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ガチ恋っ!!ってことで  作者: ゆ


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87. 冬花祭⑫ ダンスはお好き?

 イベント開催日は、冬らしいどこまでも突き抜けるような青空が広がっていた。

 イベントは終業式後の午後から夕方にかけて行われることになっていたので、参加者は制服で参加することになっていた。外部から訪れる者も制服に合わせて、シンプルな装いで来ていた。

 会場は学園で一番大きいホールで開催された。会場内は多くの花が飾られ、華やかな雰囲気だった。花で特に目を引いたのは、ステンドグラスが嵌められた窓際に置かれた赤い薔薇で作られたモニュメントと白い薔薇のモニュメントであった。

 入り口際には生徒たちが持ち寄った本で作られた城があった。多くの生徒がチャリティということを理解していたので二冊以上の本を寄付してくれた。その為、実行委員が予測した以上に集まった。そこでクラスの有志が本を城の形に積み上げ、屋根のてっぺんに王国の旗を立てた。本の城の横には集められた冊数と感謝の言葉、そして孤児院に寄贈する旨が書かれた看板が建てられていた。

 会場内はダンススペースと飲食スペースに分けられていた。飲食スペースには軽食とスイーツが並べられ、周りに設置されたいすやテーブルで自由に食せるようになっていた。

 ダンススペースでは楽団が絶えず音楽を流しており、誰でもダンスを楽しめるようになっていた。


 実行委員の仕事を一通り終えたフェリシアはヴィルノアのエスコートで会場に入った。

「うわぁ、みんな楽しそうだね。良かった。頑張ったかいがあったね。」

フェリシアは会場をぐるっと見渡し、にっこり笑った。

「そうだね、シア、踊る?それとも先に食べる?」

「んー、忙しくてお昼食べてないから何か食べたいかな。」

「そういえばお昼がまだだったね。僕、何か取ってくるからそこの椅子に腰かけて待っていてくれる。」

「うん、ありがとう。」

 ヴィルノアはフェリシアを席に着かせると、軽食の並んだテーブルの方に歩いて言った。

 ヴィルノアが離れると、胸に白い薔薇を差した男子生徒たちがフェリシアに声を掛けてきた。

「フェリシア様、よかったら一曲踊っていただけませんか?」

 一人の男子生徒がフェリシアに手を差し出した。フェリシアは眉を下げて言った。

「ごめんなさい、ノアを待っているのでダンスはできません。」

 すると、他の男子が手に持ったグラスを差し出し、言った。

「フェリシア様、モクテルはいかがですか?オレンジの入ったさわやかな口当たりの物です。」

 フェリシアは片手を振り苦笑いを浮かべ答えた。

「ごめんなさい。ノアが取りに行っているので受け取れませんわ。」

 今度はケーキを乗せた皿を持った男子が口を開いた。

「フェリシア様、こちらの・・・。」

「シア、お待たせ。」

 料理を乗せた皿とドリンクを持ったヴィルノアは男子生徒の言葉を遮った。目が笑っていない笑顔をフェリシアの周りにいる男子生徒達に向けた後、ヴィルノアは皿をテーブルに置いた。そしてサンドウィッチを一つ取り、フェリシアの口元に差し出し言った。

「はい、シア。このサンドウィッチ、玉子たっぷりで美味しそうだよ。あーん。」

フェリシアはパクンとひとかじりすると、嬉しそうに微笑んだ。

「美味しい!」

「そんなに美味しい?」

「うんっ。」

フェリシアの返事を聞いてにっこり笑うと、ヴィルノアはフェリシアの食べかけのサンドウィッチを自身の口に放り込んだ。

「あっ。」

「本当だ。美味しいね、これ。チキンのもどう?はい、あーん。」

ヴィルノアは今度はチキンとレタスが挟まったサンドウィッチをフェリシアに差し出した。

フェリシアはやはりぱくんと人かじりした。

「うん、これも美味しい。ノアも食べて。あーん。」

フェリシアはサンドウィッチを一つ取り、ヴィルノアに差し出した。ヴィルノアはパクンと一口で食べると微笑んで言った。

「トマトとスモークハムだね。これも美味しいね。チキンのも味見しようかな。」

手に持ったままのフェリシアの食べかけのサンドウィッチを自身の口に放り込んだ。

「あっ。」

「うん、このチキンも美味しい。」

フェリシアは自分の食べかけを口にするヴィルノアを見て頬を赤らめた。


この二人のやり取りを前にフェリシアの元に集まった男子生徒は静かにその場を離れていった。


「ふぅ、油断も隙もないな。」

ヴィルノアは鋭い目をして周りを見た。

フェリシアは楽しそうにクッキーを頬張っていた。

「ノア、これも美味しいよ。はい。」

クッキーを差し出すフェリシアを優しいまなざしで見たヴィルノアはクッキーを口にし、微笑んだ。

「シアに食べさせてもらっていると何でも美味しいね。」

「そ、そう?」

フェリシアは赤くなった頬を両手で抑えた。


「ここで、白い薔薇の方限定でダンスを行いたいと思います。是非ご参加ください。」

 クララはアナウンスした。

「僕たちの出番だね。行こう。」

「うん。」

 ダンススペースには白い薔薇を付けた男女が集まり、中心にはクララ、エリック、エリザベスがいた。

ヴィルノア達はエリックの傍に行った。

「それでは説明を始めさせてもらいます。まず男女が向かい合って一礼、そして両手をつなぎ、音楽に合わせてその場を二人で回ります。一周したら立ち止まり前に一歩、後ろに一歩、そして男性は女性の片手を取り上に持ち上げ、クルリと女性を回します。そしてまた前に一歩、後ろに一歩、一礼して右側にステップを踏み、パートナーチェンジをする。この繰り返しです。それでは軽く見本を殿下方に見せていただきますね。それではお願いします。」

 クララはエリック達に目配せをした後、楽団に手を挙げ合図した。

 楽団は明るく軽快なこの国の民謡に当たる音楽を演奏し始めた。エリックはエリザベスとヴィルノアはフェリシアと手を取り、ダンスを始めた。簡単なステップなので、みんなの理解も早かった。

「いかがでしょう。ご理解いただけましたでしょうか。赤い薔薇を付けた方たちだけがダンスを楽しむのではつまらないですよね。さあ、白薔薇の皆様。多くの異性と知り合うチャンスです。お一人お一人とのダンス時間は短いですが、少しの会話はできるかと思います。この機会を存分にご活用ください!あ、そうそう、気の合った方が見つかりましたら随時ダンスの輪から外れるのもありです。もし外れる方が出ましたら臨機応変な対応をよろしくお願いします。さて、始めましょう。何を隠そう私も白薔薇族です。参加させていただきます!」

 会場内からは笑いが起きた。チームクララが無駄なく動き、男性の輪と女性の輪を作りダンスをスタートさせた。最初はぎこちなくステップを踏んでいた参加者たちだったが、すぐに慣れ、明るい音楽も手伝って、楽しく話をしながらダンスをしていた。そして、クララの言った通り、ちらほら輪から外れる者も出た。輪から外れた者達は、輪の外側で控えていた給仕の者達からドリンクを受け取り、歓談を始めていた。


「私も踊りたかったな。」

 フェリシアが呟くとヴィルノアがフェリシアを後ろから抱き締めて言った。

「だめ。もうシアには僕がいるでしょう。あとで一緒に踊ろう。」

「うん、そうだね。でも、このダンス簡単で気取っていなくていいと思わない?」

「じゃあ、ここで二人で踊る?もちろんパートナーチェンジ無しで。」

「うん、いいの?踊りたい!」

「はは、お姫様、よろしくお願いします。」

 ヴィルノアは胸に手を当て恭しく頭を下げた。

 フェリシアはスカートの裾を持ち上げ礼をした。

「こちらこそよろしくお願いします、王子様。」

 二人は手を取ると曲に合わせて踊り出した。するとそれを見た赤薔薇を付けた者達も、白薔薇を付け輪から外れた者達も、ヴィルノア達の傍に来てパートナーチェンジのないダンスを始めた。

 陽気なダンスはしばらくの間続けられみんなを笑顔にしたのだった。

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