85. 冬花祭⑩ 姿絵の予約状況
姿絵はエリックの提案通り、事前予約制とすることとなったため、それぞれ番号が振られた見本が張り出された。張り出されてからというもの連日それらを見に来る生徒達で賑わっていた。
姿絵は描く作者ごとに分けられ、自分の好みの描き方を選ぶことができた。また、今年は王子三人が学園に在籍しており、またその婚約者も在学中という最初で最後の年であった。そしてそれらの者達、アンナを除く、の姿絵が出ているということも姿絵人気に拍車をかけた。
また、姿絵と同時に花飾りの販売についても告知されていた。告知のポスターには、花飾りのもつ意味-花ことばや本数のもつ意味―について、リボンの色についてが細かく説明されていた。そして花飾りがヴィルノアとフェリシアのデザインであることもヴィルノアの描いたイラストと共に説明されていた。ポスターの最後には花飾りの使い方について、当日詳しく説明する旨が書かれていた。
「あれ?説明なんて必要かな?ここに詳しく花ことばとか書かれてるのに。」
ポスターをヴィルノアと共に見ていたフェリシアは首を傾げた。
「そうだね、普通に使うならいらないね。でも、ほら僕がクララ嬢に頼んで追加の金具つけてもらったでしょう。あれについては当日説明したいと思っているんだ。」
ヴィルノアは少しだけ口角を上げて楽しそうな声で言った。
「どうやって使うものなの?」
「当日教えるよ。実物があった方がいいでしょう。」
「当日じゃなければだめなの?」
「うん、当日がいいな。」
「そう、分かった。今は我慢するから絶対当日教えてね。」
「分かった。楽しみにしていて。きっとシア好みだから。」
「うわぁ、そこまで言って教えてくれないなんて・・・気になるよ。」
「ははっ、当日までのお楽しみね。」
「・・・うん。」
ヴィルノアはにっこり笑ってフェリシアの腰に手を回した。
入場券の販売と同時に姿絵、花飾りも販売された。チームクララのメンバーは何班かに分かれ各クラスを回りそれらを販売した。今回のイベントは婚約者がいる者達にとってはお互いの愛情を深めるいい機会ととらえられ、相手がいない者にとっては一大婚活イベントととらえられ、ほとんどの生徒が参加するための入場券を買い求めた。また学園外に婚約者がいる者はその相手の分も一緒に入場券を買った。
花飾りはそれを構成するそれぞれの花の花ことば、本数のもつ意味、造花ということで制服に会う丁度いい大きさになっているなどの点がうけ、入場券を買った生徒全員が買い求めた。またデザインしたヴィルノアとフェリシアの中の良さにあやかりたいと思う生徒も少なくなかった。
またチャリティイベントの側面を持つということで入場券の割引条件に不要になった児童書や絵本の寄付を掲げていたので、こちらもかなりの数を集めることができた。集まった本は孤児院に寄付するということも説明してあったので多くの者が二冊以上の本を寄付してくれたことも、多くの本が集まった結果につながっていた。
あと数日でイベント当日という昼休み、実行委員のメンバーはいつものように集まっていた。クララは経過報告をした。
「皆様の尽力により、ほぼ学園の全員が参加する大きなイベントとなりました。花飾りも入場券購入者全員が買い求めてくれました。ふふっ、思った以上の売り上げです。本も思っていた以上に集まったので、追加で購入する必要はないかと思われます。ありがたいことです。そして姿絵ですが、ふふふっふふっ、あっ、失礼しました。ふふっ、ものすごいいい反響でして、予約も思った以上のものでした。これから発注して年明けに購入者にお渡しできるようにしたいと思います。」
クララは満面の笑みを浮かべていた。
「姿絵も沢山注文が入ったんだね。良かったぁ。」
フェリシアはなぜか恒例となっていたヴィルノアのお膝の上から言った。
「ふふっ、フェリシア様大人気ですよ。特にヴィルノア殿下の描かれた花冠を付け微笑むフェリシア様の絵、注文数第三位ですよ。素敵な絵でしたものね。」
「ノアはいつも本物以上にかわいく描いてくれるんだよね。ね、ノア。」
「シアはいつもかわいいよ。それをそのまま描いたらかわいくなるの、当たり前だよね。」
「ありがとう、褒めてくれて。」
フェリシアはヴィルノアの頭を撫でた。
ヴィルノアは気持ちよさげに目を細めた。
「真実だよ。シアは世界一かわいい。」
「ふふっ、ありがとう。ノアの描いた絵が三番目に売れただなんてすごいわね。他の方の絵も素敵だったのに。」
「そうだね。でも複雑な気持ちだよ。僕だけのシアでいてほしいから、売りたくない。けど、かわいいシアを多くの人に自慢したい気もあるんだ。ああ、やっぱり僕だけのシアにしておきたい、かな。」
ヴィルノアは真剣に悩みだした。
「ふふっ、こういうの溺愛って言うんですよね。流行りに恋愛小説のようですね。ふふっ、だからこその一番人気なのですよね。今回の姿絵の予約数一位はお二人を描いたものなんですよ。」
クララはにやにやして言った。
「私たちの様子?」
フェリシアは首を傾げた。
「そうです。」
クララはポケットから一枚の姿絵を出した。
「これです!」
「えっ、これ?」
フェリシアは困惑しながら姿絵を凝視した。
「あっ、これいいね。僕も欲しいな。今からでも追加できるかな?」
ヴィルノアはにっこり笑って言った。
「シアの表情が良く描かれていて、いいね。」
「よ、よくないよ。絵はきれいだけど私がダメ。」
「そんなことないよ。この、恥じらっている感じ、シアのかわいらしさがよく表れているよね。」
ヴィルノアは目を細めて優し気に微笑みながら姿絵を見た。
クララが取り出した姿絵は今では恒例となったヴィルノアとお膝抱っこされるフェリシアを描いたものだった。恥ずかしげな表情のフェリシアを幸せそうな笑顔で抱っこするヴィルノアとが淡い色彩の優しいタッチの絵で描かれていた。




