23:遺跡の前での誓い
ユタ以外誰もいなくなった静寂の廃墟で天征は地面に伏して絶望していた。
なんであの時止められなかったんだろう…。なんであの時やっぱり行くの止めようって言えなかったんだ…。みんなを取り返しのつかない目に遭わせてしまった。俺って最低だ。誰も守れなかった…。
自分の無力さを嘆きながら防げたかもしれない事態を引き起こしたことをただただ悔やみ続けることしかできなかった。
遺跡の前に崩れ落ちるように伏した俺はしばらく立ち上がれなかった。
「…う、ううん…」
しばらく経ってユタの意識がやっと戻ったようだった。なんとかして立ち上がり辺りを見回すと、唯花たちがいないことに気づいて彼女たちの消息を尋ねてきた。
「…テンセイ、みんなは?」
聞かれたところで今の俺に事情を説明する気力などなかった。頼む、察してくれ。これ以上俺を追い詰めるな。今は一人で抱え込ませてくれ…。
返事がないどころか見向きもしない俺の様子にユタはやっと事の重大さを理解した。そして言葉をかけることが無意味だと悟ったのか口を閉じて光が消えた遺跡をただ見つめることしかできなかった。
「…ごめんね。僕のせいで、みんなが離れ離れになった。全部、僕が悪い…」
ずっと黙っているにはいられなかったのか、ユタは壊れ物を慎重に扱うように話しかけてきた。
「黙れ…それはこっちのセリフだ。お前がそれを言うな…」
「でも、僕があれに触っちゃったせいでこうなったんだ。テンセイは何も悪くないよ」
ユタは責任を全て負おうと必死に俺を擁護していたが、それがかえって俺の心の穴をさらに深くした。
「お前はただ遺跡に触っちまっただけだからそこまで悪くないじゃないか…。こんな結果になったのは俺が覚醒者になったせいで住んでた街から逃げることになって、その流れでユタたちみんなを巻き込んだからだ。逃げた先の場所で出会った秘美希とも仲良くなれた矢先、このザマだ。お前が眠ってた地下に落ちた時に、そのまま衝撃で死ねばよかったんだ。もしそうだったらこんなことにはならなかった!」
抱えている負の感情を最大限言語化してユタに吐き捨てるように叫んだ。とにかく俺は限界だ。あいつらは俺たちのことをずっと恨み続けてしまうかもしれない。仮に死んだとして呪われてしまうなら出会う前に怪獣を倒して死んでおきたかった…。
天征の本音を浴びたユタは何を思ったのか両手を固く握りしめ、天征の元へ歩み寄っていく。
「テンセイ、立って」
「…」
励まそうとしているのだろうが、悪いが俺は元気づけられてもらうつもりなどなく無言を貫く。しかし、ユタの気配は依然として遠ざからなかった。
「いいから立って」
明らかにユタの態度がさっきより変わった。少し苛立ちを含んでいるようだった。他に何か言いたいことがあるのか?
俺はそう思いながら重い腰を上げてユタと目を合わせると急に俺の両肩を掴んできた。その瞳には確かな怒りじみた感情で溢れている。
「こうなったのは僕が一番悪いし、テンセイも自分が悪いって思うのは仕方ないことかもしれない。でも、みんながみんな君のことを恨んでるとは限らないだろ!」
ユタが初めて見せた剣幕に俺は意表を突かれ、思わず言葉を失った。そんな俺をよそに、ユタはさらに言葉を投げかける。
「もし君があの時死んでしまったとしたら、僕はずっとあのまま一人ぼっちで眠ってたままだ。死ねばよかったとか二度と言わないで!!」
「っ…」
どうやら苦し紛れに吐いた本音がユタの逆鱗に触れてしまった。正直ユタがあそこまでキレるとは思っていなかった。
「あんなことを言うテンセイなんて君らしくないよ!次そんなこと言ったら僕は友達をやめる!!」
ユタは最も強い言葉で抗議した。俺の心を埋め尽くしていた後悔の闇の存在を一瞬だけ忘れた。
「それにみんなまだ生きてるかもしれない。手がかりもないし時間はかかってしまうだろうけどみんなを探しに行こう」
ユタは真剣な眼差しで絶望に吞まれかけている俺を引きずりだそうとしていた。彼なりの思いやりなのかもしれない。どちらにせよこいつの気持ちまで無碍にしたくない。言われてみれば唯花たちは覚醒者だから飛ばされた先で生き残っているならば絶対見つけだしてやりたい!恨まれてもいいが二度と会えないよりかはマシだ。
「ああ、そうだな。必ずあいつらを見つけよう」
「うん!やっぱりテンセイはこうでなきゃ」
そう言ってユタは微笑みながら、握りしめた片手を俺に差し出してきた。
「君がどれだけ傷ついているかは分かりきってなくてごめん。でも僕たちで諦めずにみんなを絶対探すんだ!テンセイ、この遺跡に誓って」
「分かった。絶対諦めない」
唯花、明、煉、姫菜、秘美希。絶対探し出してやるから待っててくれ…。その思いを胸に俺は遺跡の前でユタとグータッチを交わした。




