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タイトル未定2026/09/27 03:13

 雷光は西郷から三十間のとこまで来ると止み目前からは土砂が崩れゆく不気味な音が響いていた、西郷は流れてきた土煙を手で払うと敵の砲撃であるかと声を上げたがこの場で西郷より冷静な者はおらず返ってくる声はなかった、土煙が収まり視界が鮮やかに戻ると先程まであった尾根筋はそこになく進む事儘ならぬ状態になっていた、すると又、雷鳴が聞こえて来るではないか西郷は次こそはと覚悟を決め目を瞑った、しかしこの雷鳴は土煙を上げ尾根筋を無惨に変える物ではなかった、しかし二度目の雷鳴が聞こえた刹那、前方にいた兵の半身が吹き飛んだのだ、そしてそれは続いた雷鳴が聞こえる直前に兵が吹き飛んでゆくのだ数回に幾度は吹き飛ばぬ事もあったが雷鳴が止む事はなかった、すると西郷の前にいた甲府での戦いに赴いていた士官が「出た、又出た」と狼狽えているのだ西郷はその者に駆け寄ると訳を聞いた、士官は腰を抜かし股を濡らしながら「これは雷神の所業、雷鳴の轟きと共にひとりまたひとり確実に命が消えゆく」と、西郷は士官の頬を平手で叩くと正気を取り戻せと叱咤した。


「そげなこっありもはん」


 しかし士官の申す通り雷鳴と共に兵は惨たらしい姿に変えられその変わり果てた姿はまさに人あらざる者の所業に相違なかった。


 西郷は維新政治として天皇の権威を拝借したが大久保利通や岩倉具視と違い心から敬っていた、だからこそ錦の御旗の元に戦う我らは官軍であり神の御威光はあれど神罰など受ける道理はないのだと、それに乾は言っていた「彼奴等は神に近しい武力は持つが決して神などではない」とも、西郷はことわりこそわからぬが神罰などでは決してないと冷静に対処する事に努めた、そしてその冷静さが活路を見出す。


 西郷は尾根筋の左手、北側の山中に眩しき光が見え隠れするとそこに微かに上がる火の手を見出した、西郷は微塵のことわりも心得ないがこの隔たりを難なく攻めうる何かであると見定め尾根影南側に身を隠す号令を出した、西郷の号令に従い尾根影に急ぎ身を潜めるが場所は限られており勢いそのままに滑落する者も多数、西郷は尾根筋に残り戻れる者は引き返し身を潜めよ、尾根影に潜める者も身を潜めつつ引き返せと、しかし細い尾根筋しかも下からは後揃、輜重と登ってきているのだ登る者と下る者で狭い山道は身動きがとれぬ状態に陥った、そしてそれを見計らったが如く最後尾輜重での爆発音が山中に響いたこれに驚いた後揃はそれを逃れようと上に上にと登って来るのだその勢いは下る者を尾根筋まで押し戻した。


 周章狼狽の西郷達と分断され爆発を逃れた本隊は血相を変え転がる様に山道を下っていた、先鋒は箱根峠の石畳の道へ差し掛かっていたが背後から響いた爆発音と駈歩で降りて来る本隊に驚き足を止めた、すると先鋒に追いついた本隊の兵達は止まる事なく先鋒を掻き分け降りて行くのだ、呆気に取られそれを見送る先鋒の兵であったが本隊が石畳の道へ入った途端、踏石を道端まで弾く勢いで道が爆ぜたのだ、石畳の上を駆け抜けていた兵の片足が突然吹き飛ぶと勢いそのままに転がり落ちていき三度回り又、道が爆ぜその兵の四肢は辺りに霧散した、それは一度ではなかった石畳の彼方此方でそれは起こり石畳と脇の杉の幹は紅く染まり一面曼珠沙華が咲き誇っている様であった。


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