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第86話 正面から崩す

準々決勝。


第4試合。


リシア・フェルド。


対。


レオナード・ハルヴェイン。


2人が魔法陣の前に立つ。


リシアはいつも通り剣を持っている。


レオナードも剣。


どちらも風属性。


でも。


戦い方はかなり違う。


「同じ属性ですね」


俺が言う。


セレナが頷く。


「でも、使い方は全然違うわよ」


「どう違うんです?」


「リシアは剣術を崩さないために風を使う。レオナードは動くために風を使う感じね」


なるほど。


リシアは。


踏み込み。


姿勢。


切り返し。


剣の動きを支えるように風を使う。


レオナードは。


速度。


方向転換。


間合い。


自分の位置そのものを変えるために風を使う。


魔法陣が光った。


2人が闘技場へ転送される。


少し距離を取って向かい合う。


レオナードが剣を抜いた。


リシアも。


開始の合図。


先に動いたのはレオナードだった。


風。


一気に右へ。


そこから前。


速い。


剣。


リシアが受ける。


金属音。


レオナードはすぐに離れた。


今度は左。


また風。


位置を変える。


そのまま斬り込む。


リシアが剣を合わせる。


また。


受ける。


流す。


戻す。


「全部受けてますね」


俺が言う。


「レイナード流だからね」


セレナが答える。


構えが崩れない。


どこから来ても。


剣が間に合う。


レオナードはさらに動く。


右。


左。


一度止まる。


また右。


「速い」


俺が言う。


でも。


速いだけじゃない。


さっきまでと違う。


入る。


入らない。


見せる。


止める。


少しずつ。


リシアの反応を見ている。


「前より落ち着いてるわね」


セレナが言った。


それくらいなら。


俺も分かる。


以前より。


無理に突っ込まない。


感情のまま動いていない。


レオナードが右へ踏み込む。


リシアが剣を向ける。


でも。


レオナードは入らない。


直前で止まる。


すぐ反対。


左。


また止まる。


「フェイントか」


俺が言う。


次。


右。


今度は本当に来た。


剣。


リシアが受ける。


でも。


少しだけ遅れた。


レオナードがそのまま押す。


風。


リシアの身体が後ろへ流れた。


追う。


もう一撃。


避ける。


次。


また剣。


リシアが受ける。


「通ってる」


俺が言う。


レオナードも分かったらしい。


少し笑った。


また。


右。


左。


止まる。


今度は正面。


リシアが反応する。


でも。


レオナードは途中で横へ。


剣。


肩。


浅く入った。


観覧席が少しざわつく。


リシアが距離を取った。


制服の肩が少し切れている。


レオナードが剣を構えたまま言う。


「正面から受けるだけじゃ無理だぞ」


リシアは肩を見る。


それから。


また構えた。


「そうですね」


それだけ。


焦っていない。


でも。


さっきまでと同じでもない。


次。


レオナードが右へ。


リシアは動かない。


左。


まだ動かない。


正面。


そこで初めて。


剣を出した。


受ける。


「対応してる」


俺が言う。


セレナも少し目を細める。


「早いわね」


レオナードがもう一度。


右。


止まる。


左。


止まる。


本命。


斜め前。


リシアが今度は。


先に半歩動いた。


剣。


レオナードの剣とぶつかる。


「っ」


レオナードの表情が変わった。


さっきまで。


動かしていた側。


今は。


読まれている。


リシアが押す。


一歩。


レオナードが離れる。


また風。


大きく距離を取る。


「もう慣れた?」


俺が言う。


「全部じゃないと思う」


ルークが答える。


「でも、さっきみたいには簡単に動かされないだろうね」


レオナードも。


同じことを感じたらしい。


今度は。


フェイントを減らした。


正面。


速い。


身体能力強化。


風。


剣。


リシアが受ける。


次。


もう一撃。


受け流す。


さらに。


連続。


レオナードの方が速度はある。


でも。


剣のぶつかる位置。


少しずつ。


リシアの方が前になっている。


「押し返してる」


ミアが言った。


派手じゃない。


ただ。


剣を合わせて。


一歩。


もう一歩。


リシアが前へ出る。


レオナードが風で横へ逃げる。


リシアは追わない。


正面を向き直る。


構える。


レオナードが少し苛立ったように息を吐いた。


「追ってこないのか」


「必要ありません」


リシアが答える。


「来るなら、ここで受けます」


レオナードの眉が動く。


「そういうところが気に入らないんだよ」


風が強くなる。


今までより速い。


右。


左。


さらに。


高く跳ぶ。


上。


そこから剣。


リシアが受ける。


着地する前。


レオナードが風で身体を回す。


二撃目。


リシアが一歩下がる。


三撃目。


剣がぶつかる。


速い。


「レオナード、かなり攻めてますね」


俺が言う。


「でも、崩れてない」


セレナが答える。


確かに。


リシアの姿勢。


剣。


まだ。


変わらない。


レオナードが大きく踏み込む。


風。


正面。


リシアが受ける。


押される。


一歩。


レオナードがさらに力を入れる。


「俺の方が速い!」


次。


もう一撃。


リシアが剣を合わせる。


また一歩下がる。


レオナードが笑う。


さらに。


踏み込む。


その瞬間。


リシアが力を抜いた。


「え?」


レオナードの剣が前へ流れる。


リシアが半歩横へ。


受け流す。


姿勢が崩れたレオナードの横。


もう。


リシアの剣が戻っている。


速い。


最短。


真っ直ぐ。


レオナードが振り返る。


間に合わない。


剣が届く。


魔法空間が光った。


レオナードの姿が消える。


試合終了。


勝者。


リシア・フェルド。


観覧席から歓声が上がった。


リシアは一度大きく息を吐く。


それから。


剣を鞘へ戻した。


「最後」


俺が言う。


「速かったですね」


セレナが頷く。


「レオナードが速さで押してきた分、崩れた瞬間が大きかったのよ」


確かに。


リシアは。


最後まで。


速さで張り合わなかった。


変わったことも。


ほとんどしていない。


レオナードの動きを見て。


慣れて。


最後は。


受けて。


流して。


斬った。


それだけ。


でも。


強い。


「正統派って、ああいう感じなんですね」


俺が言う。


「そういうこと」


セレナが答える。


リシアが観覧席へ戻ってくる。


俺と目が合った。


「お疲れさまです」


「ありがとうございます」


「途中、フェイントに結構やられてましたね」


「はい」


あっさり認める。


「最初は、反応しすぎました」


「でも途中から」


「見ないようにしました」


「見ない?」


「全部に反応しようとすると遅れるので」


リシアは少し考える。


「本当に来た時だけ動けばいいと思って」


なるほど。


言うのは簡単だけど。


実際にやるのは。


かなり難しそうだ。


「勉強になりました」


リシアが言う。


「レオナードさんのフェイント?」


「はい」


その言葉に。


少しだけ。


引っかかった。


勉強になった。


予選で俺と戦ったあとにも。


似たようなことを言っていた。


リシアは。


戦うたびに。


何かを持って帰っている。


今はまだ。


それだけ。


でも。


覚えておこう。


教師の声が響いた。


「準決勝進出者、4名」


トーナメント表が更新される。


アルベルト。


ルーク・ヴァレンベルク。


ミア・ハーヴェル。


リシア・フェルド。


4人。


そして。


準決勝。


第1試合。


アルベルト。


対。


ルーク・ヴァレンベルク。


隣にいたルークが。


俺を見る。


少し笑った。


「来たね」


俺もトーナメント表を見る。


予選から。


何度も。


ルークの戦いを見てきた。


火。


闇。


身体能力強化。


異常なくらい上手い魔力操作。


それでも。


まだ。


全部見せている気がしない。


「よろしくお願いします」


俺が言う。


ルークが笑う。


「こちらこそ」


軽い。


いつものルーク。


でも。


次は。


俺が。


あの中へ入る。

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