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第63話 聖剣の答え

俺は聖剣の柄を握った。


冷たい。


それ以外は、特に何も感じない。


少し力を入れる。


引く。


「……あれ?」


動かない。


もう少し強く引いてみる。


やっぱり動かない。


後ろからミアの声が聞こえた。


「どう?」


「見ての通りです」


「抜けそう?」


「全然」


今度は両手で握る。


足を開いて、もう一度。


力を込める。


それでも、剣はびくともしなかった。


本当に台座と一体になっているんじゃないかと思うくらい動かない。


「身体能力強化は使わないでくださいね」


職員が言った。


「使いませんよ」


「たまにいるんです。力でどうにかしようとする方が」


「それで抜けた人は?」


「いません」


「ですよね」


力の問題じゃない。


X級1位でも抜けなかった時点で分かっていたことだ。


一度力を抜く。


もしかしたら、変に力を入れない方がいいのかもしれない。


そんなことを考えて、軽く握り直す。


そのまま引いた。



動かなかった。



何も起きない。


光もしない。


音もしない。


聖剣は、最初から最後までただそこに刺さっていた。


「駄目ですね」


俺は手を離した。


「残念」


ミアが言う。


「そんなに残念そうじゃないですよね」


「ちょっと期待してた」


「私も」


セレナが言った。


「何でです?」


「なんとなくよ」


「ルークと同じこと言ってますよ」


「アルって、たまに変なことするじゃない」


「どういう意味ですか」


「そのままの意味」


納得できない。


俺は台座から離れた。


ルークを見る。


笑っている。


「ほら、抜けなかったでしょう」


「そうだね」


「絶対ちょっと期待してましたよね?」


「ちょっとね」


「何でです?」


ルークは聖剣を見る。


「なんとなく」


「またそれですか」


「便利だよ、この言葉」


「便利に使いすぎなんですよ」


ルークが笑った。


ただ、すぐには聖剣から目を離さなかった。



「これで3人とも駄目でしたね」


俺が言う。


「僕も含めて4人だね」


「ああ、そうでした」


ミアが台座を見る。


「誰が抜くんだろ」


「分からないわね」


セレナが答える。


周囲では、また別の人が聖剣へ挑戦している。


筋肉質な男だった。


かなり強そうに見える。


柄を握る。


引く。


動かない。


少しして諦めた。


その次は、身なりのいい若い男。


結果は同じ。


「本当に誰も抜けないですね」


「だから困ってるんでしょうね」


セレナが言った。


近くにいた職員が苦笑した。


「こちらとしても、そろそろ候補の探し方そのものを変える必要があると考えています」


「探し方?」


俺が聞く。


「今までは、実績のある方や高位の方を中心にお願いしてきました。ただ、それでは見つからない可能性もありますので」


「一般の人にも?」


「そういう案は出ています」


職員は頷いた。


「とはいえ、完全に開放するとなれば警備や人員も必要になりますし、何より人が殺到しますから」


外にいた人の数を思い出す。


あれが全員中へ入ってきたら大変だ。


「お金もかかりそうですね」


「ええ。それも問題の1つです」


俺が何気なく言うと、隣でルークが職員を見た。


「まだ決まってないんですか?」


「はい。現在検討中です」


「そうですか」


ルークはそれ以上何も聞かなかった。



見学を終えて、俺たちは入口へ向かった。


「じゃあ次」


ミアが言う。


「何が?」


「出店」


「ああ」


忘れてなかった。


むしろ聖剣より覚えていた気がする。


「約束したでしょ」


「しましたね」


「全部見る」


「全部とは言ってません」


「時間作るって言った」


「それはミアが言ったんですよ」


セレナが笑う。


「せっかくだし、少しくらい見ていきましょうよ」


「セレナまで」


「私も街を見たいもの」


「じゃあ行こうか」


ルークが言った。


そう言いながら歩いていたが、入口の近くまで来たところで足を止めた。


「ごめん。先に行ってて」


「どうしたんです?」


「ちょっと寄付のことで話してくる」


「また寄付するんですか?」


「まだ分からないよ」


「ルーク、結構ここ好きですね」


「掘った結果が聖剣だったからね。最後まで見たいじゃない」


そう言って笑う。


「そんなにかからないから、先に見てて」


「分かりました」


ミアが即答した。


「出店行けるなら何でもいいんですね」


「うん」


「否定してくださいよ」


ルークが笑いながら、さっきの受付の方へ戻っていく。


俺たちは先に外へ出た。



建物を離れると、すぐに香ばしい匂いがした。


ミアが止まる。


「アル」


「はいはい、見えてますよ」


少し先の出店で、串に刺した肉を焼いていた。


「さっき昼食べましたよね?」


「歩いた」


「その程度でお腹減ります?」


「ちょっと」


「嘘ですよね」


「食べられる」


「聞いてないです」


それでも結局、3人で出店の前まで行く。


ミアは肉の串を1本買った。


セレナは果物を使った飲み物。


俺は何も買うつもりはなかったが、焼いている匂いに負けて別の串を買った。


「アルも食べてる」


ミアが言う。


「付き合いですよ」


「おいしい?」


一口食べる。


「……おいしいですね」


「でしょ」


「また何でミアが得意げなんです?」


セレナが笑う。



しばらく出店を見ていると、ルークが戻ってきた。


「お待たせ」


「早かったですね」


「話だけだからね」


「また寄付した?」


ミアが聞く。


ルークは少し笑った。


「ちょっとだけ」


「絶対ちょっとじゃないわね」


セレナが言う。


「どうだろう」


「さっきからそればっかりですね」


ルークは答えず、俺が持っている串を見る。


「それおいしい?」


「おいしいですよ」


「じゃあ僕も買おうかな」


「聖剣のところで何話してたんです?」


俺が聞く。


「大したことじゃないよ」


ルークは出店の方へ歩いていく。


「せっかく見つかったんだから、使える人が見つかるといいねって話」


「まあ、それはそうですね」


「うん」


それだけ言って、ルークは肉の串を注文した。

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