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ガチ恋っ!!ってことで  作者: ゆ


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71/169

71. フェリシア⑦ 自習しました

 いつものランチタイム。

 いつものようにフェリシアの横の席にヴィルノアは座った。


「シア?」

 いつもなら元気よく話しかけてくるフェリシアが静かで、不審に思ったヴィルノアがフェリシアの顔を覗き込もうとすると、フェリシアからプイっと視線が合わないように顔を背けられた。ヴィルノアは背けた方に行き、目線を合わせようとすると、フェリシアはまたプイっと違う方に顔を向けた。

「どうしたの、シア?」

 フェリシアは黙ったまま、俯いている。

 その様子を黙ってみていたシルビアは片手をひらひら振って、もう一方の手に持った本を上に挙げた。

「・・・分かった。」

 ヴィルノアはフェリシアの前に跪き、フェリシアの両手を自身の手で優しく包み込んだ。フェリシアは肩をぴくっとさせ少し顔を上げたが、視線があった途端、ぷいっと顔を背けた。

「シア、あの本読んだんだね?」

 フェリシアは再び肩をびくっと揺らすと、こくりと頷いた。

「どうだった?」

「・・・それ、聞くの?」

 フェリシアは消え入りそうな声で言った。

「うん、教えて。」

 ヴィルノアは優しい声で聞いた。

 フェリシアはしばらく目を泳がせた後、ヴィルノアを見て言った。

「は、恥ずかしかった。自分の勘違いもそうだけど、将来ノアと、その、あの、ああいうことするのかと思ったら・・・恥ずかしくって、ノアの顔、見れなくなったの・・・。」

 フェリシアは耳も頬も首まで赤く染めた。

「僕とじゃ嫌?」

 フェリシアは不安気なヴィルノアの顔を見て、はっとして、首を勢いよく横に振った。

「嫌じゃないよ!ただただ恥ずかしかったの。」

 ヴィルノアは包み込んだフェリシアの手を自身の額に当てた。

「嬉しア、シア。」

「嬉しい、の?」

「うん、嬉しい。すごく、ね。嫌だとは思わなかったんでしょう?」

「・・・うん。」

「僕はね、シア。シアが大好きだから、シアの全てが欲しいんだ。欲張りでしょう。でね、僕の全てをシアの物にして欲しいんだよ。」

「ノアの全て?」

「そう、僕の全て。心も体もすべてね。今すぐにでも僕は全く構わないけど、シアは違うよね?だから僕は待つよ。シアの気持ちが僕のシアを想う気持ちと同じくらいになって、僕の全てが欲しいと望んでくれるまで。その時にはシアの全てを僕に頂戴ね。だから、今はシアに避けられることが悲しい。」

 フェリシアはヴィルノアの寂しそうな声に、眉を下げて言った。

「ごめん、ノア。私、動揺し過ぎだね。ノアより二歳も年上なのに・・・だって、あんな、あんなこと恥ずかし過ぎて・・・それにね、神様が子供を下さるって思い違いをしていて、それってすごく子供っぽいよね。」

「ううん、神様が下さるっていうのは、あながち間違いでもないと思うよ。ほら、夫婦でも子ができないこともあるよね。それに子がいても男ばかりだったり、女ばかりだったりもするでしょう。あれって、神の采配だと思うんだ。だからシアの言う神様が下さるっていうの正しいと思うよ。」

「ありがとう、ノア。ごめんね、避けるようなことして・・・。」

 ヴィルノアは首を横に振り言った。

「いいんだ。もう避けないよね?」

「うん。」


 ヴィルノアは包んでいたフェリシアの手に唇を寄せた。

「待つけど、できるだけ早くその気になってね。」

「そ、その気って。」

 フェリシアは再び頬に熱が集まってきているように感じた。

「うん、あの本にあることしたいなっていう、その気、ね。まずはシアの唇欲しいな。」

 ヴィルノアはフェリシアの手の唇をつけたまま、上目遣いでフェリシアを見た。フェリシアは手を引き抜こうとしたが、ギュっとヴィルノアに掴まれていて動かせない。フェリシアは困惑して目を泳がせたが、ふとある一点が目についた。

「どうしたの、シア?」

「・・・ノアの耳、赤い・・・。」

「!!当たり前でしょう!好きな子にこんな内容の話してるんだよ。僕だって恥ずかしいんだ!」

「ノアも恥ずかしいの?」

「恥ずかしいよ。でもハッキリ言わないとシアには通じないでしょう?シアが欲しいから、頑張るしかないよね。」

「一緒なの?」

「一緒だよ。」

「ふふっ、私だけじゃないのね。一緒なのね。」

「僕を何だと思っているの?僕は年下な分、頑張らなければって思っているんだよ。必死なんだ。とにかく伝わるようにって。シアは鈍いでしょう?だからはっきり言うんだ。格好悪くてもねっ。」

 ヴィルノアは拗ねた顔をし、口を尖らした。

「かわいい、ノア。うん。私鈍いらしいから、ちゃんと伝えてくれてありがとう。」

 フェリシアはふんわり微笑んで、ヴィルノアの頭を撫でた。ヴィルノアは気持ちよさげに目を細めた。そしてフェリシアの両手に自身の手を合わせ、指を絡めた。

「シア、大好きだよ。」

「うん、知ってる。私もノアが好きよ。」

「嬉しい。早く一日も早くその気になってね。」

「・・・うん、善処します。」

 ヴィルノアはフェリシアの額に自身の額をコツっとあてた。

「今はここまでね。」

「うん、そうしてね。」

 二人はしばらく目を瞑り、額と手の平から伝わるお互いの体温を感じていた。


「何かまとまったみたいだな。ところでシルビア、その本は何の本だ?」

 エリックはフェリシア達の成り行きを見た後、本が何だったのか気になった。シルビアはすっと本をエリックに差し出した。エリックは本を受け取ると、ぱらぱらとページを捲った。

「ああ、成程。ヴィルの願望か。」

 シルビアはこくんと頷いた。

「シルビア・・・これってかなり露骨な表現だよな。イラストも、なぁ。よくこれをフェリシアに読ませたな。」

「ヴィルはイラストがあって分かり易いって、とてもいいって言ってた。」

「まぁ、これだけイラストがあれば、フェリシアでも理解するだろうな。」

ページをめくりながら、エリックはほんのり頬を赤らめた。

「何の本なんですの?」

 エリザベスは横から本を除いた。

「うわぁぁぁ!」

「まぁ。」

 エリックは慌てて本を閉じた。エリザベスは両手で赤く染まった両頬を押さえた。

「ははっ、赤いな。」

「・・・だって・・・エリックだって・・・。」

 黙りこくってしまった二人にシルビアは言った。

「私の閨教育の時の教科書なんだ。読むか、貸すぞ。」

 まるで何ともないっという風にシルビアは言い、エリザベスに本を差し出した。

 エリザベスは首を勢いよく横に振った。

「大丈夫です。それにしてもイラストが直接的なのですね。わたくしが母国で閨教育を受けたとき、ただ口頭で流れを説明した後、細かいことは旦那様にお任せしなさいと言われましたの。だから、本を見てち ょっと驚いてしまって・・・。」

 エリザベスは早口で言い切った。

 エリックは目を見開いたあと、口元を押さえた。

「随分教師によって違うんだな。俺の時は百聞は一見に如かずとか言ってな、実践を見せられた。それを見ながら教師が解説するんだ。」

 何を思い出したのかエリックは頬を赤く染めた。

「私はオスカーと一緒に受けた。オスカーが一緒に受けたいと言ってな。双方の両親も婚約しているのだからいいだろうと言ってな。その教科書を使ってさっと解説の後、実践を見せられた。」

 シルビアが淡々と話す傍らで、オスカーがうんうんと頷いた。

「それもすごいな。」

「エリックと一緒になんて・・・無理ですわ!」

 エリザベスは首まで赤く染め、両手で顔を覆った。

 エリックはエリザベスの手を握り顔から離すと、耳元に顔を近づけ言った。

「いつか実践させてくれるか?」

 エリックはエリザベスだけに聞こえるような小さな声で囁いた。

 エリザベスが驚いてエリックの顔を見ると、エリックはにかっと笑った。

 エリザベスは小さく頷くと、エリックの耳元に顔を近づけ言った。

「エリックにお任せで。」

 エリックはぱっとエリザベスから離れ、自身の真っ赤に染まった耳を両手で抑えたのだった。

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