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なめたマネ

 

 休憩を挟んだ俺達はその後も事件現場巡りを続けた。



 信濃町、新大久保、高田馬場……夜9時に至るまでひたすらに俺は鞠猫についていく。



 それでも何も有力な『痕跡』は見つからなかった。



 そして次の日も、その次の日も俺と鞠猫は現場を巡り、時には再度同じ現場に訪れることもした。けれど最後のひと現場まで何一つ見つかることは無かった。



 俺は最後の事件現場を調べ終わった後の鞠猫に聞いてみた。



 「なあ鞠猫、お前はもしかしたら最初から何も見つからないと分かっていたんじゃないか? 事故後の場所だとしても警察が洗いざらい調べた後だ。見つかる方が不思議だろ?」


 と─────



 けれどそれを聞かれた鞠猫は痕跡やら手がかりなど何も手に入らなかったのにも拘らず、平静な顔で答えたのだ。



 「たしかにそれも感じていました、でも他に策はありませんから。 ……恥ずかしながら手口の法則性も見えてないんですから」



 地味なことでもやっていくしかない。手掛かりになりそうなことでも犯人に繋がるならば出来ることからやるしかないんだ。



 彼女はそう続けた。



 俺は彼女の事など何一つだって分かっちゃいない。知り合ってまだ一週間と経っていないんだから。けれど……彼女が頑張り屋であることは俺でも分かった。



 だからこそ俺も自分自身の感情として、この事件の犯人をとっとと捕まえてやりたいと思った。この街の平和の為に。奮闘している鞠猫の為に。



 頑張っている彼女に感情が動かされていることは明白だった。



 不思議なもんで、千火さんを除けば、そんな初めての思いが生まれたのは、俺に対しての冷たい態度や反抗的な態度を取る事が出来る女の子だった。



 俺はちょっとそれが嬉しかった。




 けれどそんな俺達の努力を嘲笑うようにまた事件は起きた。



 今度は池袋の方であり、犯人は明らかに新宿区、渋谷区などの近辺を行動範囲としているのは分かっていたが今度も豊島区の方。新宿区の北方だ。比較的近い。



 それは警察も分かっているのか、鞠猫と共に池袋に向かう途中でも大勢の警察官が道中に見受けられた。なんでも鞠猫の情報によれば今度の被害者の二人は囮捜査としてカップルのフリをしていた男女の警察官だったらしいのだ。例に漏れず男は殺され、女は行方不明。持っていた発信器の交信は途切れ、居場所さえ分からない状況だとか。



 超常の存在とは俺達だけでなく警察さえも手玉にとるのか。



 俺は現場に着くと恐怖した。事件発生から5時間は経っていたが、辺りは騒然とし未だ近くにいるかもしれない犯人の存在に現場周辺は厳戒態勢に入っていた。訪れる際によく見かけたパトカーや警官がそれだったのだ。大勢の警察官達が、平然を装ってはいたが皆殺気立っているのが何となく伝わってきた。



 当然だ。彼らは身内を殺されたのだから。そしてそれは犯人が自身を嗅ぎ回る存在をいち早く察知して、敢えて狙って始末した事に他ならない。街中の何百、何千と存在するカップルから偶々囮捜査にあたっていた警察官のコンビを殺してしまったと考えるよりも、その方が可能性が高いからだ。



 自分は警察も怖くはない。これは明らかな挑発行為である。 ……そんな事は俺でも分かった。



 警察官は寡黙にいきり立ち、忙しなく現場で動き、赤いサイレンが周りを染める。そんな異常な事が起きているのが明白な様子を見て、何も感じない程俺はテキトーな感性はしちゃいない。鞠猫と共に普通の人間とは違う特別な力を持っている存在として何かしなくてはと強く思った。



 事件現場が繁華街だったのもあってか、辺りに漂う甘い香りがなんとも乖離してある気がした。ココナッツの香りに人工的なストロベリーの香りを合わせ、大量にバニラエッセンスを足し入れたような香り。周りにクレープ屋でもあるのだろうか、それにしてもあまりにも強過ぎる甘い臭いだったが。でもそれが異様さを際立て、頭の可笑しい事件が起きているという現実を強めていた。



 そしてその日で鞠猫と行動を共にしてから四日が経っていた。事件の犯人に繋がる情報は未だ無し。正直に言って参っていた。



 だけど日曜日を挟み、学校へと登校した俺と鞠猫を待っていたのはそれとは関係が無くも、それでいて悩ませる出来事だった。

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