1 レアスキル出現
レネットの箱庭です。
私はバートン伯爵家三女アネット18歳だ。昨日、国立の貴族学校を無事卒業した。この日を待ちわびていた。私は別名【使えない女】【無駄女】【魔法音痴】などと呼ばれ、良いものはない。
そもそも、我が王国では、平民でも魔法が使える。使えない者は皆無に近い。私は魔力は多いらしいが、魔法が発動しない。どんなに努力してもダメだった。【魔力は誰よりもあるのに魔法が使えない】と周りから見下されていった。
上の姉は、
「努力しない、怠慢だ、頭が悪いのよ。怠け者。」
と私の顔を見ると嫌悪をしてきた。
下の姉は我関せずだったが、私をかばったりしてくれなかった。
父は残念な顔をするが、母と
「時には魔法が使えない人もいるし、すごくめずらしいのよ。あなたは大当たりだったのね。」
なんて的外れなことを言っていた。でも両親は私を愛してくれた。魔法が発動しない子は長じてレアなスキルを授かることがあるらしい。両親はそれを夢見ていたようだ。
家族にも半ば見放されているので、13歳の時からの学校は居心地のよい場所ではなかった。特に我が三姉妹は年子だ。私が入学する前に、長女が
「私の末の妹が入学してくるんだけど、我儘で怠慢で努力が嫌いで、魔法が使えないの。」
と嬉々として吹聴していたらしい。入学当時から陰口を叩かれた。次女は相変わらず、
「私は末っ子とは関係ないし。」
と学校でも無関心を貫いていた。
貴族学校は名の通り貴族のみが通う学校だ。上下関係だって厳しい。でも伯爵令嬢である私がこの学校の底辺にいる。それもただ一人でだ。上の姉が率先して私を貶めているので皆がそれに同調していた。子爵家はもちろん以下の男爵家や準男爵家、果ては騎士爵の人たちま、私には何をしても構わないと思われてしまった。これも魔力があるのに魔法が使えない。その上、スキルも授からないせいだ。
どんな教師に教わってもうんともすんともならなかった。果ては【魔法音痴】と軽蔑された。
それでも今日まで耐えられたのは、両親が、特に母が
「気にすることがないのよ。」
と言い続けてきてくれたからだ。
「あなたが姉妹の中で一番おおらかよ。上のお姉ちゃんはギスギスして角ばってるし、真ん中のお姉ちゃんは自分以外にも無関心だし。あなたは何を言われても耐えて、いなしているわ。末っ子なのに一番大人だわ。だからあなたをこんな状態に産んでしまってごめんなさいね。」
母のせいでもないし、私のせいでもないんだと思うようになった。だから学校生活が耐えられた。だって途中で退学したらなんか負けた気がして、絶対卒業してやるんだと頑張ったのだ。
勉強も頑張ろうとしたが、常に2人に負けていた。負け続けて、勝たなくていいやって思ってしまった。上の姉は上の中、下の姉は中の上、私は中の中の成績なのだ。平々凡々で結構。開き直ったら、魔法もそう思えた。そう思ったら魔法がなくても生活できるようにと火打石や水筒とか、魔法以外の道具を集め出した。学校生活の五年で私の部屋はそんな便利グッズでいっぱいになった。それを見ていた長女にさらに軽蔑された。別に嫌われて結構。卒業したら国を出て魔法至上主義でない国へ行こうと思っている。両親には悪いが、やはりこの国は、私には生きづらい。
耐え続けた年月が、昨日やっと終わったのだ。
そろそろ家出する準備の最後の確認をしようと決意してステータスを確認した。ステータスは名前とレベル、スキルぐらいしか表示されない。なので何度見ようと変化はないのだけど、私にも使えた。家出するにあたり、まず確認だ。
名前:バートン伯爵家令嬢アネット。レベル:0。スキル:箱庭。
貴族令嬢らしくなくベッドに寝っ転がりステータス場面を見ていた私は飛び起きた。
箱庭?
箱庭って何。
突然現れたスキルだ。もしかして、レアスキル?興奮していて外が騒がしいのに気がつかなかった。ノックもなしに
「お嬢様。たいへ……。」
いつも礼儀作法にうるさい私付きのメイドが大慌てでドアを開けたもんだからびくついた。そのびくつきのせいで親指が箱庭をポチッとしてしまった。とたん私は意識を手放した。
メイドの言葉は、途中で聞こえなくなった。
読んでいただいて、ありがとうございます。




