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第59話 招待券の行き先

生徒会室を出たあと、俺は訓練場へ向かった。


セレナたちはまだいるはずだ。


第3訓練場へ着くと、すぐにミアがこちらへ気づいた。


「アル」


「はい」


「終わった?」


「終わりましたよ」


ミアの視線が俺の顔から、手元へ落ちる。


「券」


「まずお疲れさまくらい言ってもよくないですか?」


「おつ」


「軽いな」


「券」


「はいはい」


鞄から招待券を取り出すと、ミアがすぐ近くまで来た。


「見せて」


「取らないでくださいよ」


「取らない」


渡すと、ミアは真剣な顔で券を読み始めた。



「何それ?」


少し離れたところにいたセレナも寄ってくる。


「昨日話してた、生徒会の手伝いの報酬です」


「本当にレストランの招待券もらったの?」


「ちゃんと働きましたから」


「アルが」


ミアが言った。


「そうですよ。ミアは何もしてません」


「返事した」


「それは仕事じゃないです」



ルークも訓練を終えたらしく、木剣を片づけてこちらへ来た。


「結局、点検どうだった?」


「今日だけで終わりました」


「何かあった?」


「大したものはなかったですよ。柵が緩んでたり、排水溝が詰まりかけてたり」


「そういうの見つけたんだ」


「リシアも見つけてましたよ」


「へえ」


ルークが招待券を見る。


「それが報酬?」


「はい」


「みんなで行く」


ミアが言った。


「もう決定なの?」


セレナが聞く。


「うん」


「まあ、私はいいけど」


セレナも券を覗き込んだ。


「《ラ・メルシエ》じゃない」


「知ってるんですか?」


「名前だけ。予約がなかなか取れないって聞いたことあるわ」


「有名」


ミアが頷く。


「ミアは昨日知ったばっかりでしょう」


「調べた」


「いつの間に?」


「昨日」


どうやら生徒会室から戻ったあと、すぐ調べたらしい。



ルークが手を伸ばす。


「ちょっと見せて」


「どうぞ」


ミアから券を受け取ると、ルークは《ラ・メルシエ》の名前を見て、その下に書かれた街の名前を確認した。


「それってどこ?」


俺が聞く。


街の名前を読めるようにはなったけど、行ったことはない。


「学院から西に、馬車で2時間かからないくらいだよ」


ルークが答えた。


「それなら日帰りで行けますね」


「朝出れば余裕だと思う」


「次の休み」


ミアがすぐに言った。


「早くないですか?」


「招待券ある」


「まあ、そうですけど」


「じゃあ行ける」


もう行く気しかないらしい。



ルークはまだ招待券を見ていた。


「……この街か」


「何かあるの?」


セレナが聞く。


「うん」


ルークが顔を上げる。


「聖剣があるよ」


「聖剣?」


俺が聞き返した。


「最近見つかったっていう?」


セレナは知っているらしい。


「そう。それ」


「聞いたことないです」


「アル、こういう話ほんとに知らないわね」


「学院に入るまで領地にいましたから」


「それにしたってよ」


セレナが呆れる。



「どんな剣なんです?」


「古い遺跡から見つかったんだって」


セレナが答える。


「台座に刺さったままで、今のところ誰にも抜けてないらしいわ」


「誰にも?」


「かなりの人数が試してるよ」


ルークが言った。


「貴族も軍人も、級の高い人もね」


「そんなに抜けないものなんですか?」


「X級第1位も試したらしいわよ」


セレナが言う。


さすがにその言葉には驚いた。


「世界で1番強い人ですよね?」


「そう。《魔族キラー》とか《正義の仮面》って呼ばれてる人」


その呼び名なら俺でも聞いたことがある。


魔族討伐でいくつもの功績を挙げている、現在のX級第1位。


「その人でも?」


「駄目だったみたい」


「じゃあ、力が強ければ抜けるってものじゃないんですね」


「たぶんね」



ミアが招待券から顔を上げる。


「抜けたら?」


「ん?」


「聖剣」


「ああ」


セレナが少し考える。


「聖剣を手にした人は、その世代で最強になる可能性を秘めてるって言われてるわ」


「最強?」


俺が聞く。


「そういう古い記録があるのよ。聖剣に選ばれた人は、そこから一気に力を伸ばしたって」


「だからみんな抜きたがるんだ」


「まあ、それだけじゃないでしょうけどね」


世界で1番強い人間でも抜けない。


なのに、抜いた人間はその世代で最強になるかもしれない。


変な剣だ。



「見られるんですか?」


「今は希望者に試させてるはずだよ」


ルークが答える。


「試すって、抜くのを?」


「うん」


セレナが少し興味を持ったように言う。


「じゃあ、《ラ・メルシエ》に行くついでに見てみる?」


「同じ街なんですよね?」


「そう」


ルークが頷いた。


「せっかくだし行ってみようよ」



特に断る理由もない。


「いいんじゃないですか」


「試す?」


ミアが聞く。


「俺が?」


「全員でいいんじゃない?」


セレナが言う。


「せっかく行くんだし」


「でもX級第1位でも抜けないんでしょう?」


「だからアルが抜けるかもしれない」


ルークが言った。


「なんで俺なんです?」


「なんとなく」


「一番信用できない理由ですね」


「そう?」


「ミアの方がそれっぽくないですか? B級ですし」


ミアが首を振る。


「関係ない」


「そうなんです?」


「今の級で決まるなら、もう誰か抜いてるんじゃない?」


ルークが笑う。


「X級第1位まで試してるんだし」


「それもそうか」


少なくとも、単純な強さだけを見て選ぶ剣ではないらしい。



「じゃあ全員」


ミアが言った。


「何が?」


「抜く」


「勝手に決まりましたね」


「その後、食べる」


「そっちが本命でしょう」


「うん」


迷いがない。



セレナが招待券を受け取る。


「次の休みなら、私は空いてるわ」


「僕も大丈夫」


ルークが答える。


「ミアは聞くまでもなさそうですね」


「空けた」


「もう?」


「昨日から」


「早すぎません?」


ミアは気にしていない。



「じゃあ次の休みで」


俺が言う。


「朝から行って、街を見て、聖剣も見て、《ラ・メルシエ》ですかね」


「店が先」


ミアが即座に言った。


「時間によるでしょう」


「店が先」


「招待券に時間書いてないんですか?」


ミアが券を確認する。


数秒。


「昼」


「じゃあ昼ですね」


「勝った」


「何に?」



セレナが笑う。


ルークも少し笑っていた。


次の休みは、少し遠出することになりそうだ。

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