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タイトル未定2026/10/16 13:14

 有渡山に登ってみれば、そこは他の山々とは異なる趣の頂を見せていた。

 当然、そこに続くであろうはずの尾根は左右に広がりをみせ頂はまだ先にあるのではと思い違う程、されど見渡せど頂は見出せず、さながら有渡山は中腹からだいだらぼっちに喰われたのではと思える程に平坦な広がりを見せていた。

 そこは平場と木立が入り乱れそれが東へと続く地形に泰夫はほくそ笑んだ、これは新高村にて鍛錬を積みし場かと見紛う程であったのだ、泰夫は皆を手招きで集めた。


「泰夫殿、ここは」


 是貞も同じ事を思うたのか泰夫へ問うてきた泰夫は微笑み頷いた、されど夜鷹に地の利はあれど弾は既に尽きかけ五十の敵を迎え撃つには気掛かりではあった、爆ぜる茶筒はあれど各々にひとつづつ、使い処を見誤れば斎藤の元へ多数の敵を引き連れる事となる、敵の戦意を削ぎ退散していただくが最良ではあるが三郎太の武具や長筒はここにはないのだ、泰夫は己の背にある鉄砲を使わざる得ないとは思い馳せていたがこの様な見通しの効かぬ場で使えるものか怪しかった。


「互いに三間程間を開け退がる」


 泰夫が申し渡すと夜鷹の面々は前方の林へ横に広がり潜み敵が登ってくるのを待った、敵は己が追い詰めし者であると威勢のよい声をあげ登ってきていた、その怒声は庄之助や謙次、是貞を震え上がらすには事足り鉄砲は木との間でかたかたと音をたてていた。

 その声が明瞭に耳へ届きはじめ敵の先頭三名が顔を出し呑気に眼前に広がる光景に感嘆の声をあげた、ここでもう我慢ならぬと庄之助が木立より姿を出し敵目掛け茶筒を放り投げた、敵は今更何事かと庄之助に向けライフルを向けた、弧を描き飛んでゆく茶筒は悲しきかな敵の頭上を越えてゆくのだ敵はライフルで庄之助を捉えながらも眼は茶筒を追っていた、茶筒はその敵の背後に落ちるところころと斜面を落ちてゆき後ろより登りきていた兵の足に当たり止まった。

 どんと音がすると火の手と土煙が立ち上り敵三名は斜面を駆け上がる烈風でこちらへ吹き飛ばされてきた、これを見た佐治は重信を呼び刀を抜くと敵の喉元目掛け突き刺しその者達を屠った、すると右にいた謙次が叫んだ。


「右から敵」


 夜鷹の潜む林の右側の斜面を登りきた敵五名、敵は斜面のゆるき事で山道でもなき場所を登っていたのだ、横に広がりし隊列で右の敵を狙うは味方が射線に入り機に応ずる事ができず、前に出し佐治、重信は木立が邪魔でこちらも応じる事ができないでいた、謙次は即座に応じ二名は屠るが三名が迫ってきた、最早互いの得物の間合いではなく敵は抜刀して謙次に斬り掛かってきた、されど謙次と是貞は早々と刀を置き残し謙次はこれに応じる事ならず無理に鉄砲にて応じていたが敵の刃はとうとう謙次に届く、初太刀は咄嗟に掲げた鉄砲で防いだが次弾は示現流の掛け声と共に突きが謙次の胸元目掛け飛んでくる、弾除け半纏がそれを防ぎはしたが勢いで謙次は後ろへと倒された、これを見た敵は謙次へ鋒を向けた。

 絶体絶命の危急、されど謙次の背後からは獲物を睨むが如き蛇の筒先がその者達を捉えていた、気付いた敵は慌て刀を捨てライフルへ手を伸ばしたがライフルを触る事なく続けざまに屠られた。


「刀を粗末にするなうつけが」

 

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