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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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8/61

8. 見てしまいました

「エリザベス、ご飯食べに行こう。」


 お昼休みになり、フェリシアはエリザベスに後ろからぴょんと抱きついて言った。


「お腹空いたよう。」

「まぁ、フェリシアは猫のようですわね。あっ、わたくしノートを先生に提出しなければならないの。先に食堂に行ってて下さるかしら?」

「ううん、私も付き合うよ。シルビアも図書室に行っちゃったし。」

「ありがとう、フェリシア。それでは行きましょうか。」

 

 先生がいる部屋は教室のある棟とは別棟で奥庭を突っ切ると近い。二人はたわいもない話をしながら、木々の生い茂る奥庭を歩いていた。


「好きです!入学式で初めてお見掛けして以来ずっと好きでした。」

 緊張からか固く震えた女の子の声が聞こえてきた。

 フェリシアとエリザベスは口を閉じ、お互い顔を見合わせた。そして声のした方向を見ると少し離れた大きな木の下に二人の生徒が立っていた。一人は声の主であろう女の子で胸の前で手を祈るかのように合わせている。もう一人は男の子で木を背にしていた。


「!!」

 これは告白シーンねっ!!、とフェリシアとエリザベスは目で伝え合った。二人共、動くと音を立ててしまい告白の邪魔をしてしまいそうで動けずにいた。


「それで?」

 地を這うようなひどく冷めた少年の声が聞こえてきた。

「えっ、それでって…私はお付き合いしたいって…」

 少女はおどおどと言葉を紡ぎだしていたが、その声を遮って少年は言った。

「その気はないから」

 少女ははっと顔を上げ、必死に食い下がった。

「婚約者はいらっしゃいませんよね?でしたら考えては頂けませんか?ダメですか?」

 その少女の必死さに、フェリシアとエリザベスはお互いの手を握り合って息をのんだ。


「うん、ダメだね。僕、誰とも付き合う気ないから。他当たって。」

 淡々と抑揚のない冷めた声で少年は言い、すたすたと歩いて行ってしまった。

 少女はこの展開についていけなかった様で、ただただ呆然と少年が歩いていくのを見ていた。


「行こうか。」

 小声でエリザベスを促し、その場を離れた。

 声が少女には届かなそうな場所まで来て、フェリシア達は大きく息を吐きだした。

「はぁ~、見ちゃったね。」

「えぇ、小説の中のワンシーンのようでしたわ。」

「そうね、ドキドキしちゃったわ。」

「わたくしもです。自分が告白しているわけでもありませんのに。小説以上でしたわ。」

 エリザベスは少し赤くなった頬に手を当てた。

「うん、うん、そうだよね。」

 フェリシアも少し頬を赤く染め、エリザベスに同意する。

「ところで、一つ気になったんだけど…あの男の子ってノアじゃなかった?」

 フェリシアは首を傾げて言った。

「あらっ、フェリシアもそう思いますの?わたくしもヴィルノア殿下ではないかと思いますの。」

「そうだよね!聞いたことがないくらい冷ややかな声だったから最初は違うかなって思ったの。」

「えぇ、対応も声も冷ややかでしたわね。」

 エリザベスは頬に手を当てたまま首を傾げた。


「それにしてもノアってモテるのね。」

 フェリシアは思わず口にしていた。フェリシアにとってヴィルノアは誰よりもかわいい弟で、恋愛の対象として見たことがなかった。だが告白されるのを見て、改めて考えてみた。ヴィルノアは王家の者だけあってサラサラの金髪に濃紺の瞳、まだ幼さは残るものの整った顔立ちをしている。性格も子犬のように人懐っこく、時に甘えてきてかわいい。そして王子の中では唯一婚約者がいない。かなり優良な狙い目物件ではないか。そうモテないわけがないのだ。


「いいなぁ、モテてみたいなぁ。」

 フェリシアは羨ましそうにうっとりと遠い目をした。

「は、い?」

 エリザベスは思わず聞き返した。

「ノアが羨ましいなって。私モテないから…」

 フェリシアは俯いて言った。

「は、い?」

「だって、告白されたことないもの。夜会に行った時もダンスに誘ってくれたのは兄様達とエリックとノアだけよ。夜会って気になる子にダンスを申し込むものでしょう?でも親しい人以外、誰からも誘われなかったわ。夜会が始まるまで、誰かに誘われるかもって、わくわくしていたのよ。でも何もなかったの。」

 フェリシアは俯いて肩を落とした。

 エリザベスはヤレヤレと呆れ顔になり、ふぅとため息をついた。

「本当にフェリシアは愛されていますのね。フェリシアは顔も性格もかわいいですわ。明るくて、一緒にいて心地よいですわ。わたくしフェリシアが大好きですわ。」

「うっ、褒め殺し…。」

「真実です。そんなフェリシアがモテないはずありませんわ。」

「うぅっ、すごく褒めてもらってなんだけど、あんな告白されたことないよ…。」

「それはそうですわ。エリックという婚約者がいるのですよ。彼は王子様ではないですか。」

「あっ、そっかぁ。婚約者がいる子に告白なんてできないよね。」

 フェリシアはうんうんと頷いた。

「・・・そうですわ…。」

 エリザベスはそれだけではないでしょうが…と心の中で呟いた。

「ノア、婚約者いないもんね。上手くいけば王子妃に、なんて子も迫ってくるから大変だね。うーん、でもちょっとだけいいなぁって思っちゃうのはダメかな?」

「いいえ、ダメではありませんわ。」

 エリザベスは優しく微笑んだ。

「わたくしも告白されてみたいですもの、物語のヒロインのように。」

「うん、私も小説の主人公みたいにされてみたい!」

 フェリシアとエリザベスは頷き合った。







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