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【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

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第38話 王太子と一蓮托生――リック

リアクション、ブクマ、評価が本当に励みになっています。

一つでも反応をいただけると、続きを書く力になります。

いつも読んでくださって、本当にありがとうございます。


 ラスティが先に現地へ行き、現状を説明してくれるということで話がまとまった。

 俺とローランは、怪我人を近くの村まで運び、医者に引き渡すことになった。


 そのお陰で多少は休息が取れた。

 そして、王家の所有地に着いたのは翌日の夜だった。

 狩猟祭まで四日と少し。

 騎士団員はすでに現地入りしていて、会場の設営や、警備配置や安全確認などの最終確認をする段階だったらしい。


「お前がリチャードか?……なるほど、リーガルが気に入りそうだ。まさに素直なクソガキっぽい所とかな」

「……それはどうも。もうそんな歳じゃないんですが。で、あんたは?」


 いきなり低い声が降ってきた。

 褒められているのかも微妙な言葉をかけられ、相手を見上げる。

 デカい。俺やローランより頭二つ分は高く見える。

 それ以上に、肩幅と腕の太さが人間のものじゃない。

 今は軽装だが、鎧でも着込んだら、あれはもう歩く城壁だ。


 しかし、筋肉だるまだ。冒険者でも中々このサイズ感はいない。

 羨まし――くはないな。

 デイジーに引かれそうだ。


「うわ、おっさんガタイすげぇな!獲物は何使ってんだ?」


 案の定、ローランが食いついた。

 こいつは結構、武器マニアだったりする。


「おっさん呼びは気に食わねぇが、見る目はあるな。投げ槍と戦斧だ。ちまちま剣で戦うのが苦手でな」

「……おお!俺もナイフ投げは得意だが、槍は投げたことないわ」

「待て待て待て!ローラン、ステイ!話が混乱するっての」


 目の前の男は、豪快に笑った。

 声もデカい。


「俺はリーガルの昔なじみだ。後でお前の兄弟子たちも紹介してやる。自己紹介はその時にな」


 その男は一度言葉を切り、直後にぴりりとした緊張感を漂わせた。

 ここからが本題か。

 夜風に乗って騎士たちの声が聞こえてくる。

 少し離れた所に見える、あの暗い森。

 その中にヤツがいるかもしれない。


 なんとか話をつけられるといいんだが。


「で、早速、王太子殿下がお待ちだ」


 その言葉に、思わず喉が鳴った。

 もう大物と対面か。

 こっちは礼儀も知らない庶民だっての……。


「ローランはここで待機な」

「ふん。堅苦しいのは苦手だからありがたいぜ」

「……でも、もう少し“交渉”にも慣れてくれると助かるんだけどな」


 俺が少しだけ愚痴をこぼして溜め息をつくと、ローランは笑った。


「お前らがいるから平気だろ?」

「……まあな。俺たちがやるから、お前はそのままでいいか」


 いつも通りのやりとりだ。

 きっと、またこんなふうに馬鹿なことを言い合える。

 そう思わせようとしているのかもしれない。

 こいつなりの、不器用な励ましだった。


 礼儀知らずのローランをその場に残し、俺はデカい騎士について行った。


 案内されたのは、一番立派な天幕の中だった。

 中に入った途端に、松明に照らされた華やかな金髪が目に入った。

 ――あれが王太子か。第三王子と似ているな。

 椅子に座る姿は、優雅で品がある。


 しかし、セスよりも話が通じそうだ。

 こちらの腹を探っている感じがしない。

 背後には、ずらりと騎士が並び立っている。

 かなりの圧迫感だ。

 そして王太子の目の前には、先日狩ったワイバーンの爪が置いてあった。

 証拠としてラスティに渡したものだ。


「さて、リチャード。ワイバーン討伐の報告は受けている。今回の情報提供も助かる。しかし……セスの所に行かなかったのはなぜだ?」


 とりあえず一礼する。

 セスのことまで掴んでいるなら、説明も早い。


「育ちが良くないので、無作法は大目に見てください。責任者の王太子殿下に、まずは話を通すのが筋だと思いました。色々な所に尻尾を振る人間は信用ならない――これが俺たちの常識です。……それに時間がない」


 信じてもらうしかない。

 しかし、正直に第三王子が気に食わないとは言えないしな。


「お前は俺が手柄を持っていくとは思わないわけか」


 意外な質問に、虚を突かれる。

 そんな細かいことまで気にしている状況だろうか。


「まあ、あなたが冒険者なら別ですが……。でも、王族の方がそんな目先のことで動くとは思っていません。逆にリスクまで負いますしね……。番を逃がした証拠ですよ」


 まさに、俺の失態の証拠でもある……。

 あそこで逃がした責任を取らされるってことか?


「はははは!確かに。ちゃんと状況把握も出来ているし、強欲でもない。――それに」


 王太子は、コン、とワイバーンの爪を小突いた。


「実力も確かだ。ラスティから報告も来ているしな。討伐に協力してくれるか?なんでも、ワイバーンの的になってくれるつもりで来てくれたとか?」

「的は確かにそうなんですが……。簡単に死ぬ気はありません」


 作戦によっては囮や餌として放り込まれるかもしれない。

 そんな警戒心が、つい表情に出ていたらしい。


「まあ、そう警戒するな。正直、ここにいる全員がもう一蓮托生だ。被害が出れば、騎士たちの首が飛ぶ。実は、王族も信用が大切でね――それが貴族たちの常識だ」


 王太子は、困ったように少しだけ苦笑した。

 そして、数秒後。

 周囲の騎士に告げる。


「作戦会議といこう」






「さて、出来れば事前に終わらせたいな。騎士団総出で捜索するべきか?」


 王太子が口火を切る。

 それは誰もが考えていることだろう。


「番を失ったばかりのワイバーンです。隠れて出てこない可能性が高いですね。……巣を作る時間もないでしょうから、森の奥に潜んでいるかもしれません」


 一番近くにいた騎士がそれに言葉を返すと、それをきっかけに様々な声が上がる。

 やはり意見が分かれていく――が、ここで王太子が舵を切った。


「とりあえず時間がない。まずは痕跡を探しに行くぞ」


 そして、食い散らかされた鹿や猪などの死体がいくつも見つかった。

 それからは、森の奥へ進んでいく捜索隊に加わることになった。

 少数精鋭で組まれたメンバーには、あの大男――ザクソンも、顔見知りのラスティもいる。


 痕跡は新しい。いるのは間違いない。

 なのに、肝心の姿だけが見えなかった。

 探せば探すほど、不気味さだけが増していく。


 どこかでこちらを見ているのではないか。

 そんな気配だけが、森の中に残っている。


 ついには、ワイバーンは狩猟祭が始まるまで姿を現さなかった。

 そして俺たちは狩猟祭の朝を迎えることになる。


 ◇◇◇


 ――セス視点――



「兄上が動いた。……かなり危機的状況だね」


 狩猟祭まであと四日。

 すべてが不利な状況だ。

 もし被害が出れば、王家全体の失態になり、各貴族家の追求も免れない。

 民からの信頼も落ちるだろう。


 二番目の兄はすでに、外国へ出て、王配になる準備を始めている。一年の半分以上この国にいない。


 王太子が失脚すると――。


「私に回ってくるんだよねぇ……」


 報告書を読んで、私は思わず溜め息を漏らした。

 そんな私を見て、部下のコンラートが呆れたように首を振った。

 こいつ。

 前から思っていたが、事態の深刻さがわかっていない。

 だから、満面の笑みで彼に告げる。


「私が王になってしまったら、お前は宰相職だぞ」


 書類を纏めていたコンラートが、ぎくりと身体を強張らせた。


「……無茶振りですね」

「今の私の気持ちがわかったか?」

「……ええ。深刻です。宰相職なんて、もっと忙しくなるだけですから……。余計、婚期が延びてしまう……」


 なんの心配をしているのだか。

 いや、本人にとっては深刻なのだろう。

 まあ、いいか。


 ギルドから、ワイバーンの番情報が流され、それと共に冒険者が次々と送り出されている。


 しかし王家所有の森には呼び込めない。

 無意味な古臭い慣例だ。

 しかも危機的な状況には足枷でしかない。


 時期も悪い。

 もう狩猟祭の直前で動かせる駒が間に合わない。

 騎士団員が総出で捜索と討伐に当たるだろうが――。


 つい、馬鹿馬鹿しい戯れ言が口をつく。


「私もルイーズ嬢の予言を信じたくなるなんてね……。是非、その英雄譚を見せてくれ――リチャード」


 

王太子殿下は「男にモテる男」というイメージです。 たぶん、騎士団からの信頼が厚いタイプ。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。 もし物語を楽しんでいただけましたら、★やブックマークで応援していただけると励みになります。

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