第43話 ワイバーン討伐戦②――リックの覚悟
はい、今回は少年漫画回です。
作者の脳内では完全にバトル漫画でした。
リアクション、ブックマーク、評価が本当に励みになっています。 一つひとつの反応に力をいただいています。
――リック視点――
騎士団と一緒に森の奥へと歩いていく。
先日の森の同じ雰囲気だ。
静かすぎる。
森の生き物たちが、息を潜めて捕食者から隠れている。
確実に――いる。
「……あまり獲物がいなくなってきたな」
周囲の騎士たちも、明らかに張り詰めている。
作戦は話し合ってきた。
狩猟祭の喧騒で、隠れていた敵が現れる可能性が高い。
ならば、マーキングされた俺が、森の奥深い所で待ち受けるしかない。
会場にはデイジーも来ているはずだ。
あの天幕へ向かわれる前に、こっちへ引きずり出す。
緊張と焦燥で、鼓動が激しく胸を打つ。
俺の存在に気づかせるために、特殊な魔道具まで用意している。
(来いよ……。番を殺したご馳走がここにいるぞ)
虫の音が止んでいる。
――来た……!びりびりと、肌に電気が走ったようなこの感覚!
「伏せろ!来る……!」
木々の隙間に見える、わずかな空。
そこから――落ちてきた。
木がなぎ倒される音と、ほぼ同時に襲いかかる影。
「来た!こっちだクソ野郎!」
隣にいた騎士を蹴り飛ばし、咄嗟に剣で受け流す。
重い衝撃が腕に走った。
一瞬だけ見えたのは、鱗と翼。
そして、爬虫類特有の瞳だった。
(……やばい。思った以上に速い!)
この速度で上から来られたら、防ぎようがない。
そしてまた上空に頭を向けて飛び立とうとする。
「ワイバーンだ……!」
「すぐに、また来るぞ!」
騎士団員が警戒する中、俺は一人、敵に向かって走り出した。
その背中へ剣を突き立てる。
刃は飛膜を貫いた。
(まだまだ、これじゃ甘いんだろ?)
致命傷には遠い。
瞬時に剣を引き抜き、地面に降り立つ。
――すぐに構え直せ……!
前回でこいつの硬さはわかっている。
まずはダメージを重ねるしかない。
他に目移りされても困る。
こいつを引き付け続けるのが、俺の役割だ。
身を隠しても無意味な俺が、彼らの前に出続ける。
その瞬間、顔のすぐ横を風切り音と共に槍が飛んでいった。
――投げ槍!
見事に飛膜に突き刺さった。
直後に、槍が刺さったまま上昇していくワイバーン。
「怪我人は!」
「ああ、大丈夫だ!坊主、集中しろ!」
「身体強化をかける……!とにかく落ちてきた時に何発もぶち込め!」
答えた騎士団員は、ワイバーン討伐に選ばれた精鋭の一人だ。
ラスティの声と同時に、身体がぐっと軽くなる。
動きやすい。助かる。
敵も奇襲が失敗して、上空でぐるぐると旋回している。
まずい。
ここで仕留めないと。
「走ります……!サポートよろしく!」
答えを待たずに、森の奥へ飛び出した。
誰よりも目立つように。
俺だけを狙わせるために。
――その直後、また落ちてくる。
ギリギリで避け、その首元へ剣を突き立てる。
ギィン! という硬い音が鳴った。
鱗が邪魔だ……!
「どけ!」
森の中から、電撃魔法と槍がワイバーンへ飛んでくる。
「危なっ!」
「そのくらい適当に避けろ!」
味方からの容赦ない集中攻撃まで避ける羽目になるとは……!
味方の攻撃が当たる。
その瞬間を逃さず、また翼を狙う。
斬る。避ける。走る。
それを何度も繰り返し、飛膜を削っていく。
――だいぶ機動力が落ちた。
見るからに、翼の動きが鈍い。
そう思った直後。
ワイバーンの脚が着地した。
地面が揺れる。
「ご自慢の翼が、随分と格好よくなったな!」
槍が何本も飾りみたいに突き刺さり、剣で斬りつけられた飛膜はボロボロだ。
翼で飛ぶのを止め、こちらに向かって走り出してくる。
後は地上戦か――。
おかげで楽になったが……。
この硬さが問題だな。
鋭い爪を掻い潜って、下から腹を刺す。
やはり浅い……!
奥まで届かずに終わる。
ワイバーンがすぐ後ろに迫る中、木が倒れていく音がする。
ザクソンがあの馬鹿でかい斧で、次々と木を薙ぎ倒しているんだろう。
あの戦術は、さすがに真似できないな。
「リチャード!退路は絶っておくから前へ!」
「了解……!」
作戦通りだ。
このまま森の奥へ誘導していく。
疾走した先、その目前に崖が迫った。
――来た。
直前で地面に転がる。
すぐ真上を鋭い爪が掠めた。
(くそっ……ギリギリだ……!)
やつの攻撃を躱した瞬間、足に力を込める。
ここが正念場ってやつだ――!
ワイバーンの足元が崩れていく。
もちろん俺も巻き込まれる。
事前に仕掛けた罠だった。
だが、思った以上に崩れる範囲が広いな!?
(まずい……俺まで巻き込まれる!)
バランスを崩しながらも、割れていく足場を蹴る。
その勢いのまま、ワイバーンの背中に飛び乗った。
「お前はこのまま地面に落ちてろ……!ドラゴンもどきが……!」
剣を首元に思い切り突き立てた。
暴れて飛び立つ余裕なんて与えないように、さらに深く突き刺してやる。
「たまには地面に這いつくばるのも、いいと思うぜ」
直後に、物凄い振動と衝撃が襲い、剣にしがみついた。
砂ぼこりが舞う。
気づけば、崖下にもろとも転落していた。
どうだ、この野郎。
まだ来るなら、ここでとどめを刺してやる。
暴れていた巨体が、嘘みたいに沈黙していた。
やったか……?
剣は柄の部分までめり込んで、喉を貫通している。
それを確認した瞬間、首元で何かが緩んだ。
乾いた音を立てて、黒い首輪が地面に落ちる。
隷属の首輪。
ようやく、だ。
(やってやったぜ、ざまぁみろ……!)
――これで“英雄ごっこ”が終わった。
こんなに苦労したって、俺は何も変わっていない。
一人で討伐なんて、結局できなかったしな。
「リチャード!やったか!?」
崖上から声をかけられ、それに拳をあげて応えた。
その瞬間、周囲から歓声が上がった。
次回は平和回……のはずです。
デイジーがリックの元へ走ります。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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