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タイトル未定2026/10/08 03:04
宿ではなお喧々諤々の討議が続いていた、孝江の言い出した両備えの策も一連の働きを順々に当てはめてみればあながち成らぬことではないと宗盛は賛意へ傾きかけていた、そこへ城下を巡っていた庄之助が戻り牢屋敷は川辺村にありと告げた、さらに続いて戻った佐治は駿府城下には牢屋敷が二箇所あり、ひとつは庄之助の申す川辺村、いまひとつは南安東村にあるとの聞き込みをもたらした。
だが佐治の報せは孝江を大いに悩ました、果たして内藤はどちらに収監されておるのであるか、これは城下をいくら周ろうと得られる情報ではないであろう、よしんば牢役人でも取り込めば事は簡単であったが残された刻は多くないと孝江は頭を抱えていた、すると階下から激しく誰かが階を転げ落ちる音がした。
「おい泰夫しっかりしろ、情けない男だな」
声の主は斎藤であった斎藤は泰夫を抱えると皆の集まる部屋へ入ってきた。
「おい孝江、泰夫は下戸か二軒目まわる頃にはこの有様だ」
「あっー孝江ぇ、会いたかったぁぞー」
すっかり出来上がった泰夫は、ふらりと孝江に抱きついた、孝江はまるで幼子をあやすように胸元へ顔を埋める泰夫の背をぽんぽんと叩いていたが、不意にその手を止めると何か思いついたように両手を打ち鳴らした。
「斎藤様、お頼みしたい事が御座います」




