タイトル未定2026/08/14 23:04
結局、孝江の申し出に対し三郎太は俄然乗る気であったが庄之助と吾平は否定的だった、しかし孝江の方が一枚も二枚も上手である孝江は先ず否定させるのが最適解への過程と危険性を煽り否定的思考に誘導すると悪びれる事なく次なる禁じ手を出してきた。
「それは残念、泰夫さんは乗る気なんだけど⋯あっ態々付き合ってくれてありがとう庄之助さん」
普段、師や泰夫以外に敬称を付けることなどない孝江、彼女の価値観では愛する人と自分より優れた人にしか敬称は付けない、女であり百姓の孝江は卑下されるに十分、侍に対してそのような態度をとれば手討ちにされても何の文句もない時代、しかし未だお天道様の元無事過ごしているのは摩訶不思議であったがそんな孝江から"︎︎︎︎さん"︎︎︎︎付けで呼ばれた庄之助、それに何よりも"︎︎︎︎泰夫"︎︎︎︎の名を出されて引き下がる訳には行かないとあからさまに態度には表さないが内心は心踊り父の折檻などどうでも良い続きを聞かせろといった具合であった、そしてここで吾平が効いてくる勿論、それを踏まえて孝江は庄之助と吾平を連れてきたのだ、庄之助は軽く吾平を小突く吾平は庄之助の表情から全てを悟ると触りたくもない鉄砲を抱えて一言。
「俺、やってみようかなぁ」
吾平の両親は身分制度の更の下に属する者であった、通常ならば村の行事など参加も出来ず会話も許されないのだが庄之助の父は『人に上下などない』身分制度など排除すべきであると吾平の両親に土地や家を無償で与え百姓の真似事をさせていた、しかし聡明な父の考えを違えて解釈しているのが庄之助である、両親が父の世話になっているならばお前は俺に恩を返すべきであろうと本気で考えていた、庄之助が次男でこの村は救われたと陰口を叩かれているとも知らず。
「吾平、危ないぞお前みたいな者が、俺に貸してみろ」
孝江の掌の上で踊らされてるとは露知らず庄之助はここが頃合としゃしゃり出てきて吾平が抱える鉄砲を奪うと大袈裟に興味を示した、そして孝江、早く続く言葉を俺に投げかけろとチラチラと孝江に視線を送るが孝江は敢えて何も言わないここで従属関係を明確にして命令系統の円滑化が必須であると考えておりその為には拒絶が絶対不可欠、孝江は否定した者に用はないと庄之助の鉄砲を奪いとり元の場所へ戻し戸板でそこを塞いだ。
「皆んな今日はありがとう、それとこの事は⋯」
そう言って孝江は唇の前で人差し指を立てると振り返る事もなく祠をあとにした、残された者は孝江を気にしつつも祠が気になるようで視線が忙しく動いていたが庄之助だけは孝江の背中をいつまでも凝視し続けていた。




