5 家族の新事実
「おかえりなさいませ。お嬢様。」
部屋にはヤンだけでなく家政婦長のシェリー、その孫であるシシー、さらに庭師頭のゲン爺がいた。3人共驚いた顔をしているが、事前ににヤンから説明を受けていたようだ。
「おかえりなさいませ。」
シシーなどは涙ぐんでいる。そう言えば、あの時ドアを開けたのはシシーだった。シシーは私が姉達から蔑ろにされてもずっと味方をしてくれた。私の専属メイドとしてそばにいてくれた者だ。庭師のゲン爺だって、毎日私の部屋にきれいなお花を届けてくれた。何度その花に慰められたか。姉達にも花を届けろと命令させてされていたようだが、無視していたようだ。そんな人達が居るってことは・・・。
「他の者には暇を出しました。バラン様も立ち会っていただき、皆自分で持てるだけの退職金代わりを持って出て行きました。一応、紹介状も私と家政婦長の名で書いて渡しておきました。」
「お世話をかけたわね。でも、今の伯爵家にはあなたたちに支払えるお金はないわ。ゲン爺は庭師として腕もいいんだから、どこへ行っても引っ張りだこでしょ。いいの?」
「はい。わしはここの伯爵家が最後の御奉公先と思っていやした。食べることと寝るところを用意していただければ給金はいりません。伯爵様や奥様お嬢様の行く末を見届けてから隠居します。子どもたちも納得していやす。」
現在の伯爵家は王家預りになっているらしく、領地には国からの管理人が赴いている。家の維持は国に入る領地の収入からいくらか頂けるようになっているとヤンから説明を受けホッとしたのだが、
「まだお父様が連行されて一週間にもなってないのよ。ちょっと手際が良すぎるんじゃないかしら。」
「私もそのように思います。」
「ますます怪しいわよね。お父様やお母様、お姉様達の処遇はどうなっているの。」
とりあえず貴族牢なので悪い扱いやひもじかったり、さらに暴力はなさそうなので安心だ。
ただ、姉たちは一般牢だそうだ。
「なぜ?」
ヤンとシェリー、ゲン爺は顔を見合わせている。何か知っているようだ。
「教えて。」
何と何と伯爵家の子供は私一人だった。
姉達はお父様の弟の子。その弟も母親が平民で一度も会ったことがないとか。バネットが一歳の時弟夫婦が流行り病で急死。弟が死ぬときに頼ったのが伯爵を継いだ兄。流行病で余裕がないなか、貴族の血を引いていると言えばなんとかしてくれるだろうと思ったんだろうとヤンは言う。
それで連れて来られたのがバネットと赤ん坊のコネットだ。
バネットが生まれたことは弟から伯爵に報告があった。が、父親の伯爵はすでに鬼籍に入っていたため、お父様が報告を受けて祝い金を送ったとか。
だが、次女のコネットが生まれたことは知らなかった。なのでバネットとコネットのことは念入りに調べたが、流行病の混乱のため詳しいことは分からなかった。
ただ弟を看取ったという夫婦がいて、弟夫婦のそばにバネットと赤ん坊はいたと証言したらしい。
疑惑は残ったが、弟の子だという二人を放り出すことができず面倒を見ることにした。
バネットは確かに伯爵家の血を引いているのだから養女の案も出たが、伯爵夫人の懐妊が分かり養女の話は断ち消えた。一応伯爵家の一員として教育も施し育てたが、それが悪かったのか、伯爵をお父様と呼び伯爵夫人をお母様と呼び出した。気の良い二人はそれを許し、現在に至っている。
養女の件は成立していないので、二人は身分は平民。一応伯爵家の庶子とは認められている。が、相続権やまして伯爵を継ぐ権利など持っていない。だから姉達は一般牢だそうだ。
二人はそれを知っているのか知らないのかわからない。
バランとの婚約も本来は私とのもの。それを何を勘違いしたのかバネットとバランは二人で伯爵家を継ぐんだと張り切ってしまい、婚約の契約書にバネットの名前を入れてしまった。本当は伯爵家長女となるはずが長女の後にバネットと付け加えてしまったのだ。
「じゃあ、お父様や私がいなくなれば得するのはバランとお姉様達。」
バランは一族で話し合い私と結婚させて入り婿になるはずだった。継承権も私の次になっている。
バネットはバランと結婚しなければ平民生活が待っている。
コネットはもはや平民一直線だ。
これまでの言動でもバランが一番怪しい。でも、バランでは根回し済みでもこんなに早く国預かりになったり、お父様に弁明の機会が与えられないのはできるはずがない。もっと上の権力者がいるはずだ。でも伯爵家の上って侯爵、公爵、王家しかいないよ。何が起こっているの?私の頭では…。
バランが最近腰巾着をしていたのは第三王子だ。第三王子は側妃の子だ。良い評判は少ない王子だ。もしかして。でも……。
「うーん、考えてもわからない。とりあえずこの鍵とバランの探している書類よ。」
まず、出来ることから手を付けることにした。
読んでいただいて、ありがとうございます。




