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【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

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第16話 命がけで守る――彼らの誓い


「……デイジー。一緒に王都へ来てくれるか?」


 ――え?突然の言葉につい目を瞬かせる。


「お願いだ。そうしないとお前を守れない。デイジー……お前は今、情報屋や賞金稼ぎに狙われている」


『狙われている』

 その言葉に、胸が痛いほど暴れ、冷や汗が流れる。

 ――ついに来た。過去が私を逃がしてくれない。

 心のどこかでこの日が来ることを予想していたようだ。

 なぜかその事実がストンと胸に落ちた。


 それを誤魔化して、リックに軽口を叩く。


「むしろ置いていかれると困るわ。ここぞとばかり寄ってくるやつが多いったら」

「……はあ?」

「リックの物を奪ってやりたいって人、意外と多いのよ」


 ぴたりと彼の動きが止まり、不穏な空気が流れる。

 嫉妬しちゃった。

 でも――。

 心を蝕む不安から逃れたくて、リックの温もりを求めてしまう。

 ギュッと彼に抱きついて、胸元の服を握りしめた。

 耳に届くリックの鼓動が心地良い。


「だから私は、リックと一緒に行くよ。誘ってくれてよかった」

「デイジー……」

「あなたが居ないと、駄目になっちゃった。……もう。どうしてくれるのよ」


 ゆっくりと私の頭を撫でる大きな手。


「……キスしたい」


 ――もう仕方ないなぁ。

 私の不安に気づいてるからかな?

 いつもより、優しくしてくれる。

 そんなリックに、クスりと、自然と笑みが溢れた。


「結構真面目な話をしてたのに……。ん、いいよ……」


 ちゅっと軽くキスをする。

 もどかしい。

 つい、彼の背中に腕を回してしまう。


「もう一回いいか……」

「……ん、はぁ、リック……」


 やっぱり今日はちょっと様子がおかしい。

 毎回、こんなに確認なんてしないのに。


 ――しばらくして、彼は先ほどの話を再開してくれた。


「……今日依頼を受けてきた。詳しくは話せないけど――。デイジーを守るのに一番いい選択だと思う」

「依頼……。守るって情報ギルドのこと?」


 “詳しく話せない”。

 それは、また一人で請け負った仕事なんだ。



「ああ。俺が任務中の間は依頼主が守ってくれる」


 そんなに危ない状況なの?

 知らずに、恐怖で身体がぶるりと震えた。

 ついに追いついてしまった、そう思った。


 ここが『物語の世界』だと言っていた彼女を思い出す。

 もしそうなら、私たちはまた翻弄されるのか……。

 自然と自分の肩を抱えていた。

 それに気づいたリックが、私を宥めるように包み込んでくれる。


「そっか。じゃあ、リジーとローランは――」

「ああ、それは――」


 リックが言い淀んで、その続きを口にしようとした瞬間。


 同時に、激しい音を立てて扉が開いた。


「え……!?」


 見ると、険しい表情で詰め寄ってくるローランと、後ろで私にそっと手を合わせて、苦笑いしているリジーがいた。


「リチャード、てめぇ……!なに勝手にリジーを巻き込んでやがる!」

「ローラン!?いきなりどうして……ちょ、ちょっと……」


 止めようと声を上げるけれど無視をされる。


 怒りを露わにして怒鳴るローランに少し恐怖を覚えた。こんな事は初めてだ。

 いつもの不器用でやんちゃで、明るい彼じゃない。

 本気で怒っている。


 突然の出来事に混乱して、リックにしがみついた。

 それをリックがゆっくりと引き剥がし一歩前に出る。


「リジーの決断だ。彼女が自分でやるって決めた」

「うるせえ!まずは俺に話すのが筋ってもんだろうが」


 カッとなったローランが大振りに拳を翳した。


 ――バキッ!


 さらにリックの胸元を掴み上げ、ローランは拳を叩き込んだ。

 そして、その勢いのまま左足を脇腹に入れた。


「リック……!」


 リックは脇腹を押さえて苦悶の表情を浮かべる。


「てめぇはどうなんだよ。マーガレットが決めたら素直にほいほい認めるのかよ……!出来ねぇくせに偉そうに」

「……そうだな。俺もそいつを殴る」


 自嘲気味に呟かれた言葉に、ローランはさらに噛み付いた。

 彼がリジーを大切にしているのは、リックだって分かっているはずなのに。

 全部、さっきの話のせい?

 私の問題にリジーを巻き込んだの?


「はっ!物わかりがよくて助かるな。リジーを巻き込むな。しかもこんなヤバそうなことに」 

「……死んでも守る」

「ああ?」

「リジーの事は、俺の命をかけて守る」


 その言葉に、ローランは鼻で笑った。


「無責任だよなぁ。自分だけ大事な女を大切に囲ってる奴に――言われたくねぇんだよ!」


 また殴られて、リックの体がよろめいた。

 殴られた唇の端から、彼の血が床に垂れる。


(いやだ……!二人ともやめて)


 さらに拳が振るわれそうになった時に、思わず身を乗り出していた。

 一発くらい殴られたっていい。

 元はといえば、私のせいかもしれないのに……!


「駄目……もうやめて……!」

「なっ……!」


 目を瞑って飛び出したせいでわからなかったけれど、ローランの焦った声が聞こえた気がした。


 ――ガッ!


 覚悟した衝撃が来ないので、恐る恐る目を開けると、リックがその腕を掴んでいた。


「マーガレット。危ないだろ、俺の後ろにいてくれ」

「……女が口を出す場面じゃないだろーが、下がってろ!」


 そう吠えたローランに、リジーが後ろから見事な蹴りを入れた。

 それは、股の間に綺麗に決まった。


 一瞬後。

 崩れ落ちて悶絶するローランと、少しだけ顔が青く見えるリックが。


 ――うわ……。凄い一撃……。


「あんたが、メグの前で暴れるからでしょうが。……ねぇローラン?最近ちょっと調子に乗ってないかなぁ?私たちは対等なの。リチャードが私に先に話したのは、私の意思を尊重したからよ、わかる?」


 蹲りながら、コクコクと首を縦に振る彼。

 少し震えている……大丈夫かな……?


「リジー。やりすぎなんじゃ……」

「ああ、後で“元気にな〜れ”を掛けて治して上げるから平気よぉ。それより、メグ!こんな馬鹿に殴られなくて良かった……!」


 ――“元気にな〜れ”はリジーの回復魔法だけど……。効くのかな?怪我が治るから大丈夫かな。


「リジー……。今すぐにでもローランに掛けてやってくれ、頼む。惨すぎて見ていられない……」

「リチャードもわざわざ殴られて……。男って馬鹿ねぇ。――“中範囲ヒール”!」


 眩い光がローランとリックを包み込んでいく。

 リジーの魔法で痛みと怒りが引いたのか。

 またはリジーの説教のほうが効いたのか。

 ローランは、少しだけ冷静になってくれた。


「ローラン。先にリジーに話したのは悪かった。お前にも話すつもりだったよ」

「どうだかな。……最近、良くない噂ばかりだ。リチャードとマーガレットが実は血筋がいいとか。元の地位に戻るとかな」


 ローランの言葉を聞いて、私たちは顔を見合わせた。

 完全に違う方向に話が向かっている。


(そんな噂があること自体知らなかったわ)


 リックは少し考え込むように、顎に手を当てている。

 そして、一瞬だけ躊躇い、深く息を吐いた。


「違う。俺たちはただの孤児だ。――ただ、最近、この国のトップ――に近い人から依頼を受けた」

「「なっ!?」」


 それは聞いていない。

 いや、タイミング的にはさっき話すつもりだったんだろうけど……!


「向こうからは俺の推薦メンバーを連れて行く許可も貰ってる。誓約魔法を受けることになるが……」


 リックは、ちらり、とリジーを見やった。

 頷く彼女は、それを受け入れたって事なのか。


「ローラン、お前はどうする。パーティを抜けるか?……どんな決定をしてもリジーは死んでも守る。メンバーは絶対に死なせない。これだけは必ず約束する」


 ローランが睨みつけるようにリックに問いかけた。


「マーガレットはどうするんだ。こいつも関わってるからリジーが受けたんだろ」

「だから、出来るならお前にマーガレットを託したい。……お前しか信用できない」


 数秒睨み合った彼らはフッと笑った。

 その瞬間にいつもの空気が戻り、肩の力が抜けた。


 ――良かった。なんだかんだ言ってもリックはローランを信頼してる。そして……。


「じゃあ、俺もお前の嫁を、命をかけて守ってやるよ」


 ローランもそうみたいだ。

 思わずリジーに目を向けた。

 彼女は?

 彼女にはどんな役割を与えられるの?

 その視線に気づいた彼女は、悪戯っぽく笑った。


「こらぁ、メグ!私はただ、ワガママな馬鹿娘のメイド役だよ。本当に危険になったらリチャードの所に逃げ込むから大丈夫」


 軽く言っているけれど、今の話では確実にリックの補助だ。

 上位貴族の――さらに誓約魔法が掛けられるような仕事なんて……。

 ローランの心配もわかる。


「リジー。無理してない?もう決めちゃったの?」

「うん、決めちゃった。この二年ちょい、居心地よかったからね。でしょう、ローラン」

「まあな……。ここ以外、どのパーティにも馴染めなかったしな……」


 そこでローランが言い淀んで口を閉ざす。


「メグ。私の男を信頼してくれる?馬鹿だけど、頼りになる。私は、あなたが選んだ旦那を信頼してるよ」

「……!そんなの……信頼してるよ。ただ、リジーが心配なんだよ……。リックは自分で何とかするだろうけど……リジーは――」


 我儘なお嬢様に仕える。

 キツイ仕事かもしれない。

 それ以上の危険があるかもしれない――。


「少しは旦那を信頼してあげなよ〜。言ってたじゃん、命懸けて守るって。でも……あ〜あ、一番最初に言ってくれたのが、ローランじゃないとかねぇ。そういう残念さはどうしようもないけど」

「……なっ!」

「間抜けだな。素直に言っときゃ良かったのに」


 みんな笑顔だけど……。

 きっと複雑な気持ちを抱えてる。

 だから私も、無理やり笑ってみせた。


「じゃあ、リックが浮気しないように見張っててね」

「おいおい、マーガレット、こいつがそんな事……」


 私とローランが軽口を言い合っていると、ぴたりと空気が止まった。

 一瞬だけ顔が強張った二人を見て、私とローランは顔を見合わせる。


「「――え?」」

 

余談ですが、ローランのイメージはゴールデンレトリバーです。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

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