第一章(7)
「それにしても血をインクにするなんて変なの。」
「あー……魔界じゃ普通なんだけどなぁ……こっちじゃブーム過ぎたか。」
ブームとかあるのか?でも確かに中世ヨーロッパ辺りとかやってそうな。(偏見)
「ん、じゃあここにサインしてくれたらそれでいいから。と、その前にちょっとだけ我慢な。」
そう言って聖は私の指にナイフを滑らせる。真っ赤な血が指を伝う。
「あぁ……もったいない。」
「痛い……」
指はずきずきと痛む。なにかするなら早くしてほしい。
「ごめん。はい。この中に血を入れて。」
聖はペンのインクが入ってるやつ(空っぽ)を差し出す。私はおとなしく指を差し出し、血を入れていく。にしても本当にドバドバ出るなあ……血。
「ま、これくらいでいいよ。で、ここに名前書いて。」
血が容器の八分の一程はいったところで契約書を差し出される。私の血がインク代わりとなったペンで名前を書く。
「これでいい?」
「ああ。完璧。ところで亜璃笥。」
「はい?」
「俺、もう無理。」
何が?と言う前にいまだ血が止まらない指を舐められる。
「ちょっ……」
「ん、ごめん。でも、こんなの見せられたら止まれないから。ちょっとだけ我慢して。」
我慢できないのはまあなんとなく分かるし、血を与えることにはあまり抵抗はない。問題はそれとともに訪れる例のアレ。
「はぅう……」
「なるべくゆっくり吸うから。首でもないし、耐えきれるようにするから。」
確かにさっきよりは数億倍ましだ。でも、ずっと続けられていたら……悪夢だ。
「そんなに、美味しいの?」
ふと思ったことを口にする。こうでもしておかないとまた流されるかもしれないし。それに、一心不乱に血を吸っている聖を見ていると気になったのだ。そんなに私の血は美味しいのだろうか?
「俺にとっては極上。」
「そうなの?よく分かんないんだけど。」
「分かっとけ。他の奴に飲まれるのは不愉快だ。」
嫉妬……ってことはないか。美味しい餌をとられたくないだけだろう。なんだか心臓のあたりがずきずきするけど気にしない。
「はぁ……美味しかった……」
「二回飲ませてあげたから、ごほーび頂戴。」
「そこら辺にある本は勝手に読んでいいって。」
違う。私の欲しいものは他にある。いや、本も読みたいのだけれど……
「違うの。」
「じゃあ何が望みだ?俺に出来ることなら何でもするが。二回も飲んじゃったからな。迷惑だっただろうし。」
「私の望みは、あなたと一緒に住むこと。」




