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ガチ恋っ!!ってことで  作者: ゆ


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93/169

93. ヴィルノアという人⑧ー2 大人になりたい

 シアは僕の想像の斜め上を行く。

 そして僕はいつでもシアに振り回されるんだ。

 振り回している気はシアにはない。予想だにしないシアの言動は歳上の余裕から出てくるものではなく、ただただシアだからとしか言いようがないのだ。全くと言っていい程、彼女の行動の先を読むのは難しい。

 僕はシアに振り回されるのは大歓迎だ。僕を振り回すシアも大好きだ。


 定期考査はシアからのご褒美がかかっていたから面倒だけど全部解答した。

 うん、一位を取っておいて良かった。

 突然強引に引っ張られ、押し付けるようにほんの一瞬触れただけのシアの唇を、シアからキスされたんだと理解できるまで時間がかかってしまった。あまりにもそれは突然の出来事で、あまりにも短いふれあいで、あまりにも意外な行動で・・・どうだと闘いを挑む闘士のような顔で僕を見るシアがかわいかった。

 ほんの少しの間固まってしまったが、やっぱりシアの唇をしっかり感じたい衝動にかられ、その衝動のままにシアの唇に僕の唇を重ねた。シアの唇は想像以上に柔らかくて、温かくて、甘くて、離れがたくて、でも離さなければならなくて、離れていく時にあたったシアの吐息が僕の心臓の鼓動を速めて・・・と、僕の心の動きは忙しかった。

 一瞬たりとてシアから目が離せなくて・・・シアのあんな顔初めて見た。うるんだ瞳が僕を見つめ、呆けたよう顔からは女の色気を漂わせていた。そしてそういった顔をさせているのが僕だということに、この上ない喜びを感じた。この顔は僕だけのもの、誰にも見せたくないと思った。

 シアを抱きしめて『キス、そんなに良かった』と言ったら、『ばか』って返された。なんてかわいい返しなんだろう。それって肯定だよね。何だろう、ばかって言われて嬉しく思う日が来るなんて・・・思っても見なかった。こんなかわいい『ばか』なら何度でも聞きたい。

 シアとのファーストキスは、エリザベス王女の助言通り、シア好みのロマンチックなシチュエーションで、と考えていたのだけどな。僕の考えていた演出より、あの日のシアからのキスの方が僕にとっては世界で一番ドラマチックな出来事であったと思う。

 あの顔も見れたしね。そう、あの顔を独り占めできたと思っていたけれど、クララから渡された姿絵を見て、そうではなかったと知った。まぁ、あの場に大勢の人がいたからね。当たり前かぁ。あんなに忠実にシアの顔を再現されて描かれていたら、そう言わざるを得ないよね。シアの顔が素敵すぎて、あの絵が気に入ってしまった。だから、もらったあの姿絵は僕の私室に飾ってある。うん、あの顔は僕の脳裏にくっきり焼き付いているけど、その上絵もあるなんていいよね。記憶からも、絵からも、あの時のシアを、シアの唇を思い出す。クララ嬢の機転には感謝だ。あれは販売されるべき品ではない。僕とシアだけの大切な思い出だ。


 

 最近シアを二度、泣かせてしまった。一度目は怒りと悲しみのこもった涙。二度目は嬉しい涙。

 二度目のはいい。泣かせるつもりはなかったけれど、僕の言葉が、永遠の愛を告げる僕からの言葉が、シアの心に響いて零してくれた涙。キレイで僕の胸にくっと突き刺さった。喜んでくれてありがとう、シア。大好き。

 だけど、一度目の涙はだめだ。僕が悪い。引き際を間違えていた。僕の独占欲の強さが、嫉妬の深さが、シアを悲しませてしまった。

 シアはもともと感情表現がストレートだ。それは裏表がなく、腹に一物も二物も抱えた微笑みを見せることはない。貴族的ではないけど、それはシアの魅力の一つだろう。だからシアが表わす怒りも悲しみも、そのままのものと見なしていい。

 今回はあまりにも簡単にさらっとテオ兄上が大好きだって言うから、意地になってしまった。溢れ出る嫉妬心を押さえきれなくなってしまった。シアが僕の婚約者になる前、何度も何度も好きって言ったけど、知ってる以外の言葉を返されたことがない。意図的にそうしていたのか僕には分らない。僕のことかわいい弟って言っていたのに、好きって言ってもらったことがない。それなのに、兄上達には好きって簡単に言うんだ。僕が欲してやまない言葉なのに、さ。兄上が羨ましい。感情のおもむくまま、ごねて拗ねていたら、シアが怒ってぽろぽろと大粒の涙をこぼし泣いた。シアの笑顔を守るっていう大事な使命があるのに、僕が涙の原因を作ってしまうなんて、僕は最低だ。あんな風に泣かせるなんて、最低だ。ごめん、シア。悲しませてごめんね、シア。


 どうしてもシアのこととなると、感情の抑制が効かない。感情が抑えられなくなる。

 こんなんじゃあ、シアに男として見てもらえなくても当然だ。弟扱いも仕方ない。

 子供じみた嫉妬や独占欲はシアを前にいつでも顔を出すんだ。

 もうすぐ僕は十五歳になって、たった数ヶ月だけどシアとの年の差が二歳から一歳違いになる。ちょっとだけシアに近づいたように思えるはずなのに、僕はまだまだ子供で情けないよな。こんなんじゃあテオ兄上にはいつまで経っても敵わない。情けないなぁ。大人な男になりたいなぁ。



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