第一章(2)
「ここが僕の家だよ。」
ここに来るまではまるで迷路に迷い込んだみたいで、方向音痴な私は途中でここまでの道を覚えることをあきらめた。
「ここって図書館……?」
「そう。ここが俺の家だ。まあ適当に座れ。」
口調が変わったなぁ…まあいっか。
「じゃあとりあえず…」
床に座る。
「…あのなぁ…まあいいや。こっちにこい。」
「こっちって…ここ、いいんですか?」
彼が入ろうとしていたところには『関係者以外立ち入り禁止』の張り紙が貼ってあった。
「いいのいいの。どうせ、お前に手伝ってもらおうと思ってたわけだし…」
「手伝い…ですか?」
「そう。手伝いだ。」
「お断りします。」
「なるほど。利益がないと働かないか。まあ普通そうなるな。いいだろう、利益はここにある本すべて、あとちょっとした金。お前がやるべきことは図書館司書の仕事、あとは俺の“食糧”となること。以上だ。」
ここにある本すべて…それはかなりの魅力だ。でも…
「危険なことには首を突っ込むなと母から言われていますから。」
「いい子だな。母親のいうことを聞くのか。まあいい、どうせお前は一般人…俺にかなうはずがないからな…」
そう言うと彼は突然消えた…そして私の首にはナイフがあてられる…
「うそ…」
だって、人間が一瞬でこんなに移動できるはずがない。いくらもともと私と彼の間に大した距離がなかったとはいえ、一瞬で正面から真後ろになんか移動できるはずがないのに…
「驚いたか?そうだろうな…まあそんなことは後でいい。大事なのはお前のことを俺はどうにでもできるということだ。ここで首を切ることも、制服を切り裂くことも…」
ここで死ぬことに恐怖はない。もともと“死”というものに魅せられていたのだから。でも服を切り裂かれて辱められるのは最悪だ。
「私にどうしてほしいんですか?」
「さっき言っただろ?手伝ってほしいって。」
背後から耳元で囁かれ、体中をぞくりとしたものが駆け巡る。
「これは脅しですよ。」
「だからなんだ。脅しだろうがなんだろうが、お前は俺の言う通りにしないとひどい目にあうんだぞ?手伝うしかないだろう?それともひどい目にあいたいのか?」
たしかに、もう手伝うという選択肢しか私にはない。
「…わかりました…手伝えばいいんですね?」
「いい子だ。ちなみに逃げたら問答無用でこの世の地獄行きだ。覚悟しとけよ。」
「分かってますよ。」
逃げることすらも選択肢から外れた。




