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タイトル未定2026/10/06 11:40

「江戸へ戻り越中より攻め入る軍勢に備えよと申すか」


「はい、中山道、東海道が潰え撤退もあり得ますが備えおく事に憂いは御座いません」


「相わかった、急ぎ永倉供を川越辺りへ動かし儂は勝先生の元へ向かう」


「将軍様では」


「味方を見捨て江戸へ逃げ果せたのだぞ、まあ、側近の申し出たることやもしれぬが、しかしその様な者達がこの報せ耳にしたるや今一度、京へ攻め上らんなどと申しかねぬ、ここは勝先生にうまく取り成していただくが上策よ」


「のちの御采配はお任せします、わたくし政のことにはいささか疎うございます」


「そうであるか⋯」


 大久保は上目遣いに含みのある言葉を申すと皆を集めこの戦における労いの言葉を掛け江戸へ戻ると告げた、孝江は夜鷹の面々へひき続き駿府にて内藤隼人の奪還と更なる命を告げた。


「孝江、性急すぎないか、ここは一度…」


 孝江は泰夫の言葉を遮ると申し訳なさげに言った。


「承知はしております⋯されど、内藤様のお命は風前の灯、いつ潰えても怪しゅうはございません」


「⋯そうなのか、ならば、致し方ない⋯な」


「泰夫さん、この役目果たしましたなら一度新高へ戻り暇を頂こうかと存じます、さぶちゃんのこともございますし⋯」


「そうだな、せめて形見の一つでもあればよかったが⋯」


 泰夫は箱根峠の方へ向き直り静かに首を垂れた孝江もまたそっと手を合わせる、そこへ杉がやって来て駿府へ向かいし装束と得物のことで相談があると孝江に告げふたりがその場を辞すると入れ違うように斎藤が現れ肩先で泰夫をこつと小突いた。


「孝江のやつ、俺には短筒ばかりでライフル銃は渡してくれなんだぞ、お前からも一つ言うてくれぬか」


「斎藤様は腰の物ひとつにて十分にございましょう」


「戯れを申すな、俺とて夜鷹衆の端くれぞ」


「ならば腰の物とお取り替えでは、それなら孝江も…」


「い、いや、もうよい、今のは忘れてくれ⋯」


 斎藤はそう言って頭を掻きそそくさと去って行った、泰夫はそのどこか寂しげな後ろ姿を見やり、ふっと笑みを浮かべた。


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