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タイトル未定2026/08/20 17:36

 結局、その日は宗盛と逢う事は叶わず孝江は静々と村へ戻って行った、しかし村へ戻った孝江に残された時間は多くない落ち込む暇もなく翌早朝から泰夫を叩き起こすと狙撃の鍛錬を積ました座学から始まる孝江の鍛錬で泰夫の資質も伴い狙撃の距離と精度は目紛しく成長していた孝江は泰夫にひとり鍛錬を続けさせると残る一人、文にて唯一生き残ると言われた杉の元を訪れた。


 杉、天涯孤独な身の上、同い年と言われるが正確には判らない杉は元々、あの祠の近くに捨てられていた赤子でそれを庄之助の父が憐れに思い子宝に恵まれなかった老父婦へ養子として預けた、杉とはその時名付けられた名である勿論、杉もその事は心得ていたが捻る事なく老夫婦の実子の様に育ってきた、ただ捨子と因果はないのだろうが杉は生気が非常に薄かった身体に不調がある訳ではないのだが存在自体が薄かった六人で遊んでいても五人と感じる程で一度杉が身を潜めると見つかる事はなくいつも五人を苛立たせた"︎︎︎︎斥候"︎︎これ程の人材は杉以外にはいないと孝江は考えていた杉は斥候の意味は分からないが孝江が言うならと二つ返事で頷き亡き父と母の位牌に手を合わせた。


 孝江は祠へ杉を連れて行き装束と鉄砲を渡すと杉の役回りを詳細に伝えた、孝江の目論見は斥候で最前線に杉を置き自分経由で後方の泰夫、前線の庄之助達に伝言を伝える腹積り、しかし単身最前線に身を潜めるとなれば敵に身を晒す可能性もある危険な位置であるのだが杉は渡された鉄砲を撫でながら問題ないと受け入れた、そしてその肝である伝言の物具について淡々と説明を受けていた、孝江は説明を施しながらも杉は感情を何処へ置いて来たのであろうと落ち着き払い、命のやり取りの場でも変わらずこの冷静さを保てるなら必ず強みになると考えていた、そこであの文の意味が不本意ではあるが理解できたそしてそれを必ず覆すと改めて誓った。


 そして庄之助達であるが吾平と三郎太は良いのだが庄之助が如何にも締まらないでいた。


「庄之助っ何であんただけそんなに的を外すの!」


 庄之助は撃つ度に跳ね上がる鉄砲に苦労していた、連続して弾を放てる性能を持ちながらも庄之助の二射目は的を大きく外し最終的には空に放つ始末この様に孝江は頭を抱え吾平と三郎太からは嘲られていた、庄之助自身も何とか鉄砲を抑えようとは努めていたが吾平や三郎太に助言を貰うなどあってはならないと意地を張り無駄弾を撃ち続ける日が続いた、しかし組による行動は次第に形になっていた庄之助が先頭に立ち吾平と三郎太が続く縦隊、庄之助が中心に横隊、吾平、三郎太を左右後方へ配置する楔隊、何よりも誰かの射線に入るなど最も危険な行為はなくなり相変わらず庄之助の鉄砲は暴れていたが組による実戦鍛錬も練度を上げていた。


「庄之助、頬っぺたをぐっと付けるんだよ」


 見兼ねた三郎太が庄之助に助言をした、吾平と違い当主に強く世話になっている訳ではなく吾平よりつながりは薄かった、三郎太は同じ村ではあったが住まいは山間にあり木こりの家系で子供の頃はよく遊んだが歳を経て余程の事がないと村に降りてくる事はなくなり会うのも久しぶりであった、その肉体は重労働の所為か筋骨隆々、背丈もあり相撲をとれば村で三郎太に勝てる者など三郎太の父以外いなかった。


 そしてその日の夕刻、馬を駆り孝江の父が慌てて村を訪れた、しかし孝江は闇夜の鍛錬を行うつもりで未だ山中で檄を飛ばし知る術もなく結局、父が孝江と会えたのは丑三前であった。


「孝江何をしていた!いっいや構わんそっそれよりもだ宗盛様がお前にお逢いになると言ってな、それで急ぎ迎えに馳せ参じたのだ」


 孝江は宗盛と会えず仕舞いに泰夫達を皆に習わず直接戦さ場(いくさば)でその実力を披露しようと考えていた、しかしそれでは泰夫達が独立して動ける確証はない、出来ればと思っていた時に渡りに船と孝江は歓喜し空が白みだすと父の背後で宗盛の屋敷へ急いだ又、所要で宗盛が出掛けては堂々巡りと孝江は馬の横腹を腹立たしく蹴ると要らぬ事をするなと父に叱られていた。


 屋敷へ到着すると父は馬を厩へ連れて行き身を整えると宗盛にその旨を伝えてくれと女中へ頼んだ、すると宗盛は既に身支度を整えて書台にて読み物を嗜んでおり孝江到着の一報に部屋を用意させ孝江はそこで待たされた、父も無礼があってはと同席を申し出たが宗盛から脚下され孝江は一人小書院で宗盛の入室を待った。

 

「あいすまん、待たせてしまったかな」


「滅相も御座いません、この度は私のような者の相手をして頂き恐悦至極に存じます」


 それから半刻、最初こそ和かな表情で孝江の語る御伽草子の様な話を相槌を打ち聞いていた宗盛だったが話は破綻する事なく続いてゆき眼は宗盛を捉えて外さない、終盤宗盛は眉間に皺を寄せ吐息がかかる程まで孝江に近付くと魅入られ聞き入っていた。


「それでは宗盛様、明後日(みょうごにち)村にてお待ちしております、尚、事が事です故、他言無用、できましたら信頼のおける者数名でお越し下さいませ」


「あい分かった、そちの申す事が事実であれば薩長など蚊蜻蛉の如き恐るるに足らん徳川の世は安泰だな」


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