↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
69/107

タイトル未定2026/10/07 00:46

「それで勝先生、実は西郷様よりの報せにて新政府軍最後の一隊が北陸道を越え越中より江戸へ攻め入る由に御座います、本日こちらへ参りましたのもひとえにその儀あってのことで御座います」


「そいつぁもっともだ、一応おいらも川越へ二千ばかり回してあるがそれで間に合うかい」


「二千にては五分、いや足りませぬ敵は道々、恭順を示す諸藩を取り込みつつあり、すでに二千は下るまいと存じます」


「そうかい、じゃあ一万でどうでえ」


 大久保は一万の兵を思い描き湯呑を持つ手をふるわせ次のひと言にそれを取り落とし酒は畳の上へ広がってゆくのだった。


「武陽鎮撫隊近藤勇隊長さんよ…


おいおい、勿体ねえなあ、しゃんとしねえか」


「勝先生、わ、わたくしに一万の兵を率いよと仰せられるので」


「何だい耳でも遠くなっちまったのか、そうさ、おめえが一万を率いて新政府軍をうち破る、そこでようやくおいらの出番って寸法よ、ちょいと談じ込んで二つ三つ首が飛べばそれで一件落着ってわけだ」


 勝はそう言って、三献目をぐいとあおった、大久保は畳の上を転がった茶碗を拾い上げ、その底をじっと見つめたのちようやく重い口を開いた。


「実は勝先生⋯」


 大久保の重苦しい気色に勝は何事かと眉を上げ耳を傾けた、勝はゆるりと茶碗を口へ運んだが、聞くにつれその縁を唇に当てたまま酒を喉へ流すことなく手を止めた、やがて静かに茶碗を脇へ置くと勝は立って大久保の後ろへ回りいきなり腰帯を引いた、四つん這いになった大久保が狼狽して振り向こうとすると勝は尻を撫で始め大久保は「何をなさる」と抗したが勝は鋭くこれを制し続き脚を丹念に撫でると勝は大久保を奇妙な物を見る様な眼差しで見つめ言った。


「尻尾はねえし脚もあるみてえだが⋯」


 勝の神妙なる面持ちに大久保は必死にこれを否んだが勝の疑念はついに晴れなかった困り果てた大久保は、ふと思い出したように袖へ手を差し入れ黒き小さき品を取り出して勝の前へ差し出した。


「勝先生、これにて如何に御座いましょう」


 勝はそれを受け取ると穴のあくほど見入った、それは大久保が孝江より預かりし、かの耳栓にほかならなかったがされど悲しきかなもはやこれに語らせる相手もなく動かすべき力もまた尽きていた。


「これは…」


 勝は問うてきたが大久保には最早打つ手なく、それどころか勝の疑いを更に濃くするだけであった。


「それは遠くにいる者とも容易に話す事ができるカラクリで御座います」


 勝は手に持つ物と大久保の顔を交互に見るとそれを大久保に黙って差し返した、そして懐疑的ではあるが勝らしく事実だけに目を向け語り始めた。


「さておきではあるが甲府、箱根での勝利は変わらぬ事実、おまえさんがどんな手を使ったかは知らねえがこれはどうしようと変えようがねえ、それでも尚ってならその夜鷹の連中おいらに紹介してくれよ」


「実は歳が駿府にて囚われておりまして」


「ほう」


「その夜鷹に救出の儀を申し伝えております故、今すぐには」


「なるほどな、では、土方とその者どもが戻り次第、おいらに引き合わせな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。