タイトル未定2026/09/01 14:21
「どう言う事だ庄之助っ」
泰夫は声を荒げ庄之助を問い詰めた庄之助も人伝に聞いただけで孝江の真意は知らんと一点張り、連絡が取れぬ訳は甲府城との隔たりで孝江に何かあったと言う疑念は払拭できたがそれはこの先も保証する物ではなかった泰夫は足を踏み鳴らし落ち着かないでいるとそこへ遅れて斎藤がやってきた。
「なんだ近藤さんは相変わらずだな」
斎藤は盃を口へ運ぶ素振りを見せ声を上げて笑ったが泰夫も庄之助も見合ったままで視線も向けてくれない態度にムッとして二人の間に割って入った。
「なんだどうした、幼馴染だろ」
斎藤はそう言うと二人の肩を叩いた、庄之助はそこでそっぽを向いた、泰夫は相変わらず庄之助を見据えていると斎藤は如何したと泰夫に聞いた、泰夫は孝江と宗盛が甲府城へ乗込んで行ったと告げると斎藤は豪気、豪気とガハハと笑ってみせた、泰夫は他人事かと斎藤を睨んだすると斎藤は泰夫の頬に掌をそっと当てると簡単に言ってのけるのだ。
「だったら俺達も行くまでの事」
泰夫はそんな簡単に言って退けるのかと驚いた、しかし後押しするその言葉は泰夫から迷いを拭い去った、分かり易いその表情の変化から斎藤は刀を少し抜くと上身を確認して辺りを見回した。
「泰夫、なんかあるんだろ、なんか凄いやつが」
下層で起こる喧騒に乾は覚醒すると何事かと人を呼んだ、だが待てど暮らせど誰も現れず怪訝に思い襖を開け再度呼ぶも返答はなかった、冷たい風が身体を掠めてゆく自然に身震いが起こり乾は衣桁から羽織を取るとそれを肩に掛け改めて廊下へ出た、すると今度は明瞭に下層で怒号が飛び交っているのがわかった痴話喧嘩にしては激しすぎると乾は下層へ降りて行った、一層下へ降りると怒号だけは耳に届くが何の装飾も施されていない質素な空間には誰も居なかった通常ならばこの層には夜間でも数人は詰めているのだがと乾は訝しげに目を細めた、すると荒々しく下層から階を軋ませ駆け上がって来る音がした乾はその音に誘われるように下層へ向かうとその者と乾はお互いに行手を阻む格好で出くわした。




