プロローグ ~絶滅~
目の前の世界が眩しい光に包まれて、気づいた時には僕はただ重力に従って天から落ちている。自分の周りには、直前まで住んでいた世界の欠片や激しく煌めく結晶が飛び交っている。
「……ああ、僕は…守れなかったんだ…」
朦朧とする意識の中で目の奥に浮かんできたのは楽しそうなみんなと神様の優しい微笑みだった。懐かしいかつての記憶が走馬灯の如く心の中を駆け巡る…
なぜこうなったのか、自分でも分からない。何もできなかったことだけは確かだ。神様は目の前で消えてみんな離れ離れになった。神を失った天使はただのひともどきでしかない。地の底へと強烈に誘う力に冒された身体は空気と風の冷たさをもう感じなくなってしまった。僕はこのまま消えてしまうのだろうか。
「神様……ごめんなさい…」
故郷を守れず神様やみんなを助けられなかったことを悔やんでいると、僕の目に星が瞬く夜空や月明りに照らされる地上が映った。僕はその景色が描き出す幻想に目を奪われ、崩壊してしまった故郷の情景をその一瞬だけ忘れ去っていた。かつての日常を映しているようで無意識に一筋の涙が流れ落ちる。
「綺麗だ…」
そして、天使だった少年は神と故郷だけでなく遂に意識までも失い、纏っていた光が純白から漆黒へと変わってゆく。自由落下していくだけの存在となったひともどきは地面を突き破り地下深くまで堕ちていく。空一面には世界の欠片が流れていき、煌めく結晶は風に乗って散り散りになってしまった。




