第76話 組み合わせ
中央に置かれた箱を囲むように、本戦へ進んだ16人が並ぶ。
箱の中には、1から16までの番号が書かれた札が入っているらしい。
教師が俺たちの前に立った。
「本戦は16人によるトーナメント形式だ。今から抽選を行い、その番号によって組み合わせを決める」
空中に大きなトーナメント表が表示される。
まだ名前は入っていない。
「同じ予選グループだった者同士が初戦で当たる可能性もある。その点についての調整は行わない」
周囲が少しざわついた。
俺も16人を見る。
ミア。
セレナ。
ルーク。
リシア。
ディーン。
レオ。
知っている相手が結構いる。
できれば初戦では当たりたくない。
「何その顔」
隣にいたセレナが言った。
「知ってる人と当たりたくないなと思って」
「そんなこと考えてたの?」
「せっかく本戦まで来たので」
セレナが少し呆れたように息を吐く。
「誰と当たっても同じでしょ。勝てばいいのよ」
「強いですね」
「アルも予選1位なんだから、もう少し堂々としなさいよ」
そう言われても。
予選1位になったからって、ミアやルークと初戦から戦いたいわけじゃない。
「まあ」
セレナが少し笑う。
「私も初戦でアルと当たったら面倒だとは思うけど」
「思ってるじゃないですか」
「面倒と嫌は違うの」
よく分からない。
最初に呼ばれたのはディーンだった。
箱へ手を入れ、札を1枚引く。
教師が受け取る。
「1番」
トーナメント表の一番上に、ディーン・クロフォードの名前が表示された。
「一番最初かよ」
ディーンが小さく呟く。
「分かりやすくていい」
ミアが言った。
「何がだよ」
「最初に見れる」
「見世物じゃないんだけどな」
ディーンはそう言いながら戻ってきた。
次々と抽選が進んでいく。
マルク・フェスター。
「2番」
ディーンの隣に名前が入った。
これで最初の対戦が決まる。
第1試合。
ディーン・クロフォード。
対。
マルク・フェスター。
「いきなり決まったね」
ルークが言う。
ディーンはトーナメント表を見上げる。
「水属性か」
「苦手?」
ミアが聞く。
「やってみないと分からないだろ」
「そう」
それだけ言って。
ミアはまた前を向いた。
俺の名前が呼ばれた。
箱の前へ行く。
中へ手を入れる。
どれを取っても同じだ。
適当に1枚掴んで教師へ渡す。
「3番」
ディーンたちのすぐ下。
俺の名前が表示される。
アルベルト。
対戦相手の4番は。
まだ空いている。
席へ戻る。
「3番」
ミアが言った。
「見れば分かります」
「ディーンの近く」
「そうですね」
この位置なら。
初戦に勝てば、第1試合の勝者と準々決勝で当たる。
ディーンか。
マルク。
どちらか。
少しして。
ノア・ベルクが4番を引いた。
第2試合。
アルベルト。
対。
ノア・ベルク。
「ノア」
ミアが言った。
「第1グループでしたよね」
「うん」
「どんな人でした?」
少し考える。
「しぶとい」
「もうちょっと詳しく」
「水いっぱい使う」
「それは属性見れば分かります」
ミアがまた考える。
「守るの上手い」
今度はちゃんとした情報だった。
「私の雷、一回避けた」
「それ結構すごくないですか?」
「次は当たった」
「最後まで言わなくていいと思うよ」
ルークが笑う。
ノアがこっちを見ていないことを願う。
そのルークも呼ばれた。
札を引く。
「5番」
俺たちと同じ側。
少し下に名前が入った。
「近いですね」
俺が言う。
ルークもトーナメント表を見る。
「ほんとだ」
続いてクレア・ローデンが6番。
カイル・ベルナーが7番。
ヴィクトル・レインズが8番。
これで左側の8人が決まった。
第1試合。
ディーン・クロフォード
対
マルク・フェスター。
第2試合。
アルベルト
対
ノア・ベルク。
第3試合。
ルーク・ヴァレンベルク
対
クレア・ローデン。
第4試合。
カイル・ベルナー
対
ヴィクトル・レインズ。
俺はトーナメント表を見る。
初戦。
ノア。
勝てばディーンかマルク。
さらにそこを勝てば。
第3試合と第4試合側の勝者と準決勝。
その中には。
ルークがいる。
「何?」
俺の視線に気づいたらしい。
ルークが笑う。
「いや」
「僕のこと見てたでしょ」
「勝ち上がったら当たる可能性あるなと思って」
「ああ」
ルークも表を見る。
「準決勝か」
「そこまで行けばですけど」
「じゃあ、お互い頑張ろう」
軽い。
でも。
予選の戦いを見たあとだと。
できれば準決勝でも当たりたくない。
「何弱気になってるのよ」
セレナが言った。
「聞こえてました?」
「聞こえる距離で話してるでしょ」
腕を組んで俺を見る。
「まずノアに勝つ。その次も勝つ。ルークのこと考えるのはそれから」
「正論ですね」
「当たり前よ」
セレナはそのまま前を向いた。
「私だって、まだ誰と当たるか決まってないんだから」
右側の抽選が始まる。
ミア。
「9番」
エリオット・グレイン。
「10番」
第5試合。
ミア・ハーヴェル。
対。
エリオット・グレイン。
エリオットがトーナメント表を見て。
少し嫌そうな顔をした。
気持ちは分かる。
予選22ポイントの相手と初戦。
俺でも嫌だ。
「ミア」
ルークが呼ぶ。
「何?」
「相手、ちょっとかわいそうじゃない?」
「何で?」
本人には全く伝わっていない。
次に。
セレナ。
箱から札を引く。
「11番」
少ししてフィアナ・アーヴェルが12番を引いた。
第6試合。
セレナ・エルフォード。
対。
フィアナ・アーヴェル。
「フィアナか」
セレナが表を見る。
「第3グループだったよね」
ルークが言った。
「どんな戦い方?」
セレナがすぐに聞く。
「速いよ。風属性で、かなり距離を取るタイプ」
「遠距離?」
「それもあるけど、危ないと思ったらすぐ離れる。捕まえるのが面倒な感じかな」
セレナが少し考える。
「なら、逃げられなくすればいいのね」
「もう対策するんだ」
「始まってから考えてどうするのよ」
「さすが」
「馬鹿にしてる?」
「褒めてる褒めてる」
ルークが笑っている。
セレナは少し睨んでから。
またトーナメント表へ目を戻した。
ミアの第5試合。
セレナの第6試合。
2人とも勝ち上がれば。
準々決勝で当たる。
セレナも気づいたらしい。
ミアを見る。
「……勝ったら次、ミアじゃない」
ミアも表を見る。
「うん」
「うん、じゃないわよ」
「何?」
「別に」
セレナが少し笑った。
「ちょうどいいわ」
「何が?」
「本戦でやるなら、相手に不足はないってこと」
やっぱり。
セレナはこういう時の方が楽しそうだ。
続いてリシア。
「13番」
オスカー・リード。
「14番」
第7試合。
リシア・フェルド。
対。
オスカー・リード。
その下。
レオナード・ハルヴェイン。
「15番」
アデル・ローレン。
「16番」
第8試合。
レオナード・ハルヴェイン。
対。
アデル・ローレン。
これで。
16人全員の組み合わせが決まった。
俺は表全体を見る。
左側。
ディーン。
マルク。
俺。
ノア。
ルーク。
クレア。
カイル。
ヴィクトル。
右側。
ミア。
エリオット。
セレナ。
フィアナ。
リシア。
オスカー。
レオ。
アデル。
リシアとは。
完全に反対側だった。
向こうも気づいたのか。
少し離れたところからトーナメント表を見ている。
目が合った。
「かなり先ですね」
リシアが言った。
「そうですね」
同じ本戦にはいる。
でも。
この組み合わせなら。
普通に勝ち上がっていけば。
決勝まで当たらない。
「また戦えると思ってたんですけど」
リシアが少し残念そうに言う。
「決勝まで行けば戦えますよ」
「では、そこまで勝ってください」
「俺だけですか?」
「私も勝ちます」
即答だった。
やっぱり。
負けたばかりなのに。
もう次のことを考えている。
「アル」
セレナの声。
振り返る。
「何です?」
「決勝の話する前にノアでしょ」
「分かってますよ」
「ならいいけど」
セレナが俺を見る。
「予選1位になったからって浮かれないでよ」
「浮かれてないです」
「本当に?」
「本当です」
「なら勝ちなさい」
言い切った。
「セレナもですよ」
「当たり前でしょ」
強い。
教師が手を叩く。
周囲が静かになる。
「組み合わせは以上だ」
トーナメント表が大きく表示されたまま固定される。
「本戦は十分な休憩を挟んだ後、第1試合から順番に行う」
第1試合。
ディーンとマルク。
「なお、本戦でも致命傷に至る前に魔法空間が試合を停止する。ただし予選とは違い、今回は完全な1対1だ」
教師が16人を見る。
「相手を戦闘続行不能にすれば勝ち。それだけだ」
単純。
予選みたいに。
逃げながら生存順位を狙うことも。
誰かと共闘することもできない。
「本戦進出者は準備しておけ」
教師が下がる。
ディーンが立ち上がった。
剣を確認する。
少し先。
マルクも立つ。
いよいよ。
本戦が始まる。
「ディーン」
ミアが呼んだ。
ディーンが振り返る。
「何だ?」
ミアは少し考える。
「頑張って」
ディーンが一瞬。
変な顔をした。
「……お前がそういうこと言うと怖いな」
「何で?」
「いや、何でもない」
ディーンは笑って。
剣を持った。
そのまま。
魔法陣へ向かって歩いていく。
第1試合。
ディーン・クロフォード。
対。
マルク・フェスター。
本戦が始まる。




