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タイトル未定2026/09/28 03:49

 陽はとっぷり暮れ辺りは静まり返ると車軸の軋む音と車輪が蹴る音だけが響いていた、その日は朔にあたり空に月影はなく真っ暗闇、そんな夜は常であれば道を失うか道端より落つるが定めであったが咲は孝江より短筒と共に夜眼鏡も渡されていた流石に皆に行き渡る数は与えて貰えなかったがひとつは先頭に立つ者、そして後ろから助力する者に与え辺りに難がないか見張っていた、車を曳く者達は先頭に立つ者の背にある赤き蛍を目印にその後を追った。


 刻は戌の刻辺りに差し掛かった頃であろうか両山の裾野に挟まれし土地を抜けようかした一行の前に路の両脇から松明を持つ男が二名現れるとその後からぞろぞろと男どもが五名出てきた、その者共の風体は暗くわからなんだが風下でなくとも漂う獣の如き臭いで五人は鼻を手で覆った。


「姉さま方だけで夜道を行かれるとは物騒で御座いますなぁ、我々が道中助太刀いたしましょう何方へ行かれるので」


 咲は手で鼻を覆ったまま答えた。


「お志は忝く存ずれど、先を急ぎ申すゆえ」


 咲はそう言うと頭を下げ男の横を通り過ぎた、すると背後にいた男どもが互いの隙間を狭め行手を阻んだ、すると男はゆっくり咲の腕を掴むと引き寄せた、鼻を覆っていた腕を引かれた所為で覆いは取れ鼻の奥まで獣臭がどっと押し入ってくると咲はどうにかその臭いから逃れようと顔を背けた、すると男が腹に響く声で言った。


「黙って荷を置いていきゃとって喰うつもりはなかったが、こりゃ滅多にお目に掛かれねぇ上物さんじゃねぇかとって喰わなきゃ罰が当たるってもんだ」


 男が口を開くと獣臭に混じり腐った魚の臭いも漂ってくるではないか咲は気を失いそうになりかけていると更に咲は抱き寄せられようとするではないか、すると大八車の後方から屁の如き音が聞こえた、男どもは全く気づく気色はなかったが男の横にいた者が突然崩れ落ちた、それを合図に女衆は車から各々の得物を取り出すと男どもを牽制した、男どもは騒ぎ立つと咲を掴む男が一喝し男どもは静まり返った、山賊か盗賊か定かではないがこの男が主領であろう事は誰しもが心得た。


「それでどうするんだ、黙って荷を置き俺らに抱かれりゃ明日にはうちに帰れたってのに」


「逆で御座います、この手を離し今すぐに立ち去るならば何もなかったと放免致します」


 主領は何を言い出すと鼻で笑って見せると隣で倒れる男をいつまで寝てやがると足蹴にした、しかしいくら足蹴にしようと倒れたまま微動だにしない男に何をしていると松明を掲げると地面には血溜まりが広がっているのだ主領は咲の手を離し懐から小刀を抜き咲に向けた。


「てめぇら何しやがった」


 狼狽える主領らしき男が吠えると屁がもう一発、今度は松明を持つもう一人の男が倒れ己から噴き出る血を松明の灯りで主領に見せつけた、堪らず主領は咲に斬りかかった、しかし何の鍛錬も積んでない者の一太刀等取るに足らぬと咲はひらりと身を躱し脚を出した、主領は脚を取られもんどり打ち大八車迄転がってゆく何が起こったと主領が顔を上げると鼻先には薙刀の鋒が光っているではないか主領はやすやすと小刀を放り捨て無抵抗の証を示した、咲は主領に近付くと蔑む様な視線で


「先程、助太刀すると仰っておりましたが今も心変わりは御座いませんか」


 主領はしつこく頷くと男どもに命を出した。


「少々臭いますが快い旅になりましたね」


 荷台の上で咲が言うと四人は微笑み頷いた。


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