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第72話 森の中の予選

魔法陣の前に立つ。


第4グループ。


最後の64人だ。


少し離れたところにリシアがいる。


腰には剣。


表情はいつも通り落ち着いていた。


その反対側では、何人かの生徒が集まって話している。


その中の1人が、こちらへ歩いてきた。


「お前、何級なんだ?」


いきなり聞かれた。


「E級です」


「E級?」


少し笑う。


「俺はヴィクトル・レインズ。C級だ」


「アルベルトです」


「そうか」


ヴィクトルは俺を一度見る。


「まあ、せいぜい頑張れよ」


応援しているようには聞こえなかった。


「ありがとうございます」


「……気に入らない返し方するな」


そう言って、ヴィクトルは仲間の方へ戻っていった。


どうやら最初から何人かで動くつもりらしい。


共闘は禁止されていない。


64人もいるなら、最初から複数人で動くのも一つの方法だろう。


魔法陣が光る。


視界が白く染まった。


次に見えたのは森だった。


木。


岩。


斜面。


少し先には川も見える。


俺は周囲を確認する。


土が多い。


当然だけど。


かなりやりやすそうだ。


開始の合図が響いた。


すぐに別の場所から魔法の音が聞こえる。


火。


風。


土。


あちこちで戦闘が始まっていた。


俺は急がない。


まずは周囲を見る。


木の位置。


岩。


斜面。


逃げられる方向。


使えそうな場所は多い。


少し進んだところで。


正面から男子生徒が1人現れた。


向こうも俺に気づく。


一瞬止まる。


でも。


すぐに構えた。


俺も構える。


話す必要はなかった。


予選なんだから。


相手の周囲に風が集まる。


風の刃。


俺は横へ避ける。


2発目。


今度は少し広い。


地面を盛り上げる。


風が土に当たって散る。


相手が横へ動く。


その進行方向。


少し土をずらす。


「っ」


踏み込みが崩れた。


その間に距離を詰める。


拳。


相手が腕で受ける。


身体能力強化。


押す。


後ろへ下がる。


もう一度。


足元の土を少しずらす。


体勢が傾く。


肩を押す。


相手が倒れた。


すぐに土で腕の横を挟む。


動きを止める。


数秒後。


姿が消えた。


アルベルト 1


「よし」


大きな魔法は使っていない。


これくらいでいい。


そのまま森の奥へ進む。


斜面も。


足を置く場所の土を少しずらせば登りやすい。


上まで登る。


そこから周囲を見る。


木が多くて遠くまでは見えない。


でも。


下よりは少し分かりやすい。


前方。


何人か動いている。


1人。


2人。


3人。


4人。


その中に。


さっきのヴィクトルがいた。


向こうも俺に気づく。


4人とも止まった。


俺も止まる。


ヴィクトルが笑う。


「さっきのE級か」


「また会いましたね」


「ちょうどいい」


後ろの3人が広がる。


もう戦うつもりらしい。


当然だ。


ここは予選。


見つけた相手をわざわざ見逃す理由はない。


「悪いな」


ヴィクトルが言う。


「4対1だ」


「多いですね」


「共闘は禁止されてないからな」


「知ってます」


ヴィクトルの周囲に風が集まる。


後ろの3人も構えた。


火。


水。


剣。


4対1。


まともに正面からやる必要はない。


ヴィクトルが風を放つ。


俺は横へ避ける。


その先。


火球。


一歩下がる。


地面を盛り上げる。


火球が土に当たる。


すぐに剣士が距離を詰めてきた。


速い。


俺は後ろへ。


水が足元に広がる。


滑らせるつもりだ。


地面を傾ける。


水が横へ流れる。


ヴィクトルの風。


正面。


土壁を出す。


完全に止める必要はない。


勢いを弱める。


すぐに壁を崩す。


土煙が広がる。


視界が切れる。


俺は左へ。


剣士が土煙の中へ飛び込んでくる。


「そこだ!」


違う。


俺は木の横。


剣士の足元。


少し土をずらす。


踏み込みが崩れる。


背中を押す。


前へ。


その先。


水属性の生徒。


「うわっ!」


2人がぶつかる。


そこへ。


ヴィクトルの風が飛んできた。


俺は身体を沈める。


風が頭の上を抜ける。


そのまま。


後ろにいた火属性の生徒へ。


「危なっ!」


火属性の生徒が避けた。


4人の位置が崩れる。


今。


一番近い剣士へ走る。


相手が立ち上がる。


剣。


避ける。


次。


足元の土をずらす。


踏み込みが浅くなる。


拳。


腹。


相手が下がる。


さらに。


後ろの土を少し盛る。


踵が引っかかる。


体勢が崩れた。


もう一撃。


姿が消える。


アルベルト 2


「……っ」


ヴィクトルの顔から笑みが消えた。


残り3人。


すぐに距離を取る。


さっきより。


明らかに慎重になった。


「E級のくせに」


ヴィクトルが言う。


「級は関係ないんじゃないですか?」


「気に入らないな、お前」


風が集まる。


今度は強い。


残った2人も動く。


3対1。


ヴィクトルが前へ出た。


風を使って一気に距離を詰める。


横から水。


その後ろから火。


避ける場所を潰してくる。


俺は地面を盛り上げる。


足場。


その上へ。


水が下を通る。


火が横を抜ける。


すぐ。


ヴィクトルの風。


飛び降りる。


着地。


土を少しずらす。


衝撃を逃がす。


「逃がすか!」


ヴィクトルが追う。


その時。


横から。


鋭い音が走った。


ヴィクトルが止まる。


俺もそちらを見る。


リシア。


剣を抜いている。


「……また面倒なのが来たな」


ヴィクトルが呟いた。


リシアはこちらを見る。


次に。


ヴィクトルたちを見る。


ヴィクトルは少し考える。


残り3人。


俺。


リシア。


「引くぞ」


後ろの2人が頷く。


「逃げるんですか?」


俺が言う。


ヴィクトルがこちらを見る。


「お前とこいつを同時に相手にする意味がない」


「なるほど」


「次は落とす」


「どうぞ」


ヴィクトルたちは森の奥へ消えていった。


少し静かになる。


俺とリシアだけが残った。


「助かりました」


俺が言う。


「助けたつもりはありません」


リシアが答える。


「ですよね」


剣を構える。


俺も構えた。


ここは予選。


出会った以上。


戦う。


リシアが踏み込む。


速い。


剣。


身体をずらす。


次。


避ける。


3撃目。


腕で受ける。


重い。


純粋な剣技なら。


やっぱりリシアの方が上だ。


距離を取る。


足元の土を少しずらす。


リシアの踏み込みがずれる。


でも。


すぐに対応された。


次の足を置く位置を変える。


そのまま前へ。


「っ」


剣。


避ける。


俺も拳を出す。


剣の腹で受けられた。


そのまま押し返される。


一歩。


二歩。


俺は下がる。


リシアが来る。


また剣。


避ける。


足元。


土を少し盛る。


リシアの足が止まる。


ほんの一瞬。


俺は横へ。


拳。


リシアが身体を捻る。


外れる。


すぐに剣。


今度は俺が下がる。


「やっぱり強いですね」


俺が言う。


「アルベルトさんも」


息は乱れていない。


まだ。


お互い余裕がある。


俺は地面を見る。


リシアも。


俺の足元を見る。


次に何をするか。


警戒している。


なら。


正面から。


踏み込む。


リシアの剣。


身体を沈める。


そのまま懐へ。


拳。


リシアが下がる。


追う。


でも。


横から。


火球。


俺とリシアの間を通った。


2人とも止まる。


木の向こう。


何人かいる。


別の方向にも。


人。


結界が縮まり始めているらしい。


外側にいた生徒が。


中央へ集まってきていた。


「増えてきましたね」


俺が言う。


「そうですね」


さらに。


別の魔法が飛んでくる。


風。


俺たちは別々に避けた。


このまま続ければ。


周りまで混ざってくる。


リシアを見る。


向こうもこちらを見る。


一瞬。


それだけで。


考えていることは同じだと分かった。


俺は後ろへ。


リシアも反対へ。


どちらからともなく。


一度離れた。


決着はついていない。


俺は森の奥へ走る。


後ろで。


また戦闘が始まった。


少し距離を取る。


木の間を抜ける。


斜面を下る。


周囲の音を聞く。


さっきまでより。


明らかに人が多い。


結界が縮んでいる。


中央へ行くほど。


戦闘も増える。


「面倒だな」


呟きながら進む。


その時。


前。


人影。


止まる。


3人。


後ろ。


音。


振り返る。


2人。


合計。


5人。


俺を挟むように立っている。


「……多くないですか?」


誰も答えない。


5人が。


同時に構えた。

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