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【新章・王都編スタート】転生したら孤児院出身。テンション低いけど頑張ります  作者: しぃ太郎
第三章 ルイーズ、再び現る

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第13話 ルイーズの歪んだ欲望――幕は再び上がる

新章スタートです。

よろしくお願いします。



「ルイーズ、お探しの人物を見つけ出しました」

「あら、本当?――」


 白い壁に大きなステンドグラスが幾つも嵌め込まれ、鮮やかな光を映し出しているこの場所。

 数代前の公爵が、敷地内に建てたという小さな礼拝堂。

 ここが「彼」と内密に話をする場所だった。


 そんな美しい光景の中、ルイーズは振り返った。

 その動きに合わせ、着ているドレスが裾を揺らした。

 視線の先には、美しい銀髪に灰色の瞳の青年が微笑みを浮かべている。


「A級冒険者で『天恵』持ちのリチャードといえば、多少名前が知られているみたいです」

「え――。A級?S級じゃなくて?」


 思わず聞き返してしまう。

 確か、この時期にはS級になっていたはずだったのに。


「S級なんて国に数人しかおりませんよ」

「誤差……かしら。まあ、いいわ。その彼を連れて来てちょうだい」


 私が主人公だった物語は、すでに終わってしまった。

 侯爵家の全員から、溺愛されていくはずだったのに……。


「そんなに拳を握ると、怪我をしますよ」

「だって、ずっと忘れられなかったんだもの!もう三年よ!?」


 ヴァルターはそっと私の手のひらを包み込んだ。

 その、宥めるような声にも苛立ってしょうがない。


「ええ。お可哀想に。全部その女のせいなのですよね」

「そうよ!私は誰よりも幸せになるべきだったの!なのに――」


 それを思い出す度に、煮え滾るような怒りが沸き上がっていたのだ。


「でも、もういい。これからやり直してみせるわ」

「……それがリチャードだと?」

「ええ。だって彼は、別のヒーローだもの」


 リチャードは、スピンオフのヒーローだった。

 ヒロインは、幼馴染みだったはずだ。


「リチャードも格好よくて好きだったわ。私が奪われたんだから、奪ってもいいでしょう?」


 ダークブラウンの髪に、藍色の瞳。

 そう。

 今の私ならその役を奪えるかもしれない。


 ――あの日、引き取られなかった私は、ただの孤児として過ごすしかなかった。


「デイジー……あの子のせいで、一番好きだったヒーローが結婚しちゃったわ……」

「そんなに嘆かないでください。“前のヒーロー”の事は、本当に……」

「知ったような口を聞かないで」


 デイジー。


 いつも黙ってこちらを見ているだけの、扱いやすい子だと思っていたら見事にしてやられてしまった。


(絶対に私を羨んで、ネックレスを盗んだのよ)


「汚い孤児のくせに。みんなみんな酷すぎる……。私のせいじゃないのに」


 あの時の、嫌悪が滲んで蔑むような周囲の視線。

 耐え難い屈辱だった。

 仕事を押し付けられ、仲間から外され、さらには陰口を言われる毎日。


 ついに私は我慢の限界が来て、孤児院を逃げ出した。

 そして、登場人物の一人を頼った。


「ですが、そのお陰で貴女に会えました。私にとっては幸福の極みですよ」

「……ふん。本当なら関わりたくなかったわよ、悪役なんて」

「ふふふ。いつも私のことをそう仰る」


 公爵令息――ヴァルター。

 ヒロインの私――ルイーズに執着して、手に入れようと裏で手を回し、ヒーローを追い詰める危険な人物。


「……聞き流してちょうだい」

「ええ。大丈夫です。なにせ、貴女の“予言”で私は救われたのですから」


 本来なら彼は、家族を失った状態で登場する。

 ここから彼の歪んだ性格と、妄執のような愛が生まれた――と書いてあった。


「あの時、貴女が必死で私に縋るように伝えてくださらなければ、両親は亡くなっていました」

「……ええ。間に合ってよかったわ」


 今では私に対して、崇拝に近い愛を向けている。

 原作の彼のようにはなっていない。


「そろそろ戻らなければ……。また義兄として貴女に接しなくてはいけません」

「何?またご褒美が欲しいの?」

「……ええ。是非」


 ヴァルターは目元をほんのりと赤くして私をじっと見ている。

 サブヒーローだけあって、見た目はいい。

 権力もある。


 でも――。

 何か物足りない。

 やっぱり二番手だからかしら。

 どのみち義兄になった時点で無理だったけれど。

 彼は期待にその瞳を輝かせているが、何故か気が乗らない。


(……本当に顔だけよね)

「はあ。仕方ないわね……」

 

 彼の唇に軽くキスをする。

 まだまだ頑張ってもらわないといけないもの。


「ルイーズ。……ふふ。君のためなら、何でもしてあげます。その冒険者が欲しいんですね?」

「そうよ。彼はいずれS級になるもの。でも本命は――」

「王子……ですよね」


 私の言葉に被せるようにヴァルターが喋る。

 こういう所がやはり好きじゃないんだわ。


「もちろんよ。奪われた幸せ以上のものを掴み取ってやる」


 無駄な苦労を沢山させられたんだもの。


「デイジーの行方もよろしくね。見つけるまで探し続けてやるわ」

「時間の問題ですよ。各地のギルドに手配しましたから」

「……楽しみだわ。見つけたら、どうしてやろうかしら?」


 暗く淀んだものが心を覆っていき、知らずに口元が歪んだ。


「君のその表情――。それが一番好きですよ……ルイーズ」


 ――そう。私には原作を知っているという利点がある。

 これを使えば、もっともっと手に入るわ。


 見てらっしゃい、デイジー。

 あんたなんか目じゃないくらい幸せになってやるわ。

 

ここまで読んでくださってありがとうございました。

もし少しでも心に残るものがありましたら、★で応援していただけると嬉しいです。

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