↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
57/103

タイトル未定2026/09/30 22:01

 戦国時代、銃撃隊は横一列に並び命中率の悪さを数で集弾させ補っていた、鉄砲も火縄銃、弾丸や玉薬は前方から詰める言わば前装式で雨の日などは全く使い物にならない代物であったが戦国の世から三百五十年あまり武器やその差配は大きく移り変わり薩摩や長州は英国との戦を経験するといち早く西洋の武器を調達しており今、先鋒を務めし薩摩藩兵が手にするはスナイデル銃、先のミニエー銃とは異なり弾丸は後方から装填し炸薬で撃ちだす、銃身には溝が螺旋状に刻まれ弾丸を回転させる事により命中率は格段に向上した最っとも新しきライフル銃であった、命中率の向上はひとりひとり正確な狙撃が可能になり戦国の密集戦術は必要なくなると西洋式訓練もあり散兵戦術へと自ずと変わっていた、この散兵戦術であるが兵が散る事で反撃による多数の被害を防ぐことができる益もあったのだ。


 今、眼前の敵は二間でなく二十五間に広がり向かってきている孝江の見立てでは二間に密集した敵を討つ腹づもりの四名であり二十五間の広がる散兵は不測の事態、先鋒に立つ重信は気がせいて指が迂闊にも引金を引いてしまった、乾いた音が三度、敵二名が倒れるもこちらを悟られ二十五間の広がりから反撃を受ける、重信の隠れる木は樹皮が全て剥げ幹の色が変えられた重信は南無三と呟き木陰から半身を出し撃ち返した、この状況、唯一の救いは百六十間の隔たりこれはスナイデル銃の射程である実際にはその倍、弾は飛んでゆくが狙って当たるものではなかった、それでも幅二十五間から集弾してくるのだ兜を弾丸がかすめ弾除けの肩当てに二発命中していた、しかし射程すれすれの弾丸は肩当てに弾かれ下に落ち重信は弾除け半纏がなければ自分の右腕は動かず戦う事ままならずこの場で敵に討たれていたであろうと固唾を呑んだ。


 更に森からは続き敵が現れ数的有利を知ると自ずと前進を始めた両者の間にはそれなりに隠れるに有益な場所があり身を隠す者、そのまま迫り来る者様々、重信との隔たりは次第に狭くなってゆく弾幕厚く重信は動けないでいるとこれを見た佐治は指笛を吹き庄之助と是貞に合図を出した、佐治は庄之助に重信が後退できる様に援護しろと指示を出す、庄之助は岩陰から顔を出すと前方から迫る人の波に怖気付き岩陰に再度身を潜めた、再び佐治が指示を出すも庄之助は隠れる岩に溶け込んだ如く動けないでいた。


「⋯さぶちゃんに笑われるわよ」


 耳栓に孝江の声がした、庄之助は奥の歯を噛み締めると天を仰ぎ三郎太と静かに呟き岩陰から飛び出し叫びながら撃ちまくりながら前進した、庄之助の弾丸は殆ど木々の枝枝を揺らすだけであったが突如現れた別の敵に身を隠さずいた者達を牽制するには十分であった、重信は好機と木陰から飛び出し後退りながら庄之助同様撃ちまくった、重信の放った弾丸は庄之助とは違い身を屈めていた者を薙ぎ倒した、それを見た庄之助はお役御免と慌てて岩陰に戻ると肩を大きく揺らし荒く息をした、するとそこに上から重信が降ってきた。


「庄之助殿、助かり申した」


 庄之助は息をしながら首を振った、その二人の姿を見た佐治は微笑むと皆に指示を出した。


「庄之助なかなかの武功であったぞ、しかしこれでは手に負えん退くぞ、後は大久保様にお任せします」


「相わかった、大儀である後はつつがなく立ち返るがよい」


 後は任せよと頼もしい大久保の声であったが重信ひとり後退させるのも難儀を強いられる状況に重信は佐治に言った。


「佐治っ、つつがなくゆくわけなかろう如何様にするのだ」


「案ずるに及ばぬ」


 佐治は言う、大久保同様頼もしい言葉ではあったが確かな証は何もなかった、忠太郎達との隔たりは遠くこの場に赴く頃には屍が四つ並んでいるだろう、泰夫の狙撃もあるがこの状況やはり心強いのは忠太郎達の長筒であった、重信は何かを覚悟したのか鉄砲の底にある金具を抜くと残りの弾を確かめた、木陰からの銃撃で重信は弾の入る金具を使い切り残りは今鉄砲に収まる物のみ、庄之助は弾除け半纏に収まる自分の金具をひとつ重信へ渡した。


「かたじけない庄之助殿」


 庄之助は何も言わずに引き攣る笑顔を重信に見せた、すると佐治が皆に伝えた。


「いいか、拙者の号令で五つ数えたら振り返らず陣へ駆けろ、よいか」


「佐治、お主⋯」


「心得違いだ重信、いいか五つだぞ」


 重信は佐治が命を賭して我等を後退させるものと思うていたが佐治の鉄砲には皆と違う細工を孝江から施されていた、それは鉄砲の銃身の下に備え付けられていたが狙いを定めるに少々刻が必要であった、佐治は狙いを定める金具を起こした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。