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【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

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第47話 孤児院育ちのリックとデイジーの夢

エピローグとルイーズ後日談まで走り切ります!


リアクション、ブックマーク、評価が本当に励みになっています。 一つひとつの反応に力をいただいています。


「リジー! 無事でよかった……!」

「あ~~、本当、ルイーズのせいで最悪な目にあったわ。リチャードも、本当にやっちゃったのねぇ。これから冒険者たちの憧れだわ」


 私たちは、無事に再会して今はゆっくりと話せるように一室を与えられていた。

 まだ王宮に留まっている。


「う……男にキラキラした目で見られるのって、思った以上に気持ち悪い……」


 げんなりした顔でリックが呻いた。

 さっきも、筋骨隆々な男性から握手を求められていたもの。

 しかも後ろに列まで出来ていた。


「純粋な憧れだからねぇ。……それに比べて、リックを見る女性のギラギラした目といったら!」


 思わず握りこぶしを作ってしまう。

 影からキャーキャー言うだけなら可愛らしい。複雑だけど。

 しかし、あからさまに誘いをかけてくる……!


「マーガレット、顔。顔ヤバいよ」


 リジーに頬をつつかれて正気に戻った。

 あ、しまった。

 最近のストレスが限界値を突破している。


「まあ、大丈夫だ。俺がローランもS級に引き上げさせるから。S級同士のバディとか最強じゃん」

「俺!? ……いや、確かに。S級同士なら無敵だ。“ちゅうに病”の俺なら、そのくらいは目指さないといけないかもしれない」


 何が大丈夫なのか。

 リックは、被害者を増やしたいだけでしょう、まったく。

 でも、ローランはやる気だ。

 この二人なら出来てしまうかもしれない……そう思ってしまうのが怖い。

 いや、S級って本当に国が囲い込むほど数が少ないんだからね!?


「……ねぇ、マーガレット。あんた、私がいない間にローランに何を吹き込んだの? にゅうに病とかヒーローとか煩いんだけど」


 リジーが微妙に間違えたまま、げんなりした顔でこちらを見る。心当たりがありすぎて、頭が上がらない。


「……ごめん、反省してる」


 でも、今さら、あの場のノリで『どんな苦境も乗り越えるヒーロー』とかなんとか適当に言ったとか……。

 ローラン本人には一生言えない……。


「そういえば、ルイーズがどうなったか知ってる?」


 私の言葉に、リジーが明らかに嫌そうな顔をした。


「前から、公爵家の郊外に新しい別邸を建てているって話はあったのよ。……そこに連れて行かれたらしいわ」

「領地で療養? ……甘すぎない?」


 二度と会わなければ、私としてはそれでいいけど……。

 いや。

 リックとリジーにあんな首輪を嵌めたんだ。


「あんたはヴァルターを知らないから、そう言えるのよ。ヤバいわ、あいつ」


 そう言えば、ルイーズにも隷属の首輪を付けていた。

 その事実を思い出して、背筋が少し冷える。


「でも、ヴァルター公子って今度結婚するんじゃないの?それって……愛人ってこと?」

「表向きは療養よ。表向きはね。でも、裏ではえげつない噂まで流れてるみたいよ。下衆なやつまでね」


 嫌な話になって、自然と眉が寄った。

 きっと女性にとっては、聞きたくないものも含まれているんだろう。


「……それ、誰も止めないの?」


 思わず聞いてしまった。

 リジーは、少しだけ肩をすくめる。


「止める理由がないんでしょ。王家も、公爵家も、ヴァルターも。誰も否定しない噂は、それだけで事実みたいになるわ」


 それは、死ではないけれど。

 貴族社会で生きてきたルイーズにとっては、十分すぎるほどの終わりだった。


「……王太子妃殿下の意向らしいわ。命までは取らない。でも、母親にはしないって」

「……こわ」


 思わず、声が漏れた。


「あの女、王太子妃殿下にずっと妙なものを飲ませていたんでしょう?子どもができにくくなるようなものを。それどころか、最後はもっと強い薬まで飲ませようとした」


 思わず背筋が冷えた。

 そこまで愚かなことをしたら……普通は……。

 でも、その件にリジーまで巻き込もうとしたんだ。

 許したら駄目だ。


「だから、命は取らない。でも、それだけじゃ済まさない。……そういうことなんじゃない?」

「……王族へ何かを盛るなんて……。極刑じゃないだけマシ……だよね……」


 苦いものを飲み下した気分だ。

 これで、ようやく彼女との因縁も終わったのか。


「まあ、ヴァルターが動いたんでしょ。あの件で、王太子妃は慈悲深いと評判になったし」


「それで、公爵夫妻は責任を取らされる。ヴァルター公子は王命で婚姻を結び、正式に公爵位を継ぐ。……綺麗すぎる終わり方ね」


 深掘りすると闇が深そうだわ。


「はい、この話終わり! それで、それで、どうするの!? 王太子から謝礼がもらえるんでしょう、リチャード!」


 リジーが、わざとらしいくらい明るい声を出した。

 たぶん、空気を変えてくれた。


 リックは離れた場所で、ローランと次の依頼内容を話し合っていたらしい。

 リジーの声にびくりと肩を跳ねらせた。


「いや、それなぁ。今回の依頼報酬は、セス殿下からたんまり貰えるし。どうすりゃいいのか……」

「馬鹿ねぇ。じゃあ、今一番欲しいものとかは?」

「あ〜……」


 リックがちらりと私を見る。

 なに?

 意味がわからなくて首をひねる。


「……子どもが欲しい」

「「ぶっ!」」


 私とリジーが同時に吹いてしまった。

 その瞬間、リックの顔が真っ赤に染まる。

 やめて!私まで赤くなるわ……!


「……違う!いや、違わないけども!でも、将来的に子どもができて、普通の家庭を作りたいんだ!」


 びっくりした。

 そういう意味か。


「……リック。わかるけど……。王太子には叶えられないんじゃないかなぁ」


 すると、リックは何かを思い出すように、視線をさまよわせて指を立てた。


「じゃあ、冒険者を引退したときに、白い壁の赤い屋根、庭付き一戸建て、庭に大きな犬小屋がある物件かな。子どもの頃からのデイジーの夢だろ」

「リックーー!いつの話をしてるのよ……!」


 孤児院時代に、話したことがあった気がする。

 家を持たない今世では、そういうテンプレな夢を語ったような……。


「うーん。でも、そのくらいは俺が叶えたいから、正直いらないな」


 リジーが呆れたように溜め息をついた。

 断じて惚気ではない。


「もう、リチャード!こういう時はがめつくならない程度の金銭をもらっときゃいいのよ。お互いに助かるんだからぁ。じゃなかったら、マーガレットに譲っちゃえば?」

「デイジー……。欲しいものあるか?」


 リックが上目遣いで聞いてくる。

 あざとい。

 頑張ったのも、結果を出したのもリックなのに。

 こうやって私を甘やかしてくるんだから。


「じゃあ、一個だけね……悔やんでた事があって」

「リチャードと結婚したこと?」


 からかうように私に問いかけるリジー。


「なんだ?離婚の危機ってか?女に囲まれて鼻の下伸ばしてりゃそうなるわな」

「……お前なあ!!」


 ローランも加わってくる。

 聞き捨てならない言葉と一緒だ。

 すぐさまリックが掴みかかっているけれど、私としては複雑な現状なのよね。


 まあ、彼らもただの冗談で言っているのはわかっているから、笑えるけれど。

 ただ、ローランには個人面談を申し込みたい。


「私さ。あの時、孤児院を逃げ出さなかったら――」

「うん」


 リックが私の両手を包み込んだ。

 三年前もこの手の温かさに救われた。

 そして今も勇気をくれる。


「シスターみたいな人になりたかった。私たちに読み書きも計算も教えてくれて……。だから恩返しがしたかった」

「そうだな……。あの人のお陰で、普通に街中に溶け込めた」


 リックだって、読み書きも計算もできる。

 でも、それが当たり前だというわけでもない。


「そういう、学びたい子が学べる場所を作りたい」


「話が難しいぞ!要は、孤児だろうが平民だろうが、一緒に勉強する場所を作りたいってことだろ!」


 ローランが頭を掻きむしるように、声を上げた。

 うわ……熱く語りすぎちゃったかな。

 ちょっと恥ずかしい。


「うん。そう、一緒がいいの!」


 でも、思わず声が大きくなった。


「孤児だけを集めるんじゃなくて、平民の子も、働いている子も、帰る場所がない子も、同じ場所で学べるようにしたいの。……私が作るのはキッカケでいいかな」


「キッカケ?後は国に任せるのか?」


 ローランの疑問も、もっともだ。

 でも、私たちは国を運営するわけじゃない。


「私ができるのはちょっとしたことだよ。きっと、改善しようとする人も、邪魔だと思う人も出てくる。でもそれが普通だし」


「じゃあ、大きな石でも池に投げ込んでみる?孤児院出身でも、S級ヒーローが生まれました!とか?その名声に乗っかりたいやつは協力するかも」


 リジーが、リックを指差してウィンクをする。

 それを見て、リックの顔色が悪くなった。

 それは、とても大きな広告塔だ。

 きっと子どもたちの希望になる。 


「う……」


 たじろいだ様子で身を引くリックに、恐る恐る聞いてみる。

 政治利用されるかも……なんて、気分はよくないに決まってる。


「大きすぎる夢かな……?」

「いや」


 大きな手が、私の頭をぐしゃぐしゃと撫で回した。

 目の前には、いつも側にいてくれる大好きな人。

 そして心強い仲間たち。


「それを決めるのは俺たちじゃない。とりあえず、褒美をくれるっていうんだから言ってみりゃいいだろ?」


 孤児院のデイジーは、こんなに幸せになった。

 それはシスターや、今まで出会った人たちのおかげだ。

 なら、三歳で母と別れた私や、生まれたときから孤児院で育ったリックみたいに。

 同じ境遇の子どもたちも、素敵な出会いができるように。


「頑張ってプレゼンしてみようかな!」

「「ぷれぜん?」」


 目の前の三人が首をひねる。


「長所をたくさんあげて、相手をその気にさせることよ!」


 つまり、王太子殿下が断りにくい理由を、にこにこしながら並べればいいのだ。

 王家の面目とか、民への慈悲とか、英雄の願いとか。

 あ、宿舎と食事は欠かせないわね。

 一食分浮くだけでも、子どもを通わせる親もいるだろうし。


 ……うん。

 いける気がする。


「デイジー、悪い顔してるぞ」

「計算中の女は、みんなこんな顔になるのよ」

「マジか……女って怖い」


 適当に答えると、リックの口元が少し引きつった。

 そこにローランがなぜかドヤ顔でリックに語る。


「リジーはよくこんな顔してるぞ」

「マジか……」


 ああ……もう!


「「うるさい、男ども」」


 見事にリジーとタイミングが合い、私たちは目を合わせて笑い合った。

やはり二人の『原点』は、孤児院でした。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

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