83. 冬花祭⑧ 結果とご褒美
冬花祭の準備が進む中、定期考査の結果が発表された。
発表は各学年ごとに順位と総合点が名前と共に掲示される。掲示場所はそれぞれの学年で用意され、自分の順位を確認する者達で朝から賑わっていた。
「うわぁ、エリックってばまた一位だね。さすがだね。」
フェリシアは掲示を見て感嘆の声を上げた。
「ははっ、俺も頑張った。フェリシアは八位か。いつも通りだな。」
エリックもざっと順位を確認していた。
「あんまり代わり映えしないね。エリザベスが四位、オスカーが五位、シルビアが六位って、みんなすごいね。私も頑張ったんだけどな。まぁ、私の精一杯だから仕方ないね。」
「八位なら充分じゃないか。約束通りご褒美の甘いもの提供するぞ。何がいい?」
「やったぁ!それじゃぁ、王都にできた新しいカフェのスイーツがいいな。エリザベスも行きたいって言ってたの。」
「分かった。今度皆でそこに行こう。」
「うんっ、楽しみ!頑張って良かった。」
フェリシアは満面の笑みを浮かべた。
エリックとフェリシアが話しているところに、シルビア、オスカー、エリザベスがやってきた。
「見たか?」
シルビアはフェリシアに言った。
「うん、私はいつもの八位。みんなすごいよね。それでね、エリックがご褒美にカフェに連れて行ってくれるって。今度みんなで行こうよ。」
フェリシアは楽しそうに言った。シルビアはこくんと頷いて、言った。
「カフェは行きたいな。その事じゃなくて、ヴィルの順位を見たか、と聞いたんだ。」
「ううん、まだ。自分の順位確認してたの。ノアの順位良かった?」
「見に行ってやれ。自分の目で確認してきな。ヴィルとご褒美の約束しているんだろう。」
「あっ、そういえばそうだ。行ってくるね。」
フェリシアは急ぎ足で一年生の掲示場所に向かった。
エリックはその後姿を見送った後、シルビア達に聞いた。
「見てきたんだろう?ヴィルの結果。やっぱりか?」
シルビアとオスカーは顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。
エリザベスが頬に手を当て、ふぅっと小さく息を吐いた。
「ヴィルノア殿下って皆様の言う通りですのね。」
「ああ、ちゃんとやればな。興味がないとそこそこまでしかやらないからな。今回はフェリシアのご褒美があったから手は抜いていないだろうな。」
「満点でしたわ。」
「だろうな。一応見に行ってみるか。」
四人も一年の掲示を見に向かった。
フェリシアは一年の掲示の前に立っていたヴィルノアとバルトに声をかけた。
「結果どうだった?」
「僕が一位、バルトが二位。シアは?」
「私?不動の八位だったよ。ノア、一位ってすごいねっ!」
フェリシアは掲示に目をやった。確かに一番上にヴィルノアの名前があった。そして驚いた。
「えっ、満点?ノア、満点だったの?」
「うん。全部回答欄埋めた。」
「いやいやいや、解答欄を全部埋めるなんて当たり前でしょう。満点って全部合っていたって事でしょう。すごくない?」
「いや、全部回答したらそうなるでしょう。」
「いや、ならないから普通。ね、バルトもそう思うよね?」
「そうですね。俺も全部埋めたけど、いくつか落としてますね。」
「いくつかで済むバルトもすごいね。私なんか全部書いたけどいっぱい落としているよ。」
「そうですよね。それが普通ですよね。」
「そうだよね。私が間違っているわけではないよね?」
「はい、ヴィルが異常です。」
「だよね。」
「酷い言われようだね。ただ解答欄全部埋めただけだろう。埋めればこうなるのは当たり前だろう。」
「普通はならないよ。少なくとも私には無理。」
フェリシアはぶんぶんと首を振った。
「ところでシア、約束覚えている?」
ヴィルノアはフェリシアの頬に手を当て、視線を合わせた。
「約束?」
「うん、テストで一位取ったらご褒美くれるっていう約束。」
「もちろん覚えてるよ。ご褒美、何がいい?」
フェリシアは首を傾げた。ヴィルノアは少しだけ口角を上げて自身の人差し指を当てた。
「ここにキスして欲しいんだ。」
「ここって・・・えっ、えっと・・・。」
フェリシアが困惑して言葉を詰まらせた。ヴィルノアはくすっと笑って言った。
「ここ。唇にキスしてほしいんだ。だめ?」
人差し指を自身の唇に当てヴィルノアは首を傾けた。一見かわいらしい動作だったが、ヴィルノアからは何とも言えない色香が漂っていた。
バルトはやっぱりなぁと呆れ顔でヴィルノアを見た。
フェリシアは一瞬何のことか理解できていなかった様で固まっていた。そして一瞬で頬や耳、首まで真っ赤に染めると頬を両手で覆って、下を向いた。じっとしていたかと思うと、頬から手を放し胸の前でぎゅっとこぶしを握った。
何も言わないまま下を向いているフェリシアに不安を覚えたヴィルノアは肩を掴むべく手を伸ばした。
「シア?大丈・・・。」
「・・・分かった。」
ヴィルノアの言葉に被せるようにフェリシアは答えると、両手でヴィルノアのジャケットの襟を力強く握りしめた。
「えっ、シ・・・。」
フェリシアはジャケットの襟を握りしめた両手を自身に引き寄せ、少しだけ背伸びをして、ぎゅっと固く目を瞑ってヴィルノアの唇に自身の唇を重ねた。そして一瞬とも思えるほんの数秒で唇を離すと、ヴィルノアのジャケットから両手を離し、スカートの横でぐっと握りしめて言った。
「ご褒美、ね。」
フェリシアの顔は真っ赤で、涙目になっていた。そして何故か好戦的な顔でヴィルノアを見た。




