表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/51

第39話 デイジー、狩猟祭の舞台へ

リアクション、ブクマ、評価が本当に励みになっています。

一つでも反応をいただけると、続きを書く力になります。

いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。


 私は貸し馬車で急いで王都に舞い戻った。

 そして、そのままセス殿下のタウンハウスの扉を叩く。

 いきなり消えたくせに、恥知らずにも程があるだろうけれど、人の命がかかっている。


 そんなことを気にしている余裕なんてなかった。

 彼の足枷にしかならない私に、なにが出来るのかわからない。

 けれど、セス殿下へ情報を伝えることくらいならできる。

 王国最高峰の武力を誇る騎士団なら、何とかしてくれるはずだ。


 きっと、大丈夫。

 そう信じるしかできない。


 不意に扉が開き、補佐官の男性がセス殿下のもとへ案内してくれた。

「やあ、おかえり」


 部屋の扉を開くと、意外にも、にこやかに迎えてくれた。

 いや。

 意外でもないか。

 ラスティさんをつけてくれたのだから。


「あの、この間は黙って行ってすみませんでした。それと、ラスティさん――回復職の応援も助かりました。それで、実は……!確定じゃなくて、ただの想像でしかないんですが、ワイバーンが逃げて――」

「わかってるから、落ち着いて」


 いつの間にか、支離滅裂で早口になっていた。

 それをセス殿下に宥められる。

 駄目だ、焦りすぎだ。


「ワイバーンの件は、こちらも情報を掴んでいるよ。ギルドも人員を派遣しているし、騎士団も増員予定だ。こちらは、私と義姉上の警護って理由で駆り出す」


 もう、対処済み……。

 増援まで計画されているなんて……。


「――そうなんですね!……よかった」


 殿下の言葉を聞いて、肩の力が抜けた。

 張り詰めていた緊張が解けて、膝からガクンと崩れそうになる。


「もう、兄上が動いているみたいだ。きっと今頃は騎士団員が森中を捜索していると思う」

「じゃあ、狩猟祭は……リックは大丈夫でしょうか」


 意味のない質問だ。

 そんなことは、ここにいるセス殿下にわかるわけがない。

 ただ私が安心したいだけだ。

 そんなことは、お見通しみたいだけれど。

 セス殿下は断言を避け、そのまま話題を変えた。


「そこは私にはどうしようもないけれど……。別のことはできるかな」

「別の、こと?……ルイーズ関連ですか?」


 セス殿下がわざわざ私に話すということは、それしかないだろう。

 リジーが手に入れた、あのメモを利用するのだろうか。

 それとも――。

 しかし、彼は私の疑問には答える気がないようだった。


「私だけの問題じゃないからね。まだ内緒だよ。狩猟祭当日、義姉上にも動いてもらう。そのために、少し合図を決めておきたい。君は神話には詳しいかな」


 王太子妃?

 うわ……それは、確実に何かが起こるのね。

 ただでさえ問題が山積みなのに、これ以上は荷が重い。


「いえ、詳しくないです。有名な神様しか知りません。……その合図が出たら、私はどうすれば?」


 つい、投げやりになってしまう。

 当日の騎士団員の配置の方が気になるくらいだ。

 ――社交どころじゃないのに。


 そんな私の態度にも、彼は少し困ったように笑うだけだった。

 ああ……。さすがにこれは失礼だった。

 殿下が回りくどいのは今さらだ。


「うーん。流れはこちらで作るから、ぶち壊さないこと」

「……わかりました。妃殿下も関わっているなら気をつけます」


 多分、関わるといいことがない話だ。

 ここは素直に頷いておくのが一番いい。


「うん。例えば、季節ごとに象徴的な女神がいるんだよね。王太子妃を褒めるときは、今の時期だと、秋の女神ヴェルミアを使うんだよ。ああ、基本的なマナーだから覚えててね」

「豊穣の女神様ですね。わかりました」


 そのくらいなら、知っている。

 季節ごとにある、女神の名前を冠した祝祭は国民にも大人気で街中で盛り上がる。


「ただ、逆に社交界では春の女神は『奔放』の隠語だから使わないように」

「え、なぜですか??貴族の会話が難しすぎる……」


 春の祝祭も大人気なイベントなのに。

 しかも、そこで花を贈って告白するのが定番だ。

 前世のチョコレートの戦略と、同じ香りがする……と毎年思っている。


「女神エルシアには恋と愛の逸話がいくつもあってね。人間の男に騙されて、最後は追放されたって話もある」


 そりゃ、そんな女神に例えられたら失礼か……。

 でも神様なのに不思議なものだ。


「……神話ってなんでこういう話が多いのか。わかりました。春の女神は使っちゃ駄目……と」

「必ずしもそうじゃないのが面白いところさ。魅力的だという意味もあるからね。口説き文句の定番だ。ただ、使い場所だね」


 彼は、一度考える素振りを見せた後、私を見つめた。

 その瞳は見るからに楽しんでいる。


「マーガレットなんて、春の女神に相応しい名前じゃないか。長い冬の終わりを告げる陽光が、まるで君のようだ。その笑顔が人を惑わせる……とかね」


 首を傾げて意味ありげに微笑む。

 ええ、春生まれに多いでしょうね……。

 ふっと、窓の外を見ると夏の日差しが和らいで、秋らしい薄い雲が広がっている。

 春は遠い。


「さらに混乱するだけなんですが。で、セス殿下のできることは、女性を女神に例えて褒めるってことですか?」


「ふっ、ふふ!それじゃあ、ただの軽薄な無能って言ってるようなものだよ。興味深い見解だけど、さすがに不敬すぎるんじゃないか?」


 おかしそうに笑った顔は、年相応に見えるのに。

 寒々しいことを言うからだ。


「うーん。悪気はなかったんですが。この話の流れではこういう感想になってしまったというか……」

「え……!君もそう思うの?」


 適当に答えた私の言葉に、彼は意外にも食いついてしまった。

 何故だ。殿下の後ろでは補佐官が必死に首を振っている。

 どういう意味だろう?


「みんな、私を放蕩者みたいな目で見るんだよね。なんでかな……」


 セス殿下は本当に首を傾げて私に聞いてくる。

 上目遣いはやめてくれ。

 そういう所だと思います。


 ――答えにくい。

 だって、百戦錬磨みたいな顔しているんだもの!

 ……なんて言えない……。


「えっと……意外と子犬っぽい……からですかね……」


 補佐官に、ジェスチャーで叱られた。

 これも駄目!?


「……子犬。まあ、いいや。君も少し落ち着けたみたいだからね。とりあえず休んだほうがいい」

「あ……。ありがとうございます」


 ――私の緊張を解すため、世間話で気を紛らわせてくれたんだ。

 リックのことも、狩猟祭のこともあり、イライラしすぎていたみたいだ。


「さて、時間がないから衣装はこちらが用意しよう。狩猟祭の舞台に立ってもらうよ、マーガレット。――兄上とリチャードとは少し趣が違う演目だけれどね」



 

セスとコンラートは十年以上の付き合いです。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

もし物語を楽しんでいただけましたら、

★やブックマークで応援していただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ