8 箱庭にご招待
箱庭は16回目が目標になった。翌日もせっせとポチを繰り返していたら、ある時、気を失った。どうして?ヤンたちに相談だ。ヤンは貴族籍を持っているらしく貴族学校も卒業している。なので色々な物知りだ。
「お嬢様、魔力はいかがですか。」
「魔力…?」
「きっと箱庭はスキルなので箱庭の移動は魔力を使っていると思われます。最初はなれずに多くの魔力を消費し、慣れつつと言いますか、スキルが上がるにつれ魔力の消費量が少なくなっていったのでしょう。ただ魔力は使っていますので、何回か行き来をしていて魔力が枯渇したのではないでしょうか。今日は何回目ですか。」
「なるほど。今日は調子にのって五回目かしら。昨日までは王女様の日記とかを読み耽っていたから二~三回ぐらいしかポチっとしてなかったわ。」
「今後はご体調もお考えになってくださいね。」
そうなんだけど、あと一回で16回目になるのよ。ポチッと押したいじゃない。だめ?
「「「「ダメです。」」」」
「はーい。」
楽しみは明日にして、今日は地下屋敷に行こう。
シェリーとシシーが頑張ってくれてお掃除があらかた終わったのだ。私も行けるようになった。やったね。二人に感謝だ
地下の書斎は本がいっぱいあって、これも手に取るとポロポロしそうなので後回しだ。
だから、ベビーベッドのある部屋に来た。二人のおかげで家具をおおっているシーツは綺麗なシーツに取り替えられて、埃など全然気にならない。ただ、やっぱり薄暗い。ヤンなら魔法でライトが灯せるが私にはできない。ろうそくで何とかしている。ろうそくも地下屋敷の為数多く使用できないので残念だ。
ろうそくの明かりで机やタンスを調べる。当時のままのようで、まるで今も誰かが生活しているようだ。でも服とか手を触れると崩れてしまう。それが時の流れを感じる。子ども服にドレス、あと男物の服もあった。ここに三人で住んでいたのだろうか?こんなに暗くて、どんな思いで暮らしていたんだろう。もしかして、ここに王女様がいたのかしら。でも上の屋敷は?
あれこれ考えながら部屋を漁っていたらベビーベッドの下から鍵を見つけた。また鍵だ。どこの鍵だろうか。みんなで鍵穴を見つけたが見つからない。とりあえず保留だ。
わからないものは後回しにして、私は王女の日記の解読と気分転換のポチで箱庭へ行っている。ヤンは相変わらず帳簿の確認に頭を悩ませている。ヤン曰く「せめて写しがあれば。」
箱庭へ行くたびに魔力も確かめて、今は1回のポチに魔5を使うことがわかった。今の私の魔力は300を超えている。貴族の魔力は平均で百ぐらいだ。私はスキルを得られる前は200だった。魔力だけは多かったんだが、あれから百も増えた。ポチっとするほど魔力は上がるようだ。どこまで上がるんだろう。ただポチ以外使い道はないんだけど。
ある日朝からポチッとしようとしたら、シシーが、
「お嬢様、お弁当です。」
差し出した手を取った。何ということでしょう。シシーを箱庭へご招待できた。
「わーわーわー。すごい、すごい、すごい。」
叫んでいる。
「いらっしゃいませ、我が箱庭に。」
これは嬉しい。これでヤンにも箱庭へ来てもらうことができる。シェリーやゲン爺だって呼べる。とりあえず戻ることにして、シシーを呼ぶと私の汚れ物を手一杯に抱えている。
「お嬢様、汚れ物はすぐ出してください。」
「ごめんなさい。でも屋敷で洗濯したら私がいるってばれそうで、どうしようかと困ってたの。」
「それはそうですね。だったら箱庭で洗濯します。」
と言い張るが、
「今はヤンたちが心配しているはずだから帰りましょう。」
帰宅を促す。渋々、了承してくれたので、ポチ。
「お帰りなさいませ。」
やっぱり待っていた。
「お嬢様、魔力はいかがですか。」
さすがヤンだ。慌てて確認すると15減っていた。まだまだ魔力は余裕なので四人で箱庭へポチッとすることにした。成功だ。一番喜んだのはゲン爺だ。草ぼうぼうの広い庭を見て、目がキラキラ輝いている。大きな木を見た時は子供のように飛び跳ねていた。大きな木はゲン爺も見たことのない木のようだが、
「この木は生きていやす。」
成長してますから当然生きてるわよね???
ヤンは隅々まで安全を確認するよう見て回っている。シェリーとシシーはすでに姿がなく家に入ったようだ。
もちろん庭も家も広くなっている。二部屋になりキッチンもリビングも広くなった。もちろん浴室やトイレもだ。浴室には洗濯場もある。これで冷たい季節でも暖かいお湯で洗濯ができる。早速二人で洗濯しているのはどうなのかしら。ありがたいけど。ヤンも外の様子を確認した後、家に入ってきてなにやらあちこち家の確認をしている。
突然ベルが鳴った驚いていると、ゲン爺が鳴らしていた。玄関ベル?誰が尋ねて来るのだろう。
遅ればせながら、私も広くなった家を探検した。寝室が一つ増え私の寝室も広くなっている。庭も広くなってリビングも広い。椅子のあったところはテラスになっていた。私の植えたお花の芽が出ていた。うれしい。テラスで感激していたらヤンがお茶を持ってきてくれた。せっかくなので皆でお茶にした。ゲン爺も庭をまわって一緒にお茶だ。
「お嬢様、すごいです。さっきはもっと狭かったのに、すごく広くなってます。」
「それで魔力はいかがですか。」
すっかり忘れていた。魔力の消費は45だ。
「一人10の消費ですね。あとはお嬢様がいなくても他のものがここに滞在できるかですね。」
「そうですね。それに誰もお屋敷にいないのは困りますね。」
リビングのモニターで外の様子がわかることを伝えたが、今日はすぐに戻ることにした。シシーだけは洗濯も途中なので実験も兼ねて一人だけ残ることになった。
「できるだけ早く戻ってくるから。」
「お嬢様ここは誰も来ませんよ。お屋敷の方がよっぽど危ないですよ。やることはいっぱいありますから心配しないでください。それよりここに必要なものをお願いしますね。」
それにはシェリーがうんうんとうなずいている。ゲン爺も道具がなければ作業がはかどらないと言っている。思いっきり好きにして良いと言ってある。一応門もあるのでそれに合わせ造園するそうだ。
「腕がなりやす。」
だって。でも万一ここに立てこもることになった場合も考えて果樹園や畑も作ることになった。だが私のレベルが上がって広くなった時どうなっているか不安だ。
「今までのお嬢様のお話を聞く限り、お嬢様のスキルはその辺もきちんと考慮してくれるようですから、考えなくてもよいでしょう。具合が悪くなったらその時に考えればよろしいでしょう。」
シシーを残して屋敷にポチした。
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