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神様を継ぐ日 ~Angel Hazard~  作者: 千夜
第一章 結晶の引き合わせ

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2/21

1:お天道様の置き土産

この世界にはある伝承が存在している。

太古の時代、神を失った天使たちは住処も失い散り散りになってしまったという。また、空からは無数の結晶が降ってきたそうだ。この結晶は俗に神様の遺伝子と呼ばれるようになった。


 バァン!!

 

「うるさっ!なんだよもう…」


 スマホのアラームで目が覚めた。二度寝しようとしたが蝉の声がそれを許さない。寝ぼけた目で画面の通知を見てみると「本日覚醒者(エヴォルバー)が出現しました」と表示された。覚醒者警報だった。最初発令された頃はビビったが今はすっかりもう慣れた。とにかくこのアラームは本当に心臓に悪くて毎回ビビる。目覚ましに来たらたまったもんじゃない。

「ああ、またか。これで何度目だよ」

 こいつらが出現する度にろくに寝れない日が増えてきたし学校にも行けなくなった。あの結晶がさっさと消えてくれたら全部終わるんだけどなー。ああ、今までの暮らしを返してくれ… 


 煤垣天征すすがき てんせいはため息をつきながら着替えを済ませ外に出る。特にあてはなく街をうろついていく。街の喧騒は相変わらずだ。ビルの壁面モニターを見てみれば覚醒者の発見だったり結晶についての調査といった内容のニュースが流れている。行き交う人々はもう慣れたのだろうか、見向きする様子はなかった。しかし覚醒者(エヴォルバー)発生から数年経って世間の認識は緊迫していった。


 空から結晶が降ってきた当初は新種のウイルスや宇宙人の落とし物なのかという憶測が飛び交い、SNSで度々話題になっていたことは記憶に新しい。結晶の写真を見たことはあったが古代の装飾品に描かれている幾何学模様のような不思議な形をしていた。何らかの人工物なのだろうか?学校でも話題は結晶や覚醒者のことで持ち切りだった。覚醒者になったらこんな力が欲しい、と色んな人が言っていたな。


 こうした事態を受けた政府は対策に乗り出し結晶の研究に着手し、結晶専門の研究機関(アステリズム)を設置した。アステリズムは結晶を天から降ってきた結晶のような触媒という理由で天界因子と命名し、明らかになったのは結晶に触れた者《覚醒者》は生命能力が大幅に向上していて不死身に限りなく近い肉体を手にしていることだ。


 この事実により世間の結晶に対する認識が変わり、生命科学の発展が期待され、不老不死の実現が現実味を帯びたと思われた。しかし、覚醒者が破壊行為を起こした事件が頻発した。人外じみた生命能力とは別に魔法のような力を持て余し暴走する者や、得た力を悪用し犯罪行為に走る者まで現れてしまったため再び世間は混乱に陥った。しまいには覚醒者同士の抗争やテロまで起こるようになってしまった。


 そして、数年前に起きた未曾有の大災害、”絶滅”。


 覚醒者の見た目は普通の人間と変わらないので、覚醒者が誰でどこにいるのか人々は日々怯えながら暮らすことになった。自然災害とは違い備えようがないので2倍に質が悪い。近隣で発見された場合は休校になったりと度々混乱している。というか、今がそうなっている。学校のみんなは無事に生きてるのだろうか。学校からメールが来ていて確認すると夏休み明けには休校を解除する予定だった。早く元の生活に戻ってくれ…


 俺は変わってしまった日常を取り戻したいという願いを心の底で燻ぶらせながら、このまま結晶が引き起こした災害《覚醒》に無力なまま犠牲となってしまうのかと思考を循環していた。もし俺が覚醒者になったならその力を暴れまくっている覚醒者を止めることに使いたい。何もできずただ神に祈って死ぬのは絶対嫌だ!


 しかし覚醒者になったところで俺も暴走してしまわないだろうか。まず第一に結晶の正体が何なのか知りたい。そもそもあの結晶はいったいどこから来て何でできているんだ?疑問は解決できないばっかりだ。もしかしたら結晶は異世界から飛んできたものだったりするのか?明らかに今の科学技術で作れるような代物ではないことは素人の俺でも分かる。結晶の情報は詳細な事柄は公開されておらず、全て研究機関が握っている。そのため手がかりが掴めず俺たちはどうしたらいいのか分からない。しかし、何もしないでいては生き残れない気がする。


 しばらく街を歩いて行くと視界に不思議なものが入ってきた。近くにいた人も気になっているようだ。

「なんだあれ?あの光明らかにおかしいよな…?」

 海の方から何やら怪しい光が放たれている。その光は赤黒く空を覆っているように見え、自然現象とは思えないほど不気味な雰囲気を醸し出していた。

 天征は興味にかられ、そのまま海の方へ向かっていった。その好奇心が運命の歯車を突き動かすことになることは思わなかっただろう。

 

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― 新着の感想 ―
Xの企画から来ました。 空から降ってきた結晶と覚醒者という設定が、SNSの憶測から研究機関の設置、世間の期待と失望まで、社会の反応の変遷込みで丁寧に描かれていて世界観に説得力がありました。「見た目が普…
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