じゃあ行こうか」

「うん。どうしたの?いつもより落ち着かないみたいだけど」


 そのまま、リックに手を引かれて付いていく。

 なんだかくすぐったい感情に駆られて俯いてしまう。

 繋がれた大きな手から、彼の体温が流れ込んでくる。

 ……昔から変わらずに温かい。


「デイジー、見て」


 顔を上げた先。

 学び舎から数区画離れた土地に、それなりに大きな家が建っていた。

 赤い屋根……?

 まさか――。


「白い壁の赤い屋根で、庭付き一戸建て、庭に大きな犬小屋がある家……だろ?実は内緒で用意してたんだ。……この家で、お前に『おかえり』って言ってもらうのが俺の夢だった」


 照れくさそうに、耳を赤くして。

 それでも、視線をそらさないで私の両手を握った。


「お前が将来、こういう所に住みたいって、孤児院で言っていた頃から。その頃から、俺もそこに住みたいと思ってた。ここに一緒に住んでくれるか?」


 リックがずっと覚えていてくれたのは、それが彼の夢にもなっていたからだったんだ。

 嬉しいのに。

 なぜか上手く答えられない。


「うん、うん……!わ、私も……」


 喉が詰まったように、声が出ない。

 彼はそんな私を抱きしめて、背中を優しく叩いてくれる。

 そして私の髪に顔を埋めて、優しく問いかけてきた。


「……いい男だろ?デイジーに釣り合うかな」

「世界一いい男だよ……!ばかリック!昔から、ずっとずっと……」


 涙でぼろぼろの私の目元に口づけてから、リックは悪戯げに笑った。


「それなら、世界一のいい男に、女神からご褒美をもらわなきゃ、だな」

「……ばか」


 思わずリックに抱きついて、声を噛み殺した。

 そうじゃなければ、思いきり泣き出してしまいそうだった。


 もう、やっぱり狡い。

 リックは大きな身体で、私を受け止めてくれる。


「愛してる」

「私も……!私もリックだけを愛してるよ……!」


 私は、彼の首に腕を回し、その唇にそっと口づけた。


 ――転生して、孤児院出身だった。

 それでも私は、ここまで来られた。

 ちょっとテンションが低いのが悩みだけれど。


 これからも、この幸せを噛み締めて。

 大好きなリックと、大切な人たちと一緒に頑張ります。


 

裏話です。

孤児院では、名前は割と簡単につけられています。

孤児院を出るとき、儀式のように自分で名前を変える子もいます。

でも、リックは『デイジー』を他の人には呼ばせません。

シスターだけが呼べます。

改めて読むと未熟な部分も多いのですが、本当に完結できるのか……。

政治? ワイバーン? 自分はアホか、異世界恋愛だろ! とツッコミながら、うわ……つらい、難しすぎる……と思いつつ書き上げました。

本当に、読んでくださった皆様のおかげです。

SSもいくつか用意しているので、楽しんでいただけると嬉しいです。

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