表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/51

第27話 真夜中の侵入者?もちろん彼です


 夜会から数日後。


「で、ついにお茶会に呼ばれましたよ。……ご満足ですか?」


 私は、一枚の手紙をセス殿下に差し出した。

 優雅な仕草でカップを傾ける彼は、ちらりとそれに視線を向けた。

 彼の別邸の応接室だ。

 側妃だった母君から受け継いだらしい。

 意外にも、王宮にいるよりもここで過ごすことが多い。


(王子様って、ずっと宮殿住まいだと思ってたんだよね)


 私とローランも引き続き、このタウンハウスに滞在中だ。

 男性の使用人は警護も兼ねているらしく、通り過ぎるたびにローランが戦闘シミュレーションをして語ってくるから、若干ウザい。

 彼は永遠の厨二病だ。

 窓際のカーテンが揺れるのを観ながらそんなことを考える。


「ようやく私と話してくれる気になったのかな?ずっとツンツンして逃げ回ってたのに」

「逃げ回ってません……!殿下がそうやって――」


 “性格が悪いからだ“、とは言えずに言葉を切る。


 先日の夜会での意地悪には、若干怒っていた。

 確かに、どこに人目があるかわからない所で、リックと手を握り合おうとするなんて私が悪い。

 でも――。

 わかっていても割り切れない。


 ――『計画を丸潰しにするつもりかな』。

 耳元で囁かれた言葉に、あの時は返す言葉もなかったけれど。

 なぜか、あの時のリックの様子に胸騒ぎがする。

 敵陣に入り込んでるんだもの。

 ローランの下世話で酷い妄想を、毎日毎日聞かされていたから不安になってしまう。


「失礼な振る舞いをしてすみませんでした。――本題に入りましょう。これなんですが、中身はわかってますよね……どうしましょうか?」


 重厚なテーブルに置かれた、青と白に金の模様の封筒。

 送り主が誰なのかは一目瞭然だ。

 届けてくれたのが彼の部下なんだから、きっと中身も報告済みだろう。

 殿下の後ろの補佐官さん――いつも思うけれど、眼鏡がピカピカだなぁ……。


「まぁね。事前に選別させているし。しかし、義理姉上が主催か。これは荷が重いな。社交界でも中枢にいる参加者たちだ。――いわゆる吊し上げかなぁ?それとも見極めかな」


 優雅に笑いながらネチネチ、チクチク、あまつさえお茶でも掛けられて笑いものにされるのだろうか……。

 そんな話を読んだことがある。

 気が重い。


「うわぁ~……。逃げていいですか……」


 尻込みをして、自然とソファの背もたれに寄りかかる。

 マナー教師に叱られる仕草だ。

 ずっと笑顔を作り続けるのすら向いていないのに、つらい。


「でも、いつも通りのメンバーなら、内心ルイーズ嬢をよく思っていなかったご婦人が多いね」

「そうなんですか……。というか、詳しいですね」

「有名な話だしね」


 セス殿下は、侍従に耳打ちして机から一枚の紙を持ってこさせた。

 女性の名前が書いてある。

 察するにお茶会の招待客だろう。


「ハワード伯爵夫人なんて、随分見下されていたみたいだ。あとは長年ヴァルターを想い続けて敗れた、ヨーク侯爵夫人とか……。今は嫁いでいるし、彼女の内心はわからないけれどね」


 リストの人物を教えてくれる――が、“それは目の敵にされるでしょうねぇ”って感想しか出てこない。

 もう一度、ハーブティーに口をつける。

 ――この感じ、癒されるわぁ。


「じゃあ、王太子妃殿下はどうなんでしょうか。王太子殿下は明らかに迷惑がっていましたね」

「それは、婚約者時代にかなり目の敵にされていたからね。今は手のひら返しで擦り寄っているけれど……。私なら好きにはならないな」


 なるほど。

 王太子が結婚する前は、奪え返そうと散々絡んだようだ。

 何をしたのやら……。


「さすがに、身の危険――みたいな過激なことはなかったんですよね?」

「兄上が、いつからか護衛を増やしていたね」


 ルイーズ。

 そりゃ王太子殿下が嫌がるわけだよ。

 逆効果で好感度マイナスだわ。

 むしろ、地で悪役令嬢になってるじゃない。


「……ルイーズってどんな立ち位置なんですか?」

「主に下位貴族のご令嬢の支持があるかな。普通の慣例を無視して、男爵家や子爵家のご令嬢だけを招いてサロンを開いている。我先にと彼女の取り巻きになる娘が多い」


 ルイーズらしい。

 昔のように、自分の派閥を作るのが上手い――けれど、代わりに反感も買っているのね。


「私は、どう立ち回りましょうか」

「別に君は本格的な婚約者じゃないからね。それに……。社交界の猛者たちだ。もう身分は割れているだろう。……敵対する意思がないことさえ見せればいい」


 正面からは普通の茶葉の香りが漂ってくる。

 ハーブティーは女性に人気なのかな?


「おとなしく、いびられて来いってことですか」


 にこにこと笑って答えない殿下を見て溜め息が出る。

 人の気も知らないで――。

 これだから権力者は。


「……やっぱり、逃げていいですかねぇ」

「エーデルシュタイン家の派閥もあるからね。ここは王太子妃殿下の庇護を得たいところだよね。非公式に会う機会が作れないか聞いてみるよ」


 非公式で王太子妃と会う?

 こういう所がセス殿下も王族だ。

 庶民を理解していないわ……。


「その場には、殿下もいてくれるんですよねぇ!?」

「もちろんだ――と言いたいけど、向こう次第だし……」

「嘘でも……!嘘でもいいから安心くらいさせてください!」


 私の叫びは、どうやら届かないようだ。

 わかっているわ。すべて思い通りには行かないわよね。

 事前に話す機会があった方が、きっとやりやすい。

 そして……。

 女同士のやりとりに、男性は必要ないのよ――。


(彼らとは戦う場所も違うしね)

 すでに胃が痛い私は、素直に諦めた。

 殿下を好きでもないし、仮の身分の私がそこまで頑張る必要もないわ。


 もーー!どうにでもなれ!

 そんな気分でカップの残りを一気に飲み干した。


 ◇◇◇



 夜中、少し夜風を浴びるために、外に出ようとテラスの鍵を開けた。

 その瞬間、強くて抗えない力で後ろから羽交い締めにされる。

 驚きで、一瞬声が出ない。

 無理矢理出した、か細い声で助けを求めようと声を上げた。

「……だれか――」


 私の口を押さえて、無理矢理に部屋へ入り込んだ人物が、耳元で囁いた。


「デイジー……俺だ」


 ――それは、ずっと聞きたいと願っていた声だった。

 なぜ、ここに?

 どうやって?

 そんな疑問も忘れて、恋しい彼に抱きついた。

 慣れ親しんでいた彼の香りと、体温が私を包みこんでくれる。


「リック……!」


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ