タイトル未定2026/09/03 22:46
「さぶちゃん、何とかなりそうなの」
「うーん⋯無理だと思う」
「⋯そのまま城諸共自死して英傑になるのも手だけど」
「えっーやだよ、偉くなっても生きてなきゃ意味ないって」
「⋯失礼だが⋯貴殿は⋯物狂いであるか、先程からさも相手がおるかの様に独言を言っておるが」
孝江と三郎太とのやり取りを聞いていた乾が三郎太に問うた。
「さぶちゃん、誰かいるの」
「あっ仕方なく乾って方を質にとってしまって⋯」
すると突然、宗盛が叫んだ。
「三郎太っ今、今、乾と申したか、乾何某か問うてみろ」
「あっ、はい⋯
⋯宗盛様、下の名は退助と言われるそうです」
「まっまことか」
宗盛はそれを聞いて大声で叫んだ、敵陣の中心、周りは敵だらけと言うのに、孝江は宗盛の口を押さえ引き摺るように物陰に移動した、そして孝江は改めてその乾退助なる人物は何者か宗盛に聞いた、そして孝江は物陰で叫び自らの口を押さえた。
「さっ、さぶちゃんよく聞いて、くれぐれもその方に粗相のないようにね、それと⋯私達も上に行くから乾様に人払いをお願いして貰える」
「何言ってるのたかちゃん、早く逃げなよ」
「わかった、じゃぁ今すぐ城を壊しなさい」
「えっ、そうじゃなくて泰夫達を連れて戻って来てくれるんでしょ」
「嫌よまた来るなんて御免だは、私は帰ったら湯浴みするの、だから早く⋯あぁもういい、乾様に直接言うから耳栓を乾様に渡してちょうだい」
三郎太は耳栓を外すとフッと吹きそれを乾に渡そうと背後から手を伸ばした、しかし乾は何するものぞと得体の知れぬ耳栓を受け取る事なくいつまでもただそれを眺めているだけだった。
「あの乾様、これを耳に入れて貰えますか」
「この黒い塊をか、断る、この様な得体の知れないものを耳に入れるなどそれこそ物狂いの類だ」
当然と言えば当然だった三郎太自身もそうであった、旧知の中の孝江から言われても恐ろしかった物を素性の知れぬ、しかも己に鉄砲を向ける男の言う事など受け入れ難いであろう三郎太は詫びを入れると無理矢理に乾の耳へそれを差し込んだ、乾は抵抗したが丸太の如き三郎太の腕はそれを許さなかった、だがその抵抗も耳栓から宗盛の声が聞こえると逆に乾の身体は石の様に固まり抵抗を止めた。




