2 私だけのお家
気がついたのは見慣れない家の中だった。焦ってメイドのシシーを呼ぶ。ついでにドアというドアを開けていた。でもドアは二つ。あと小さなクローゼットがあるだけだ。一つ目のドアを開けるとトイレとシャワーがあった。
「狭っ。」
クローゼットも家の食堂のテーブルの半分より狭い。シシーも来ない。
「誰か居ないのかしら。私って他所の家に不法侵入よね。どうしよう。」
独り言を言いながら、ちょっと大きめのドアを開ける。馬車2台分ぐらいの土地があった。草ぼうぼうだ。その角に井戸がある。
その横にこの家には不釣合いなおーきな立派な木が存在を主張している。
庭?に出て、
「すみません。誰かいますか~。」
はしたなく、大きな声で呼びかける。むなしいかな返事はない。家の中に戻るのもはばかれる。だって他人の家だし。家の周りを歩いてみたら、ゆったりした椅子を発見した。その椅子に座って自分を落ち着かせる。
「私はアネット・バートン。バートン伯爵家の三女。18歳。昨日、王立貴族学校を卒業……。」
口に出して自分をおさらいする。
「魔力はあっても魔法は使えず、更にスキル無しで、付いたあだ名が【魔法音痴】落ち込みそう。」
自分で言って自分に跳ね返ってきた。それより、
「そうよ。いったい家に何が起こったの?たしか家を出る準備をしようとしてスターテスを見直してたら、シシーがノックなしで部屋に入ってきたから驚いて……。」
思い出した途端フリーズした。頭を振って再起動させる。
「ステータス。」
とりあえず確認。そこには箱庭の文字が光っている。恐る恐るタップすると出口の文字が、
「もしかして、これがレアスキル???聞いたことないスキルだけど……。箱庭ってここのことよねえ。やったー。」
椅子から飛び上がって歓喜した。私だけのお家。それもいつでも出入りできる。家出計画中の私には、もってこいのスキルだ。
「ここって私の家よね。だったらもっと調べなくっちゃ。」
広くない敷地から出ることは不可能だった。景色は見えるが、結界に阻まれた。井戸水は綺麗だ。
【大きな木はふさふさ揺れている。種類はわからない。】
家の中はすごく狭い。伯爵家の使用人の部屋より狭い。そこにちんまりとキッチンがある。ただ設備は最新で新品だ。トイレとシャワー室も狭い。でも最新で新品だ。トイレなんて水を流すレバーがついている。王宮にあると噂されているものだ。お風呂が無いのは残念だけど、シャワーがあるからよしとしよう。それに石鹸とか、シャンプーもそろっている。
「すごい。私のレアスキルちゃん。万歳。」
調査は狭いのと家具がないからすぐに終わった。ちょっと悲しい。それに寝室が無いのが悲しい。悲しいけど、今の私にとっては、すごく喜ばしいことだ。
「贅沢は敵。贅沢は敵。」
気分転換にシャワーを浴びたり、トイレのレバーで水を流したりしてみた。初体験を満喫した。
そろそろお腹がすいたなので、家に帰ることにした。嫌だけど。
箱庭出口をポチ。
ベッドの上だった。箱庭に入った場所に戻るようだ。でも何だか家中が静かだ。人の気配がない。窓の外をのぞくと、ちらほらと兵士の姿がある。
「なんで?」
シシーを呼ぼうとしたが、声は出さない方が良さそうだ。アネットの危機察知能力が発動している。単に、イヤな予感がしているだけだ。
そ~と部屋のドアを開け、忍び足で階段を降りる。もちろん靴は履いてない。玄関も無人。きっと外には兵士さんがいる気がする。お腹が空いているので、とりあえず厨房へ。屋敷の中は兵士はいないようだ。ほっとしても、そ~と厨房を開ける。と、ドン。尻もちをついた私に、家令のヤンは、
「お嬢様。どこにいらしてたんですか?」
「みんなはどこ?」
質問がかぶる。説明しようとしたけど、私が兵士に見つかるとやばいんだって。
「部屋にいてください。」
後で軽食を持ってきてくれると言うので素直に従った。ただ、
「見つからないように静かにしていてください。」
本当に何があったの。自室に戻って静かにしていた。だって家を囲むように兵の方々がいらっしゃるらしい。喜ばしいことではないと思うから。
ほどなくして家令のヤンが来てくれた。待ってたわー。急いで現状把握だ。
ホント、何があったんだろう?
読んでいただいて、ありがとうございます。




