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タイトル未定2026/09/28 23:41

 隊列の最後尾、輜重を長筒を用い攻撃する三郎太を含め三名の夜鷹面々、輜重は概ね軍の兵具、兵糧や玉薬の荷運びを担う用兵の要である、輜重を失う事は明日の戦いはおろかその日の戦いも怪しくなる、甲府では新政府軍は既に入城を果たしており兵糧などは蔵へ収めてあった孝江はそれを糧に民を動かしまさに糧としたがこの度は違った兵を減らしつつ残る兵の糧を断ち、退かざる得ない状況を孝江は仕立てていた。


 長筒の威力は大手門の強固な木扉を意図も簡単に吹飛ばす、荷車に用いるなど無益とは思われたが敵を屈服させるには好都合との孝江の腹づもりであり玉薬を積む荷車などは吹き飛んだかと思うと積荷が更に爆ぜるのだそれが無事な荷車に飛び火すると荷車は弄さずして燃え盛ってくれた、中でも油を運ぶ荷車などは辺りに油が飛び散り燃え上ると兵達の身体にも火がつき右往左往していた、これを見た三郎太は流石に目を背けた。


「三郎太、これ程にてよいのではないか」


 忠太郎が三郎太へ聞くと三郎太は孝江へ取り継ぐように聞いた、孝江は宗盛と共に三方を見渡せる場所におり三郎太達のいる場所を遠眼鏡を覗き十分であると引き揚げるよう指示を伝えた、三郎太は改めて己の所業を見渡すとそこに荷車の形を留める物は殆どなく燻る煙の中を片腕をなくした者が亡者の如く彷徨っていた、三郎太はこれは戦であると心得つつも軽く頭を下げ引き揚げの命を告げようとしたが未だ残る荷車を殲滅せしめんと血気盛んに長筒を構える謙次(かねつぐ)がいた、まだ元服を迎えたばかりの若者であった、三郎太は謙次へ声を掛けようと近付こうとしたが何を思うたか三郎太は急に鉄砲を引き上げると走り出したのだ。


「三郎太っ、ならぬ」


 それを見た忠太郎が声をあげたが手遅れであった、長筒を放った時に生ずる熱き気が三郎太の上半身を真白に包んだ、孝江から鍛錬の際「放つ際には背後に人がおらぬか厳に確かめられたし」と執拗に言われ続けてきた、三郎太も知らぬ訳ではなかったが何故(なにゆえ)と忠太郎は三郎太に駆け寄った、崩れる三郎太は錯乱したのか鉄砲を二度撃った忠太郎は倒れる三郎太に手を伸ばしたが既(すんで)で空を切ると三郎太はそのまま谷底に滑落していった。


「三郎太っ三郎太っ」


 叫ぶ忠太郎の谷底に落ちそうな様に気付き謙次が懸命に引っ張った、忠太郎は何度も地面を殴って悔やんでいたが謙次は忠太郎に声の掛けようなく黙って隣で見ていると忠太郎が殴る地面の脇に血が垂れてきた忠太郎は己の身体を探り確かめると続き謙次を見上げた、その血は謙次の腕から流れ出た血であった謙次は興奮の余り気付かなかったと言ったが忠太郎は何かを悟り急に駆け出すと十二間程進みそこに何かを見出すと足蹴にし刀を抜くと地面へ突き立てたそして天を見上げ冷静に孝江に報せを入れた。


「孝江殿申し上げます、三郎太が谷底に落ち生死は⋯定かではありません」


「相分かりました、大儀でした陣へ引き揚げて下さい」


「三郎太はどうするので」


「構いません、陣の方へ」


 忠太郎はなんと無慈悲な女子だと孝江を忌まわしく思っていたが孝江の隣でそれを聞いていた宗盛だけは孝江の不動明王の如き憤怒の表情から想いを汲んでいた、宗盛は孝江に代わり三郎太の身に起こりしことを皆へ告げた。


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