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タイトル未定2026/08/21 02:38

 新政府軍は幕府軍の侵攻を可能な限り遅らせ城の守りを固めるべく甲州街道沿の町々に火を放ち退却していった、しかし当の大久保は甲府城侵攻どころか黒達磨の戦果を本陣で聞くと惚けてしばらく戦意を喪失していた、そこへ孝江から甲府城への進軍を具申されるとようやく慌てて策を練り始める始末、孝江は甲府城で御殿様をしたかったのではないのかと大久保の陰口を叩いていた。


 その頃、乾は甲府城でこぞって退却して来る兵を驚愕の眼差しで見つめていた改めて報告を受けた乾は荒んで(すさんで)いた、なぜなら万全の構えで出陣させた四百名もいた兵が戻ってきたのは五十も満たず、しかも乾の肝煎、迅衝隊に関しては脱走兵まででる始末、敵は二百にも足りぬと言われていたのにだ、併せて敵の倍はあった大砲は無傷の物はひとつも無いと言うではないか乾は怒り心頭『士官を集めろ皆、斬首だ』と叫んでいたがその士官の大半は斬首どころか上半身がない者もいる始末、集まった数少ない士官を見ると自ずと冷静さを取り戻し京へ早馬を出し増援を請うた。


「しかし奴らは寄せ集めの部隊と聞いていたが」


「はっ、寄せ集めではありますが本陣にはあの新撰組の近藤が確認されております」


「なんと、鳥羽伏見で死に絶えてたのではないのか新撰組は」


 しかしいくら白兵戦の手練が揃おうとも銃隊相手にこの被害は考えられないと乾が頭を抱えていると副官がそっと耳打ちをした、すると乾の顔はみるみる紅潮してゆき到頭その副官の頭を掴み投げ飛ばし怒鳴った。


「ふざけるな、我ら官軍ぞ神々が我らに仇なす訳がなかろう」


 副官は鞠の如く転がると柱に激突して止まった、副官はただ耳にした一報を余す事なく報告し戦へ活かして貰おうとその一心であったがあまりの仕打ちに乾を恨めしげに見上げた、しかし何が兵にそこまで言わしめるか副官は知り得る筈もなかったが生身で味わった迅衝隊残存兵は口を揃えて言うのだ、それ以上は神罰を恐れ口を噤み誰も喋りたがらなかったがそれでもしつこく問い詰めると重い口を開いた数名の隊士の話を聞いた副官は小さく自らも一言"︎︎︎︎神罰"︎︎小さな声で呟き副官も口を噤んだ、これにより乾は詳細を知らず仕舞いそれはいつしか忘却の彼方へ忘れ去られ何の策も講じず明日へ挑むのだった、将たる者須らく(すべからく)細心の注意を払うべきである、しかし乾は結局、敗北は己の所為であると最もらしい事を残し休息に入ると甲府城もようやく安息を得た、甲陽鎮撫隊本陣では勝利の美酒に酔い大久保も明日の事を忘れ浴びる様に呑んでいた、しかし日暮れを口実に腰を上げぬ大久保に愛想を尽かし自ら甲府城へ向かう者達がいる事を乾も大久保も知らなかった。


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