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第85話 火と雷

準々決勝。


第3試合。


ミア・ハーヴェル。


対。


セレナ・エルフォード。


2人が魔法陣の前に立つ。


さっきまで隣で普通に話していた2人。


でも。


今は互いに相手を見る目が違う。


「ミア」


セレナが呼んだ。


「何?」


「予選みたいに好き勝手やらせないから」


「うん」


「……その返事、やっぱり腹立つわね」


「何で?」


ミアは本当に分かっていない顔をしている。


セレナが小さく息を吐いた。


「もういいわ。試合で分からせる」


「私が勝つ」


「だから、それはこっちの台詞よ」


セレナが笑う。


強気。


いつものセレナだ。


2人が闘技場へ転送される。


ミアはいつも通り。


余計な力が入っていない。


セレナは開始前から周囲を確認していた。


距離。


闘技場の広さ。


ミアの位置。


動ける方向。


「かなり考えてそうですね」


俺が言う。


ルークが頷いた。


「相手がミアだからね」


正面から魔法の威力を比べれば。


多分。


セレナに勝ち目は薄い。


セレナ自身も。


それくらい分かっているはずだ。


開始の合図。


先に動いたのはセレナだった。


火矢。


3本。


ミアへ向かう。


ミアが風を出した。


軌道が逸れる。


セレナはすぐに次。


でも。


今度はミア本人を狙っていない。


右。


左。


後ろ。


炎が広がる。


「やっぱり」


俺が呟いた。


ミアが動ける場所を。


先に潰している。


ミアが右へ。


炎。


止まる。


左。


そこにも火。


ミアがセレナを見る。


「これ」


少し考えて。


「アルみたい」


俺は止まった。


ルークが横で笑う。


セレナの眉が動いた。


「うるさい!」


火矢。


今度はミア本人へ。


ミアが横へ避ける。


「怒った」


「試合中よ!」


セレナの火が増えた。


でも。


戦い方は崩れていない。


火を置く。


動かす。


逃げる先を限定する。


そこへ。


本命の炎槍。


ミアが雷を放った。


火と雷がぶつかる。


弾ける。


その瞬間。


セレナが別方向から火矢を重ねた。


ミアが風で逸らす。


足元。


土が盛り上がる。


踏み込みが少しずれた。


そこへ。


炎槍。


「上手い」


俺が言う。


土は。


それ自体で倒すためじゃない。


一瞬だけ止める。


そこへ火を通す。


前の試合と同じ。


でも。


相手はミアだ。


炎槍が届く直前。


ミアが足元へ風を当てた。


身体が横へ流れる。


避ける。


そのまま。


土。


セレナの足元。


「っ」


今度はセレナの踏み込みがずれた。


「もう返した」


俺が言う。


一度見ただけ。


それなのに。


同じようなことを。


今度はミアが使った。


セレナも気づいた。


「……本当に嫌になるわね」


「何が?」


「そういうところよ!」


火が広がる。


ミアの視界を塞ぐ。


その裏から火矢。


右。


左。


上。


ミアは。


水を出した。


「水?」


大量じゃない。


薄い水の膜。


火矢がそこへ当たり。


勢いが落ちる。


残った火を。


風で流す。


その間に。


ミアはもう前へ出ていた。


セレナが炎の壁。


止める。


ミアが土を盛る。


足場。


その上へ。


炎の壁を避けるように跳ぶ。


セレナが見上げる。


空中。


ミアの手。


雷。


「っ!」


セレナが横へ飛ぶ。


雷が地面へ落ちる。


すぐに立ち上がる。


「何でもありね……」


「うん」


「褒めてない!」


ミアは気にしていない。


次。


セレナが火球を放つ。


ミアが避ける。


その逃げ先に。


炎の壁。


別方向へ。


そこには火矢。


「今度こそ」


セレナが手を向ける。


ミアの足元。


土。


動きを止める。


その瞬間。


セレナの手に炎が集まった。


細い。


強く収束している。


本命。


「来る」


俺が身を乗り出す。


セレナが放つ。


ほぼ同時。


ミアが手を向けた。


雷。


真正面。


火と雷がぶつかった。


光。


音。


一瞬。


何も見えなくなる。


「どうなった?」


煙が薄れていく。


セレナ。


立っている。


ミアも。


立っている。


でも。


違う。


セレナは大きく息をしている。


ミアは。


ほとんど変わらない。


「……正面じゃ無理ね」


セレナが言った。


ミアは答えない。


ただ。


見ている。


セレナがまた動いた。


今度は。


今まで以上に。


火を広く使う。


右。


左。


後ろ。


正面だけを空ける。


誘っている。


ミアも分かったはずだ。


それでも。


正面へ進んだ。


「行くんですね」


俺が言う。


ルークが少し笑う。


「多分、もう分かってるんじゃない?」


ミアが踏み込む。


セレナの目が動く。


今。


火。


左右から。


正面には。


収束炎。


逃げ場を全部消す。


セレナが放った。


その瞬間。


ミアの前に。


水。


今までより多い。


収束炎にぶつかる。


一気に蒸気が上がった。


視界が消える。


「見えない!」


セレナも。


ミアを見失う。


次の瞬間。


横。


風。


蒸気が一気に流された。


そこに。


ミアはいない。


「え?」


下。


セレナの足元。


土が持ち上がる。


体勢が崩れる。


その先。


ミア。


もう近い。


セレナが火を出そうとする。


遅い。


雷。


細い。


必要な分だけ。


肩へ。


「っ――」


セレナの身体が止まった。


魔法空間が光る。


セレナの姿が消えた。


試合終了。


勝者。


ミア・ハーヴェル。


観覧席から大きな歓声が上がる。


俺は少し息を吐いた。


「強いな……」


セレナは。


かなり考えていた。


逃げ道を潰した。


補助属性も使った。


一度見せた手も変えた。


正面から撃ち合わないようにもした。


それでも。


ミアは。


ほとんど全部。


一度見れば対応した。


それだけじゃない。


セレナが使った考え方まで。


その場で自分のものみたいに使った。


「やっぱり一段違いますね」


俺が言う。


ルークが頷く。


「今の一年生だと、そうかもね」


ミアが観覧席へ戻ってくる。


「お疲れさまです」


「うん」


いつも通り。


そんなに疲れているようには見えない。


少しして。


セレナも戻ってきた。


かなり悔しそうだ。


俺は何か言おうとして。


やめた。


セレナが先にミアを見る。


「次は勝つから」


「うん」


「その返事やめなさいよ」


「何て言えばいい?」


「知らないわよ!」


ミアが少し考える。


「頑張って?」


「今言われると余計腹立つ!」


ルークが吹き出した。


セレナが今度は俺を見る。


「何笑ってるのよ」


「俺、笑ってませんよ」


「顔が笑ってる」


「巻き込まないでください」


「誰の戦い方参考にしたと思ってるのよ」


言った。


セレナ自身も。


言ってから気づいたらしい。


一瞬。


止まる。


俺も止まる。


「……やっぱり参考にしてたんですね」


「今のなし」


「無理じゃないですか?」


「なしって言ったでしょ」


「はい」


「返事だけ素直なのも腹立つわね」


どうすればいいんだ。


ミアが俺とセレナを見ている。


「何?」


俺が聞く。


「別に」


興味を失ったのか。


すぐに前を向いた。


教師の声が響く。


「準々決勝、第4試合」


リシア・フェルド。


対。


レオナード・ハルヴェイン。


リシアが立ち上がる。


レオも。


これで。


準決勝に進む最後の1人が決まる。

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